今日も、過去記事を修正して、再アップします。
さて、
長旅の車中、6歳のロンは、静かに物思いにふけっていました。
静かに落ち着いている、そんなわが子を見て、お母さんは、言います。
「あなた、ほんとうにいい子ね、ロン。とっても行儀がいいわ」
その直後、なんとロンは車の中の灰皿を引き出して中身を親たちの上にぶちまけてしまったのです。
お母さんは困惑してしまいました。
彼は、なぜ、褒められたにもかかわらず、灰皿の中身をぶちまけるという行為に及んだのでしょうか?
普通、褒められると気持ちがよくて特に子供だったら喜びそうなものです。
しかし、彼は、違いました。
臨床心理学者のハイム・G・ギノット氏は、褒めることについて、次のように説明しています。
心理療法では子供に向かって「きみはいい子だ」とか「すばらしい」などとは言わない。評価を下すような称賛は避けるのだ。
なぜか?
子供の助けにならないからだ。
そうした言葉は不安を生み、依存を招き寄せ、子供を防衛的にさせる。
また、自主性や自信を育むことにもつながらない。
なぜなら、自主性や自信は他者の判断によってではなく、内的な動機や評価によって育まれるからだ。
子供は評価を下す賞賛のプレッシャーから自由でなければならない。
さもないと、子供は他者からの承認を必要とする存在になってしまう。
「子供の話にどんな返事をしていますか?」
草思社 ハイム・G・ギノット著
世間では、褒めることが大切であると言われていますが、このような事例を知ると、どうやらそうでもなさそうです。
褒めることによって、子どもの心に不安や依存を育ててしまう可能性さえある。
しかも自信や自主性を育むこともない。
そう考えると、いくら褒めたところで、それによって、子どもが自ら勉強したり、自主的に何かをしたりすることはなさそうです。
ギノット氏はさらにこう警告します。
ほめれば子供に自信がつき、安心感を覚えるようになると、たいていの人は信じている。
しかし、現実には、子供を緊張させ、無作法なふるまいに導く可能性がある。
数週間たって、ロンは爆発したその理由を自分から明かしました。
彼は、前の座席に座っている両親の間で、すやすやと寝ている弟を見て、嫉妬の念に駆られてしまいました。
そして、どうすれば弟を追い出せるか考えていたんだそうです。
ちょうどその時、お母さんに
「ほんとうにいい子ね」
とほめられたのです。
ほめられたロンは罪の意識を感じ、緊張し、自分が賞賛に値しないことを示そうとして灰皿をぶちまける、そんな不作法な行動に出たというわけです。
このように考えてみるとやはり、褒めるというのは問題がありそうです。
では、今回のケースで、お母さんが別の言い方をしたとしたら、どうだったでしょう?
アドラー心理学では、褒めるのではなく、勇気づけをおこなうことを勧めています。
勇気づけは、褒める事とは違います。
褒めることは、上から下の者への評価だったりします。
しかし、勇気づけは、・・・
長くなりそうなので、またの機会に!