フランス映画祭、7作目は、「Chantrapas」です。
このシャントラパスの意味は、”役たたず”という意味だそうです。
ストーリーは、
旧ソ連体制下のグルジア。映画監督のニコラは、検閲や思想統制によって思うように映画作りが出来ないことに耐えかねて自由を求めてフランスへと向かう。ところがフランスでも、映画に商業性を求めるプロデューサーとの闘いがあったり困難の連続。はたしてニコラは自分自身が本当に望んでいるものを作ることが出来るのか?
というお話です。

この内容は、映画制作に携わっている人には、良く解るんじゃないかと思いました。どんなに作りたい物があっても、国の検閲があったりして制限が加わってくるし、スポンサーやプロデューサーの意図も絡んでくるし、もちろん、人気が出て儲かるような作品でなければダメっていう制限が出てきますよね。どんなに作りたくても作らせてもらえないというのは、辛いですよね。結局、出来てみたら、どこかの宣伝用のビデオみたいになってしまったり・・・。そんな映画人の辛さを伝えている映画でした。

最初は、幼馴染の友達二人と一緒に、グルジアの小さな町で映画と言うものに興味を持ち、撮影をし始めます。段々と成長していく過程で、それぞれが違う道に行ったりして、ニコラ一人が映画を続けていきます。映画が好きで、好きなものが撮りたくて、でも、どんなに頑張っても、万人に理解されるような作品として見なされず、”役たたず”と思われてしまう・・・。自分が認めてもらえないって、辛いことですよね。
グルジアの美しい風景が、とても和みました。でも、このグルジアで凄い内戦があったなんて、信じられません。美しく見えても、そこには、苦しんだ人々がたくさん住んでいるんですね。この映画を観る前に、グルジアという国で、どんな出来事が起きていたのかなどを知っておくと、もっと感動出来たのかもしれません。

グルジアという国は、ロシアと対立し、独立するために昔から戦っていました。チェチェン共和国の近隣といえば、どれほど大変な国だか解りますよね。日本は、島国だし、他国からの支配下で思想的抑制を受けたことが無いので、グルジアの問題は、簡単に理解することは難しいでしょう。でも、国によっては、自由という言葉さえ使えないことがあるのです。そういうことが理解出来ないって、幸せなことなのですよね。

昔は、本当に映画を作ることがどれほど大変だったのか、どれほど苦しいことだったのかということを、教えてくれる作品です。「月曜日に乾杯!」「ここに幸あり」の監督、オタール・イオセリアーニさんの最新作です。オタール監督の自伝的作品だそうです。彼がどれほど苦労して、映画を作り続けてきたのかを、この映画で、確認してきてください。色々な事を考えさせられる映画ですよ。
来年2012年春に、岩波ホールほか全国順次ロードショーだそうです。お楽しみにね。