昨日、もう一本、フランス映画祭で”アンプロフェット”を観ました。
ストーリーは、
6年の刑に処された19歳のアラブ人の青年マリク。まだ若く、読み書きも出来ず、刑務所ではまったく無力の存在であった彼は、たちまち所内を取り仕切るコルシカ人グループのいいなりになってしまう。だが、与えられた”仕事”をこなすうちに、刑務所での生き方を覚え、仲間たちの信頼を勝ち取る事に成功する。そして今度は持てる限りの知恵を使い、自分のためのネットワークを張り巡らせてゆく。
というお話です。

アンプロフェット=預言者 という意味だそうで、この映画の重要なポイントとなります。なぜ、彼が預言者と呼ばれるようになるのか。なぜ、彼のそばに予言をする男が現れるようになるのか。なぜ・・・。ということが、最初に起こる事件から繋がって行きます。良く練られたストーリーだと思います。
フランス映画にしては、ちょっとハードな気がしましたが、最後の終わり方を観ると、ま、フランスっぽいかなーとも思いました。フランスというより、イタリアとか、スペインとか、そんな雰囲気を与える映画です。暴力が支配する刑務所の中で、少年がどのように変わっていくのかというお話なのですが、これ、成長っていうんですかね。私には、悪いことをどんどん植えつけられて、頭ばかり大きくなって、精神的な成長はしていないように見えました。力が支配する世界に生きていると、どうしてもこのような映画のストーリーになってしまうのですかね。
確かに、良く出来ているし、アカデミーにノミネートされるだけの映画だとは思いますが、人間としては、これ、どうなのかなぁと思いました。
力で支配される世界に生きるには、このように力を付けるしかないのでしょうが、そこから抜け出して成功しようという考えは、まったく起きないみたいに見えました。この映画に出てくるキャラクターは、すべて、深くて低い世界で戦っていて、這い上がってこようという気持ちも、そういう意識もないんです。なんだか、悲しくなりました。
観終わって、ちょっと暗くなりました。この映画の前に観た”オーケストラ!”という映画が、とても幸せになる映画だったので、落ち込む感じです。映画としては、良く出来た作品だとは思いますが、やっぱり、明るい気持ちにさせてくれる映画が好きだなぁ。
この映画が、日本で公開されるかは判りませんが、もし、公開されて観に行かれるのであれば、元気な時に見てほしいと思います。ちょっと、地上に上れないモグラのような気持ちになります。
