天照らす春の日影も豊かにて、指手引手の一さしは、昔時を今に式三番、
ありし姿をかり衣に、竹田が作の出来栄。
とうとうたらりたらりら、たらりあがり、ららりどう。
千代の始めの初芝居、相河原崎賑はしく。
人の山なす蓬莱に、鶴の羽重ね亀の尾の、長き栄えを三ツの朝、幸ひ心に任せたり。
鳴るは滝の水、鳴るは滝の水、
なると云ふのはよい辻占よ、天津乙女の様が許、絶えずとうたり、絶えずとふのが誠なら、
日は照るとも、濡るる身に、着つつ馴れにし羽衣の、松の十返り百千鳥、絶えずとうたりありうどう。
其恋草は千早振、神のひこさの昔より、尽きぬ渚の国土安穏、今日のご祈祷なり
おおさえおおさえ喜びありや喜びありや、我が此処より外へはやらじとぞ思ふ。
天の岩戸を、今日ぞ開けるこの初舞台、千代万代も花のお江戸のとつぱ偏に
お取立、をこがましくもお目見えに、ほんに鵜の真似鴉飛び。
難波江の岸の姫松葉も繁り、ここに幾年住吉の
神の恵みのあるならば、君にあふぎの御田植、逢ふとは嬉し言の葉も、
浜の真砂の数々に、読とも尽きぬ年波や
なじよの翁は仇つき者よ、つい袖引いて靡(なび)かんせ。
そうも千歳仲人して、水も洩さぬ中々は、深い縁ぢやなないかいな、おもしろや
相生のまつ夜の首尾に逢ふの松
ほんに心の武隈も、岩代松や曾根の松
あがりし閨の睦言に、濡れて色増す辛崎の、松の姿の若みどり
千秋万歳万万歳、五風十雨も穏やかに、
恵みを願ふ種蒔と、謡ひ奏でて祝しける。