バスクの自宅出産 | タブーから自由になって、より健康で豊かな月経ライフを! ~バスク在住ドゥーラ 寺本裕美子~

タブーから自由になって、より健康で豊かな月経ライフを! ~バスク在住ドゥーラ 寺本裕美子~

月経、妊娠・出産、育児や更年期。心とカラダの健康について、女性のエンパワメントのためのブログです。

こんにちは! スペインバスクより、ドゥーラのユミコです。

 

 

先日、チーム「みんなでお産をみなおさん?」主催の、

「Stay at Home for Birth」という自宅出産についてのお話し会で、

バスクでの試みについて少しお話しさせていただきました。

 

個人的に上手く話せなかったという悔いが残ったので、

ここに書き留めようと思いました。

長いですが、興味がある方はお読みください♪

 

 

 

 

バスクでドゥーラ活動や育児しながらの私個人のこの土地への印象は、

 

・バスク人は、歴史的にみて人権問題に敏感で、

 「知る権利」「選ぶ権利」に特にこだわる民族、かつとても勤勉

・女性が意見し権利主張するため、政府もちゃんと話を聴くという姿勢が、

 他地域と比べ強い

・政治経済の家父長制度に対し反発心が強い

・愛妻家が多い (母ちゃん強し。笑)

・女性運動がめちゃくちゃさかん (男性は応援するしかない? 笑)

・「シスターフッド」「ブラザーフッド」「連帯」「団結」という言葉を頻繁に聞く

 

そう。熱い人たちが暮らす地域なのです~。

 

 

 

お産に関しては、尊厳あるお産を求める母とドゥーラが増えたり、

施設分娩中の権利侵害に対し法的処置で施設を訴える団体もあり、

 

色んな事が、女性が尊重されるために医療や行政に対し

良い圧力になっているのは強く感じます。

 

それでも実際は、性とケアの領域はまだまだ課題がありますが、

抑圧に対し「女性が黙っていない」という事実は、心の保障になっています。

 

 

 

スペインでは、

ほかの多くの国と同じく、60年代ごろまで自宅分娩が主流でしたが、

その後医療が進み施設分娩が増え、

 

80年代の全国での自宅分娩数は96.683件(全体の16.9%)、

2017年は1.273件(0.32%)と、どんどん減りました。

(スペインの人口は約4.600万人です)

 

 

並行して、土曜日から月曜日にかけてのお産の数は減っていき、

会陰切開率が5割越えした時代を経験し、麻酔分娩は増えている。 

そして今のスペイン全国平均の帝王切開率は約25%。

 

ちなみに、バスクでは約13%で、WHO推薦率を守る唯一の地域として誇っています。

(公立施設比較で、ですが)

 

 

 

 

色んな場所と一緒に、バスクでも訴えていることは、

「お産は私たちのもの」 ということです。

 

尊厳あるお産。 管理的でないお産。

自宅出産も含め、皆があらゆる選択肢に、アクセスできるということ。

 

 

産む人が主人公として扱われ、

きちんと出産におけるオプションとそれぞれのメリット・デメリットが伝わり、

誰が付き添うか、どう痛みと向き合いたいか、どんな姿勢で産みたいかなどを選べ、

産む人の希望に沿った空間へのアクセスがあること。

 

管理的な医療が関わる範囲は必要最小限であってほしい。

もっと正しい情報へのアクセスがほしい。 

自己肯定感が育まれる性教育、社会が広がってほしい。

 

 

自宅出産を選ぶのは少数派であっても、

こう意見する女性や家族がいる、ということを、

不可視化してはいけないと思っています。

 

(次男が生まれた日。長男は汗だくで応援団長をしてくれました。)

 

 

「赤ちゃん」だって、文化や社会経済、政治や宗教に影響されている。

でも、産む女性の身体の仕組みも、お産の仕組みも、生後赤ちゃんが必要とする条件も、

昔から変わっていないということを、現代は忘れがちではないかという声もありますよね。

 

 

 

正に「お産の在り方を見直そう」という動きが強まる中で、

「自宅分娩も良いよ、安全だよ」 と伝えたい人が沢山いる理由は、

 

例えば、

産むお母さんが、一番安心して身体を緩められるのが自宅であると考えられるから。

 

選んだ人と産めるから。選んだ人に支えてもらえるから。

来てくれる助産のプロフェショナルがいるから。

 

医療介入に頼る必要なく、生理的にスムーズなお産であるための条件が、

お家のような環境だと整いやすくて、母子への恵みが沢山あることを

体験で知っているからかもしれません。

 

 

 

正しい情報提供の場、心理的にもサポートが得られる場として、

公的施設外で助産師さんが連携し、ドゥーラや小児科医などほか

専門家と一緒にお母さんと交流する場や機会が増えていますが、

バスクでのこういう場は熱くてですね…。

 

参加費を払ってこれからの偉業のために準備している母が、

黙って聞いているだけ、ということは一切ありません。(笑)

 

平等に意見することに意義があるわけです。

皆が新しい命を迎えるための責任者だからです。

 

だからそもそも、母の参加費なんて福祉でカバーされるべきことで、

行政が補助すればいい。 

権利がある、国にそれを満たす義務がある、って書いてあるでしょう?

…という人もおります。

 

エンパワーメントへの意識の強さが伝わります。

 

 

数年前に、

バスク政府が個人負担である自宅分娩費用(35万円前後)を一部補助する、

という試みもありましたが、(スペインから独立した自治州政府があります)

どういうわけか、2年と続かなかったのが残念です。

(政治に左右されるお産、ここにあり?)

 

ドゥーラの同伴を依頼すれば、

それにまた何百ユーロもかかるケースもありますが、

 

 

まだ保険でカバーされない費用を負担してでも、

何とか節約して自宅分娩を叶えたい人、

そして施設でも医療介入を避けられるよう、

自分の望みを主張する人が増えているのは確かです。 

 

産前検診/陣痛期の付き添い/産後の相談、という内容で

自宅でサポートする助産師さんも増えています。 

これは需要があることと、施設のスタッフと信頼関係があって

連携できるという強みでもありますよね。

 

 

 

自宅出産を希望する場合、

基本的に年齢制限はなく、検診の結果で判断されます。

 

ほか、助産師2名が介助すること、

搬送可能な施設から30分以内に自宅があること、

多胎分娩でない、赤ちゃんが頭位であること、

などの決まりがあります。

 

 

その率を地域別で見ると、

 

首都以外では、

「海沿いと北の緑豊かなところで自宅分娩数が多い」ことに気付きました。

 

都市化が広がっても、

「自然との触れ合いが多い = 漁業や家畜農業に携わったり、

畑をしたり動物を育てる人口が多い = お産もなるべく医療介入なく、

自分が生活する環境に近い形で実現したい」 と

思考が向くのかな、と思ったのです。

 

 

緑豊かで農耕・採集・狩猟の習慣がある地域では、

大地を母とし、農耕を生殖活動と同じとみなす、

自然崇拝的な母性的宗教観が生まれやすいと言われています。

 

自然のあらゆる要素を神とするのもそこからで、

バスク神話にそれがうかがえます。

日本もそうなんだよな~って。 背景が似てるよな~って思うんです。

 

 

 

時間はかかっても、いつか自宅分娩が安全なオプションとして

広く認められますように。

これも女性にとって安全な選択肢の一つなのです。

 

お読みいただき、ありがとうございました!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

月経講座をお届けしています。

関心がある方は、

Eメール:yumikodoula@gmail.com まで、ぜひお問い合わせください。

(内容詳細は画像↓をクリック。)