昨日、「終わらない青」の試写会に行ってきました。実は、この映画のデザイン関係をやられている方にお誘いいただいて、観に行ってきたのです。
ストーリーは、
うつ気味の母親とサラリーマンの父親を持ち、来年に受験を控える女子高生・楓(水井真希)。数週間生理が来ていない楓は、そのことを誰にも言えないまま日々を過ごしていた。そんな中、楓はおなかの中の命が自分に向けて愛情を放っていることを感じ取り、産みたいと思い始める。
というお話です。

いや~、驚きました。衝撃的な内容なのですが、でも、現実に起こっている問題を鋭く描いていたので、ショックと共に、こういう問題って、今まであまり表に出てきていなかったけど、やっと、問題として定義され、社会的に考えて行かなければならないのだと認識しました。出来れば、辛くても、皆さんに観ていただいて、こういう精神的な問題を、社会的に解決していかなければならないのだと思います。
ストーリー紹介では書いていませんが、家庭内のDVと性的虐待が描かれていて、そのために、この高校生は自虐行為を頻繁に行っています。今、20代前半の女性の1/7が、自虐行為をしているそうです。色々な理由があるとは思いますが、本人の問題ではなく、家族の問題が、若い命を壊してしまうのは、とても重い罪だと思います。
この彼女は、父親からの性的虐待から逃れられず、母親に助けを求めても、母親は、まったく見てみない振りをしているという最悪の状況です。私は、こんな酷い状況、考えられませんが、この映画の中の家族は、それが現実だし、実際にこういう家族、いるんでしょうね。でも、こんなの、普通じゃないですよ。誰かに助けを求めてください。母親がダメなら、学校や病院、どうしてもダメなら、交番に駆け込んでも良いです。それも恥ずかしければ、近くにいる人誰でも良いです。私にメールくれても良いし・・・。ダメだよ、そんなの我慢しちゃ!!

苦しかったら叫ばないと、誰も状況が分からないんですから、伝えてください。お願い!絶対我慢しないでね。自分を苦しめても、何もならないし、沈んでいくだけです。沼にはまってしまったら、藁でも掴んでください。今一歩、前に進もうという気持ちを持ってください。
この映画を作られた方も、そういう気持ちがあるからこそ、映画として描いてくださって、発信してくださっているのだと思います。新人の監督さんだそうですが、包み隠そうとせず、現実を見据えて描いています。実は、映画が始まっても、音楽が無く、淡々と進んでいくので、あれっ?と思ったのですが、その荒削りというか、脚色されていないような映像が、とても現実的で、段々とこちらにグイグイ押してくるんです。そして、自虐行為に及ぶ女性も、良く描かれるようなキレイに手首を切るとかではなく、本当に自虐行為をしているような状況で、この映像を観た、こういう経験のある女性は、呼吸困難な状況に陥ったそうですよ。
こういう問題を取り上げて、まとめ上げるって、大変だったと思いますが、この作品は、良く出来ていたと思います。映画祭のコンペで上映されたそうですが、出来れば、単館系の色々な場所で、たくさんの方に観て頂きたい映画だと思いました。時間がちょっと短い作品なので、少し安い値段で全国で上映出来ないのかしら。出来たら、たくさんの人に観ていただいて、こういう問題を考えて欲しい。
実は、私、仕事の関係で、色々な家族の方にお話を聞いたりして、その家族に入り込むことが多いんですけど、どう見ても、父親が家族を怯えさせているような状況とか、父親と娘、母親と息子の、緊密な関係などなど、ヤバそうなものも、見ているんですよ。私が気が付いた中では、母親と息子の危ない関係が多いのですが、この映画の父親も、自分の家族を扱う姿を見る限り、父親自身も、子供の頃、両親との危ない関係があったのではないかと思われます。こういう問題は、連鎖するので、どこかで断ち切らなければなりません。
そしてね、自分を傷つける女性、お願いだから、自分を痛めつけないで。あなたは悪くないのだし、逃げているだけじゃ、苦しみからは逃れられないです。何か、掴める物を見つけて、とりあえず、掴んでみてください。そして、這い上がってきてください。傷は残るけど、でも、先は開けます。必ず、助けてくれる人は居るし、助かりますから。傷があればあるほど、先は大きく開けるし、強く生まれ変われます。傷の無い人間なんて、面白みも何も無い。傷ついたからこそ、人を助けられるし人の事を判ってあげられるのだから、必要とされる人間なんです。
問題作で、衝撃的ですが、何度も言いますが、出来れば、たくさんの方に観ていただきたい内容でした。だって、映画として訴えるしか、こういうデリケートな問題を、社会に訴えかけることって出来ないでしょ。製作した監督、スタッフ他、たくさんの方々、頑張って製作してくださって、良かったと思います。
少し気になったのは、生活音のノイズや声の反響などが耳障りだったのと、映像にもう少し、黄金比とシンメトリーが組み込まれていると、全体の安定があるのではないかと思いました。観ていて、ちょっと不安に感じるところがあったように感じます。
この映画を観る機会を与えてくださって、ありがたいと思います。とても印象に残り、考えさせられるところが多かったので、為になりました。自分の経験に無いものは、映画とか書物で知るしかないですから、こういう問題作は、ぜひ、観るべきものだと思いました。
素晴らしい映画、ありがとうございます。
・終わらない青@ぴあ映画生活