- 長唄全集(5)手習子/大原女/越後獅子/芳村伊十郎(七代目)
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打つや太鼓の音も澄み渡り、角兵衛、角兵衛と招かれて、居ながら見する石橋の、
浮世を渡る風雅者、うたふも舞ふも囃すのも、一人旅寝の草枕、
おらが女房を褒めるぢゃないが、飯も焚いたり水仕事、麻撚るたびの楽しみを、独り笑みして来りける。
越路潟、お国名物はさまざまあれど、田舎訛の片言交じり、
獅子唄になる言の葉を、雁の便りに届けてほしや、小千谷縮の何処やらが、見え透く国の習ひにや。
縁を結べば兄やさん、兄ぢゃないもの、夫ぢゃもの。
〈浜唄〉
来るか来るかと浜へ出て見ればの、ほいの、浜の松風音やまさるさ、やっとかけの、ほいまつかとな。
好いた水仙好かれた柳の、ほいの、心石竹気はや紅葉さ、やっとかけの、ほいまつかとな。
辛苦甚句もおけさ節。
何たら愚痴だえ、牡丹は持たねど越後の獅子は、己が姿を花と見て、庭に咲いたり咲かせたり、
そこのおけさに異なこと言はれ、ねまりねまらず待ち明かす、御座れ話しませうぞ、
こん小松の蔭で、松の葉の様にこん細やかに、弾いて唄ふや獅子の曲。
向ひ小山のしちく竹、いたふし揃へてきりを細かに十七が、室の小口に昼寝して、
花の盛りを夢に見て候。
見渡せば見渡せば、西も東も花の顔、何れ賑ふ人の山、人の山。
打ち寄する、打ち寄する、女波男波の絶え間なく、逆巻く水の面白や、面白や。
晒す細布手にくるくると、さらす細布手にくるくると、
いざや帰らん己が住家へ