マニュアル大国と人任せ大国 | ゆうきの韓国スケッチブログ

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ソウルに住んで16年目の日韓夫婦。韓国の日常をつれづれなるままに文字や写真やイラストでスケッチしていきます。

今日は、ひと月ほど前に目にしたある記事について
韓国に住んでいる立場から考えたことを書いてみたいと思います。
(本当はもっと早く書くつもりだったのですが、なんだかんだでタイミングを逃してしまったという言い訳)

その記事と言うのはこちら。

坂上忍が接客対応への怒り爆発「マニュアルのことしかできないガキが多い」


簡単にいうと、タレントの坂上忍さんがファーストフード店や、コンビニで、
「常識的に考えたらわかるだろ!」ということまで
マニュアル通りの対応しかできない店員に対して苦言を述べているというものです。


たしかに、僕も一時帰国するたびに感じるのですが、
日本の接客業におけるマニュアル教育はすごいと思います。

発音セミナーをやっている関係もあって、全国いろんなところにお邪魔するのですが、
どんなところに行っても、ほぼ全国均一の(それもかなり高レベルの)接客を受けることができます。
それはひとえに店員に対するマニュアル教育が徹底しているため。

たしかに、どのお店に入っても判で押したような対応しかしない店員に、
人間ではなくてまるで接客プログラムを組み込まれたサイボーグと会話しているような、
そんな味気なさ、というか一種の薄気味悪さを感じてしまう。という意見も
たしかに一理あるな、と思います。

しかし、韓国に住んでいる身としては、
画一的であれ、全国どこでも同じようなサービスを受けることができるという安心感は正直かなり羨ましいものがあります。

韓国の接客の善し悪しは、はっきりいって
その店員さんのキャラの善し悪しによって100%左右されます。

もちろん、近年は韓国でもチェーン店を中心に
「顧客満足」という合言葉のもと、マニュアル教育が熱心に行われていますが、
どんなサービスに当たるかというのは「時の運」です。

よく、「韓国人は◯◯だ」とか「韓国という国は××だ」とか
ステレオタイプで語る人に対し、
「一言で韓国人と言ったって、人によりますよ。いろんな人がいますよ」
という反論をしているのを見かけます。
その意見には僕も基本的には何の異論もありません。
レッテルを貼り、個性を無視して、十把一絡げで物事を語るのは短絡的な思考の持ち主のyることだと思います。

しかし、しかし、
それにしても...です
韓国は少々「人によりすぎる」ところがあるような気がします。

タクシーの運転手も、コンビニの店員も、会社員もOLも、サービス業におけるアタリとハズレの差が絶望的なほどなのです。

たとえばソウルのある店で素敵な接客を受けたとします。その場合、その店の教育や接客方針が良いのではなく、その店員が「もともと良い人」である可能性が大なのです。
もちろん逆もしかりです。
だから、すごく気持ちいい接客を受けて気に入った店に他の人を連れて行ったら、バイトが変わってて「本当に同じ店なのか?」と思うほどがっかりさせられることも珍しくありません。
すべては「人による」わけです。

もちろん、行きすぎたマニュアル対応にイライラする気持ちはわからないでもないですが、
マニュアルがあってないような国にいると、どこに行っても一定のサービスが確実に受けられる安心感がかけがえのないもののように感じられます。
タクシーに乗るたび、
食堂に入るたび、
コンビニを訪れるたび、
「この店員さんはどうかな?」と
(半分ぐらいはハズレの)ロシアンルーレットし続けるのも疲れるものです。

日本がマニュアル大国であるとするならば、
韓国は人任せ大国とでも言えるのではないでしょうか。


ただ、逆に言うと人を味方につけてしまえば
日本では考えられないほどの、素晴らしいサービスを受けられるのも韓国の魅力です。

そこにはサービスについての基本的な考え方の違いがあるのではないかと思います。

日本におけるサービスが
「すべての顧客が平等に満足できるようなおもてなしをすること」
であるとすれば、韓国のサービスは
「特別の人だけに、めいっぱい特別のもてなしをすること」
なんだなあ、ということを日々感じます。