官女 | 『花のほかには』-fuyusun'sワールド-

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fuyusunの『何じゃこりゃ!長唄ご紹介レポート』
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長唄全集(十一)吾妻八景/官女/芳村伊十郎(七代目)
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見渡せば柳桜に錦する、都はいつか故郷に、馴れし手業の可愛らし

こちの在所はなぁ、ここなここな此浜越えて、あの浜越えて、ずっとの下の下の関

内裡風俗あだなまめきて、小鯛買はんか鱧買やれ、鰈買はんかや鯛や鱧これ、買うてたもいのう、

あアしよんがいな、いかにみすぎぢやよすぎぢやとても、おまな売る身は蓮葉な物ぢやえ、徒歩はだし

そなた思へば室と八島で塩やく煙、立ちし浮名も厭ひはせいで、朝な夕なに胸くゆらする、楫を絶えてやふつつりと、

たよりなぎさに捨小舟。

心づくしの明暮に、乱れしままの黒髪も、取上げてゆふかね言の、生田の森の幾度か、思ひ過して

恥かしく、顔も赤間が関せかれては、枕に寒き几帳の風も、今は苫洩る月影に、泣いてあかしの海女の袖、

いつひあふぎ松の葉の、磯馴小唄の一ふしに

友のぞめきにそそのかされて、船の帆綱をかけぬが無理か、すまよすまよ、いとど恋には身をす

夜半の水鶏を砧と聞いて、たてしかな戸を開けぬが無理か、すまよすまよ、怨み勝なる床の中、憂やつらや

波のあはれや壇ノ浦、打合ひ刺違ふ船戦の駈引き、浮き沈むとせし程に、春の夜の波より明けて、

敵と見えしは群れ居る鷗、関の声と聞えしは、浦風なりけり高松の、浦風なりけり高松の、朝風とぞなりにける