今日は、東京フィルメックスで「冷たい熱帯魚」を観てきました。
フィルメックスでは、8作目の鑑賞なのですが、他の作品より先に書いてしまいます。他も書いていますので、待っていてね。
ストーリーは、
小さな熱帯魚店を営む社本の家庭は、不協和音を奏でていた。年頃の娘は、若い五歳に反発し、そのために、妻との関係も上手くいかなくなっていた。娘が起こした万引きをきっかけに、社本は大きな熱帯魚店を経営する村田と知り合う。村田は、社本の娘の万引きを擁護し、自分の店で雇うと持ちかける。その申し出に甘えてしまった社本は、やがて、村田の想像を絶する仕事に付き合わされることになる。
というお話です。

はっきり言って、私には、すごい衝撃作でした。実際にあった事件のいくつかを元に、園監督が書き上げた脚本、凄いです。私が思うに、以前、ペットのブリーダーの連続殺人事件があったと思うのですが、それも、この作品の元になっていると思います。とにかく、凄い残虐です。実際がこうだったとは言わないけど、でも人を殺して、証拠を消す為に色々やったっていうことは、この映画に描かれていることが、まんざらいい加減ではないのではないかと思うんです。もー、すごいです。私、血糊と判っていながら、血に酔いました。
残酷といいながらも、これ、ある程度現実の話じゃないですか。私、思うんだけど、現実が一番面白いと思うんですよね。普段まじめにやっていることって、映像にして後から観たりすると、その時は真剣でも、笑っちゃうようなことってあるでしょ。この園監督って、変に作っていくより、現実を映像にするのが一番面白いのだっていうことを、とても良くわかっている監督なのではないかと思うんです。”愛のむきだし”でも、宗教的なものって笑えましたよね。あういう風に、真剣にやればやるほど、観る人には笑えるんです。いつも思うんですけど、人間って、それぞれ違うでしょ。違うってことは、何が基準か決まっていないっていうことで、人それぞれに基準がある。そして、自分が基準だから、他人がまじめにやっていることって、笑えるんですよね。自分と違うんだから、自分が正しいんだから、他人は間違っているのに、真剣にやっているから可笑しい。そんな風に見えました。
そして、監督がおっしゃっていたのですが、救いが無い映画が作りたかったということで、この作品、救いがありません。でもね、現実って、虐められる奴はとことん虐められるし、勝つ奴はとことん勝つし、救いって無いんですよね。だから、何をしても自分は勝つ方になってやるって思って、なんでもするのが人間だと思うんです。だけど、勝つ為のルールっていうのがあって、それを守らないで楽に勝とうとして、なんでもしちゃう人がこの映画にも出てくるんだけど、そりゃ、無理だよね。勝つ奴って、頭が良くて、どこかで自分が何度も負け組みになった経験が無いと勝てないし、勝つ為には、ちゃんとルールがあるのだと言う事を理解した奴が勝つんだと思うんですけど、ルール無視で勝とうとするから、失敗するっていうのが描かれていました。
そんなルールを無視する人間に目を付けられて振り回される主人公は、かわいそうだと思うけど、でも、自分は逃げてばかりで、子供とも妻とも向き合おうとしなかったから、その報いを受け取るんじゃ~って、ちょっと鼻で笑ってしまいました。先日も”酔いがさめたら~”の感想で書いたけど、どこまでも逃げることは出来ないんだから、ちゃんと選択してねって事が、この映画でも描かれていて、現代人は、選択するのを先延ばしにしている人が多いから、こういう映画が多いのかな~って感じましたね。
それにしても、本当に面白かったって書いていいのかわかりませんが、私は、とても面白い映画だと思いました。やっぱり、この監督、凄いです。映画好きな方だけでなく、現代を生きる為に、自分を見直すために、この映画って、観ると良いのではないかと思いました。但し、すごい血糊なので、気分が悪くなる人もいるかもしれません。そういうのがダメな人は、止めた方が良いかも。でも、人間って、半月で身を持ち崩してしまう出来事があるのだから、普段、ぼんやり生きていたらいかんなって思えるので、ぜひ、ご覧になって見ると良いと思います。
私は、すごいお奨め映画です。グロテスクだけど、たくさんの人に観てほしい作品です。

・冷たい熱帯魚@ぴあ映画生活
