今日は、「ミラル」を観てきました。
ストーリーは、
1948年のイスラエル建国直前。路上にうずくまる子どもたちを見かねたヒンドゥ(ヒアム・アッバス)は、子どもたちを育てることを決意。孤児院の子どもたちは増えていき、母親を亡くしたミラル(フリーダ・ピント)も連れてこられた。1987年、17歳になったミラルはイスラエルに蜂起したパレスチナ人によるインティファーダ(抵抗運動)に参加。しかし、警察に連行されてしまい……。
というお話です。
エルサレムという場所は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、すべての宗教の聖地であり、誰もがその場所に定住したいと思うんでしょうね。この地を手に入れるために、血で血を洗うような戦いを繰り広げていて、今でも解決していない問題です。そんな地域での本当にあった出来事が映画になりました。
イスラエル建国からパレスチナが開放されるまでの間の、3人の女性の人生を描いています。まず、孤児になった子供を育てたヒンドゥ、父親に性的虐待を受けて、若くして一人で生きなければならなかったミラルの母ナディア、そしてこの原作を書いたルーラ・ジブリールを描いたミラルという女性、誰もが運命に翻弄され、必死で生きてきた女性です。まったくタイプの違う女性ですが、それぞれの生き方に感動し、涙します。
まず、孤児院を作ったヒンドゥさん。彼女は、家柄も良くお金持ちだったので、イスラエルとの戦いで親を殺されてしまった子供達を引き取り、自分の財産を投げ打って育てます。もちろん、財産だけでは足りず、民間企業などに寄付を募り、子供達を守り続けてきました。もちろん、今も学校は存続しているそうです。酷い戦争状態の中、子供を守るということが、どんなに大変だったか、映画では、それほど描かれていませんが、本当は随分大変だったのだと思います。彼女のような人がいたからこそ、子供が世界に出て活躍出来るのかもしれません。
ミラルの母ナディアは、子供の頃、父親から性的虐待を受け、仕方なく家を出て、一人で生きなければならなくなります。もちろん、女の子が一人で生きるとなると、簡単なことではなく、色々な欲望に傷つけられながら大人になって行きます。そして、傷つき過ぎて、人が信じられなくなり精神的に病んでしまいます。典型的な、世の中に押しつぶされてしまった女性と言えるのではないかと思います。
そして、最後にミラル。ミラルは、現在、小説家になったルーラ・・ジブリール自身です。聖職者である父親に愛され、学校でもヒンドゥに愛された少女は、素直で知的な大人に成長し、今のイスラエルの状態に疑問を感じ始めます。彼女は、素直であるが故に、色々な物を直接吸収してしまい、どんどん理想だけ大きくなってしまいます。若い頃って、そうですよね。広い視野が持てなくて、頭でっかちになってしまう。そして、正論を振りかざしてしまうんです。でも、人間は、正論だけでは生きていけません。周りとの調和や、時間をかけての説得など、色々、加味してから考えをまとめなければなりません。ま、練れてしまわないほうが良い事もあるんですけどね。

ミラルは、色々な経験を経て、イスラエル人もパレスチナ人も、本当は同じ人間なのだと感じ始めます。話してみれば、同じ人間なのだから、銃で撃ちあうなんて、その場では考えられませんよね。だけど、戦争となると、殺しあってしまう。人間は、おかしな生き物です。動物でさえ、共食いは、最後の最後までしないのに・・・。
結局、パレスチナ問題は、今、現在も解決していません。今も、武力介入などが行なわれていて、解決の糸口が見つけられていない状態です。日本からは、遠い国の話だし、「対岸の火事」のように思われて、興味をもたれていないのですが、同じ地球上で起こっていることです。たくさんの子供たちが、親を亡くして、悲しい思いをしているんです。少し、興味を持って、自分達にも出来る事が無いか、考えてみたいなって思いました。

この映画、ぜひ、沢山の人に観て欲しいと思いました。あまり上映されてないのかな。こういう映画こそ、色々な場所で上映すれば良いのに。「潜水服は蝶の夢を見る」のシュナーベル監督なので、映像も美しく安定しているし、内容も実話ながら、フィクションのように楽しめます。フリーダ・ピント他、ウィレム・デフォー、ヒアム・アッバスなど、有名どころの俳優も出てますし、一見の価値があると思いますよ。
・ミラル@ぴあ映画生活
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