イタリア映画祭の8作目は、「バッグにはクリプトナイト」を観ました。
ストーリーは、
脚本家(『明日のパスタはアルデンテ』『ミラノ、愛に生きる』)、作家、翻訳家と多才なコトロネオの初監督作。1970年代のナポリで、大家族の浮き沈みが笑いに包まれながらしっとりと物語られる。9歳のペッピーノには、自分がスーパーマンだと信じている風変わりな従兄がいた。ちょっと騒々しくも微笑ましい家族だったが、従兄が突然亡くなってしまう。調和は崩れ始め、ペッピーノは先行き不安な生活に向き合うことになる。11年ローマ国際映画祭コンペ部門出品。
主人公のペッピーノは、すごくかわいいのに、何故か、家族にも友達にも、めがねをかけていて醜いって言われて、いつも自信無さげにしているんです。そんなペッピーノの、唯一の友達と言うか、信頼出来る人は、従兄のジェンナーロだったのですが、ある日、交通事故で亡くなってしまいます。お葬式にも出たはずなのですが、何故か、ペッピーノの前にスーパーマンのコスプレで出現する従兄。なんとなく、”キック・アス”の香りがするような雰囲気でしたが、内容は、まったく違うので、間違えないでね。
ペッピーノの父親が浮気している現場を、母親が見てしまい、ショックで、母親が寝込んでしまいます。従兄のジェンナーロも死に、母親の支えも無くして、ペッピーノは、母方の叔母や母親の同僚に面倒を見てもらい、色々な事を覚えていきます。

叔母は、その頃流行っていたヒッピーの格好をして、ドラッグパーティーなどで楽しんでいて、遊ぶ為にペッピーノも、そのパーティーとかに連れて行くんですよ。もー、なんでもアリって感じで、子供にまで、ドラッグを与えてしまったりして、大騒ぎ。70年代の衣装が多用され、楽しいパーティーの風景が見られます。この頃は、随分と自由だったようですよ。
母親の同僚は、結婚したくてしたくて堪らず、海にナンパをしに行くのを日課にしています。何故、海なのかと言うと、街中だと洋服で貧困だということがバレるので、水着なら、誰が何を着ていても変わらないでしょっていう理屈なんです。でも、水着だって、値段が随分違うよね。彼女の必死な婚活姿は、今の日本女性の姿にかぶりました。面白かったなぁ。
空想の世界で出てくる従兄のジェンナーロが、人と違っていても、いいんだよ、とペッピーノに話します。誰もが同じ標準を持っているわけではなく、人それぞれ、違っていることは、悪い事ではないんだと。でも、違っていても良いけど、いつも”クリプトナイト”=唯一の弱点、には気をつけるようにと注意をするんです。スーパーマンは強いけど、クリプトナイトだけは弱点だもんね。危ないものには近づいちゃイケないよっていう事なんです。子供は、善悪の判断がつかずに、大人に言われれば良い事だと思ってしまう。ちゃんとした大人が判断してあげられれば良いけど、変な大人が周りに居ると、子供は間違ったまま覚えてしまいます。子供には、キチンとした判断を教えてあげたいですね。

色々あるけど、ペッピーノは、死んでしまった従兄ジェンナーロを相手に、自分にとって、正しいと思える判断をこれからもしていくのでしょう。大人の中で、右往左往していた時から、少し成長して、自分というものを確立していく子供の姿が、活き活きと楽しく描かれていて、とても好感が持てました。

この映画は、「あしたのパスタはアルデンテ」「ミラノ、愛に生きる」の脚本家が始めて自分で監督をつとめた作品です。だから、内容は、とっても良く出来ていて、面白いです。今回、「シャッラ」も、脚本家の方の初めての監督作品なのですが、脚本家の方が作ると、ベースの話がしっかりしているので、安定していて、とても面白いですね。前半の中で、日本で受け入れられやすい作品は、「シャッラ」とこの「バッグにはクリプトナイト」ではないかと思いました。移民の問題は、まだ、日本人には、あまり身近ではないので、それほど魅力的には映らないと思います。それより、人間の成長などを描いている作品が、人気が出るのではないかと思いますよ。

私は、この作品、とてもお薦めしたい作品です。日本で公開して欲しいなぁ。だって、スーパーマンのコスプレで、友達のマイティ・ソーが、とか、そんな話も出てきて、オタク民族の日本人には、とっても楽しめると思うんです。ぜひ、皆さんに観て欲しいなぁ。