今日は、「キャタピラー」の公開前上映会に行ってきました。
この映画、寺島さんが銀熊賞貰ったの当たり前です。すごいですもん。観てみると解かります。これは、貰うべくして貰った賞ですよ。

ストーリーは、
勇ましく戦場へと出征していったシゲ子の夫、久蔵。しかし戦地からシゲ子(寺島しのぶ)の元に帰ってきた久蔵(大西信満)は、顔面が焼けただれ、四肢を失った姿だった。多くの勲章を胸に、「生ける軍神」と祭り上げられる久蔵。シゲ子は戸惑いつつも軍神の妻として自らを奮い立たせ、久蔵に尽くしていくが……。
というお話です。
戦争時には、すべてが”御国の為”という言葉で許されてしまう、今見ると気がおかしいような感じなんですよ。そして、戦争で芋虫=キャタピラーのようにになってしまった夫を、村では軍神と呼び生き神のように扱うなんて、もう既に、この時点で、冷静に見ていれば日本人は負けるって解かっていたと思うのに、不思議なものです。
手足が無い、芋虫状態の夫を、最初は、献身的に世話しているシゲ子(寺島さん)なんですが、寝る・食べる・抱く しかやらない夫が、段々とイヤになってくる。当たり前ですよ。言葉も喋れず、耳も聞えず、動く事もままならないのに、文句だけは訴えてくる。見ていて、良く世話してるよなぁと思いましたが、軍神様だし、御国の為に、自分も妻の鏡として献身的に尽くしているのだという態度を取らないと、小さな村なので、何を言われるか解からない。国の為と言いながら、自分の保身の為。それが、とても良く表現されていました。

でも、この女性の見栄というのか、周りの目をすごく気にするのは、今も変わらずですよね。結婚して、子供を産んで、自分の夫は一流企業に勤めていて、子供はお受験させてとか、いったい、自分がどこにあるのかと思うことばかりです。何年か前に、外務省の人が収賄で逮捕されて、その妻が”おねだり妻”とか言われていて、すべて夫が夫がと言いながら利益を得ていたんでしょ。自分の力で勝ち取った肩書きで利益を取るならまだしも、これじゃ、いつまでたっても”女は子供を産む機械”とか言われてしまいます。 映画を観た後で、若松監督がティーチインをしてくださったのですが、その時に、”戦前は、女性は人間として認められていなかったんだ。だから子供が産めない女は役立たずと言われたし、選挙権も無かったんです。暴力も日常茶飯事だった。”とお話してくださいました。今は、これほど女性の地位が向上したのに、女性自身の認識が付いていっていないようですね。本能に刷り込まれているのかしら。もう少し、自分で頑張ってみようと思って欲しいなぁ。

もう一つ、女性の描き方が凄いなぁと思ったのは、シゲ子が夫をウザいと思い始めて、段々と嫌がらせしたりするんですけど、嫌がらせした後に、抱きしめたり、謝ったりするんです。これ、母性が出てきてるのかなって思いました。憎らしいけど、ほおっておけないというような、そんな気持ちなのかなって・・・。本当に、この場面の寺島さん、すごいです。監督が”皮膚で演技出来る女優さん”っておっしゃっていたんですが、引きつり方とか、泣き方とか、人間ってこうだよなっていうのが、生々しく伝わってきて、もー、すごいとしか、伝える言葉がありません。
それと、もう一つ、夫が転げまわる場面があるのですが、その時の寺島さんの顔、最初は恐がっているようなのですが、ある時、狂気に変わる感じで笑い出すんです。ここが凄かった・・・。実際にこういう場面に当たったら、こうなってしまうかもって、迫って来る狂気みたいなものがありました。お楽しみにしてください。
私は、今まで、あまり日本の戦争映画とかは観なかったのですが、クリント・イーストウッド監督の「硫黄島」から、少し観てもいいかなって思い始めて、今回、観させていただきました。どうも、昔の日本戦争映画って、戦場での友情とか、キレイな事ばかりだったでしょ。現実じゃないことばかりで面白くなかったのですが、今回、やっと戦争時の生々しい人間の生き方のようなものを観せて頂き、日本人が、やっと戦争での残酷さや悲劇を直視して、自分達の非も受け止めて描けるようになってきたのかなって感動しました。戦争なんだから、日本人も酷い事をしてきただろうし、反対にされただろうし、それを戦争を知らない私達が、ちゃんと直視していかないと、また、酷い戦争が起こることになるんです。戦争って、誰もが被害者で加害者なんですよね。
今日は、本当に感動する映画でした。私、日本人に生まれて良かったなぁ。だって、やっとこういう酷い時の自分の国を、ちゃんと自分達で受け止めて、映画に出来るほど成長してきた民族なんですよね。精神的に成長してこないと、自分が酷い事をしてきたって、受け止められないですもん。
この映画、ぜひぜひ、お奨め映画なので、ご覧になってください。地方では上映が始まっていますが、都心では、終戦記念日から公開だそうです。これは、若い人が観て、色々感じて欲しい映画です。難しい映画ではありません。感じる映画です。監督の意向で、一般は1300円(前売り1000円)学生は500円だそうです。
本当に感動だったので、感想も長くなってしまいました。ごめんなさい。
・キャタピラー@ぴあ映画生活
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