「私は自分に価値がある」と思えるときにだけ、勇気を持てる。
実はこの言葉、アルフレッド・アドラーのお言葉。
とっても示唆に富む言葉だと思います。
ちなみに、きのう読んだ本にこんなことが書かれていました。
少年野球の監督さんから聞いた話だそうです。
そのチームは弱いチームで、試合をしても負けてばかり。
そのため監督さんは、どうにかして強いチームにしようと、子供達のプレーに対して口を酸っぱくして注意していたそうです。
例えば、バッティングでは大振りするなとか、守備や走塁では緩慢なプレーをするな、など。
しかし、いくら口を酸っぱくして叱ったり指導しても、悪い癖は直らなかったんだそうです。
それどころか、子供達は、どんどんやる気を失っていく始末。
そしてチームをやめる子が続出し、チームの存続自体も危うい状態になってしまったんだとか。
そこで強いチームを作ることを諦めた監督さん。
子供達の好きなようにプレイさせることにしました。
おそらくその時、監督さんの中で物の見方に関して変化が生じていたのでしょう。
それまでは、強いチームを作ることを意識していたので、理想の状態をイメージしていた。
きっとそこから現実の子供達の状態を引き算して、できていないことに目が向いていたに違いありません。
しかし、強いチームを作ることを諦めた監督さん。
きっと子供達の「いま、ここ」を見ることができるようになったのでしょう。
そのため、自然とよくできたプレーに対して褒めることが増えていったといいます。
すると・・・
子供達の目の色や態度、そして練習に取り組む姿勢も変わっていったとか。
そしてどんどん上手になって、試合でも勝てるようになっていった。
しかも、厳しく注意しても治らなかった悪い癖も自然に直っていたそうです。
このことについて、本の著者は、次のように説明しています。
しかられるのは自分の態度や行動などが否定されることであり、有能感や自己効力感、すなわち自信を失わせる。逆にほめられると自信がつく。
ここでは、ほめるという言葉が使われていますが、この本の著者は「ほめる」よりも「認める」ことを推奨しています。
本のタイトルも、
「認め上手 人を動かす53の知恵」。
著者は太田肇さん。
たまたまほめるという言葉を使ったのだと思いますが、どちらにせよ、人を動かす基本は大人でも子供でも同じなんですね。
人は認められてはじめて、アドラーが述べるように「自分には価値がある」と思えるのだと思います。
その土台があってこそ、勇気をもって行動できるようになるのでしょう。
だから、勉強でもスポーツでも他の習慣などでも、子供を認めてあげて(勇気づけ)、「自分には価値がある」「自分はOK」という有能感や自己効力感を育ててあげる。
その土台を作ってあげることなく、子どもを行動に促すのは難しいのかもしれません。
でも、できていること、うまくいったことなどを認めてあげることで、いまの野球の例に示されるように、子どもはどんどん練習にも打ち込むようになり、技能を高め、試合にも勝てるようになる。
そう言えば、陸上の監督さんに同じような話しを聞いたことがあります。
知り合いに陸上で実業団の監督をしていた人がいるのですが、その方は、現在でも中学生や高校生の指導などもされています。
その指導を受けたある高校生は、インターハイで優勝したことも。
その方に人を伸ばすコツについて聞いたことがあります。
その方はこのように答えてくれました。
人を伸ばすコツがあるとしたら、決して、その子の悪いところをけなさないことだね。
悪いところをけなすのではなくて、いいところを見つけてほめること。例えば、いまのフォーム良かったね、とか。
悪いところ、できないところをけなしたり、叱ったりしている必ずやる気をなくすから。
逆に悪いところがあっても、いいところを見つけてほめていると悪い部分もなくなってくるもんだよ。
野球の例と同じだと思いませんか?
やはり、子どもの良い点に注目してそれを認めて(勇気づけて)、「自分には価値がある」と思えるように指導することで、人は勇気をもって行動できる。
これらの事例は、アドラーのお言葉の正しさを裏書きしているのかもしれません。