試験問題を作成している時、
「疾患の知識ばかりで、看護の本質を問えていない…」
そんな経験はありませんか?
特に成人看護学では、疾患のメカニズムや治療法に焦点が当たりがちで看護の視点が置き去りにされることがあります。
知識偏重の教育の弊害
解剖生理から症状、治療まで、網羅的な知識を詰め込む講義。
しかし、いざ実習に出た学生は教科書の「〇〇の看護」を読んでも、その意味を理解できなかったり、実践に結びつけられなかったりします。
これは
看護の視点が明確に示されないまま学生が知識の海に放り込まれているからです。
解決策:看護のポイントを「先に」提示する
解決策はシンプルです。
講義の冒頭で、疾患に対する看護のポイントを提示するのです。
例えば、COPDなら「安楽な呼吸の提供」が重要なポイントだと伝えます。
「そんなこと?」と思われたかもしれません。
しかし、重要なのはここからです。
なぜ「安楽な呼吸の提供」が重要なのか?
問いかけで思考を深める
学生に「なぜ安楽な呼吸の提供が重要なのか?」を問いかけます。
ありがちな答えは「息が苦しいから」「酸素が足りないから」といった表面的なものです。
そこで、さらに問いかけを重ねます。
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「COPD患者の呼吸困難は、なぜ生じるのか?メカニズムを調べてみましょう。」
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「肺炎による呼吸困難と、COPDによる呼吸困難は何が違うのか?」
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「COPD患者に安楽な呼吸を提供するために、具体的にどんなことを考える必要があるか?肺炎患者へのケアと何が違うか?」
これらの問いかけを通して、学生は疾患の病態生理に基づいた看護の根拠を深く理解し、教科書に書かれた表面的な知識を、患者に寄り添った実践的な知恵へと昇華させることができます。
COPDの例:問いかけの具体例
COPD患者への安楽な呼吸の提供を例に、具体的な問いかけのステップを見てみましょう。
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最初の問い: 「COPD患者にとって、なぜ安楽な呼吸が重要だと思いますか?」
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メカニズムの探求: 「COPD患者の呼吸困難は、どのようなメカニズムで起こるのでしょうか?気道、肺胞、呼吸筋の働きに着目して調べてみましょう。」
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疾患間の比較: 「肺炎や喘息など、他の呼吸器疾患による呼吸困難と、COPDによる呼吸困難は何が違うのでしょうか?それぞれの疾患の病態生理を踏まえて考えてみましょう。」
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具体的なケアの検討: 「COPD患者に安楽な呼吸を提供するために、どのような看護ケアが考えられますか?体位、呼吸法、酸素療法、薬物療法など、具体的な方法を挙げ、それぞれの根拠を説明してみましょう。」
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個別性の考慮: 「同じCOPD患者でも、病状の程度や合併症の有無によって、必要なケアは異なります。患者の個別性を考慮したケアを提供するために、どのような情報収集が必要でしょうか?」
これらの問いかけを通して、学生はCOPD患者の呼吸困難のメカニズムを深く理解し、根拠に基づいた看護ケアを実践するための思考力を養うことができます。
講義の締めくくり:教員による「腑に落ちる」まとめ
問いかけ中心の講義では、学生の理解度にバラつきが出ることがあります。そこで、講義の最後には、教員が学生の意見を整理し、疾患に対する看護の全体像を明確にする必要があります。
例えば、「COPD患者の呼吸困難は、気道閉塞や肺胞の破壊によって起こり、酸素化と二酸化炭素の排出が困難になる。そのため、安楽な呼吸を提供するためには、気道を開放し、呼吸筋の負担を軽減し、酸素化を促進するケアが必要となる。これらのケアは、患者の病状や合併症に合わせて個別化する必要がある。」といったまとめをすることで、学生は知識を整理し、自信を持って看護を実践できるようになります。
試験で「看護」を問うために
この方法を取り入れることで、試験問題も変化します。単なる知識の暗記ではなく、「COPD患者の呼吸困難に対する看護で最も重要なことは何か?その理由を述べよ」といった、思考力と判断力を問う問題を作成できるようになります。
実習と国家試験への応用
講義で培われた思考力は、実習や国家試験でも役立ちます。
患者の状態を的確にアセスメントし、根拠に基づいた看護計画を立案し、
効果的な看護ケアを実践する。
これこそが、私たちが目指すべき看護教育の姿です。
最後に
看護はクリエイティブな実践です。
教科書を丸暗記するのではなく、患者の苦しみに寄り添い
根拠に基づいたケアを提供する。
そのために、問いかけを通して学生の思考力を刺激し、看護の本質を深く理解させる。この方法をぜひ試してみてください。
あなたの熱意と工夫で、看護教育はもっと面白く、もっと深くなるはずです。
応援しています!
