キャンディの森346話 テリィ物語 ロイヤルカンパニーの副団長 | キャンディの森

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キャンディキャンディの私的二次小説


「テリィ!しっかりして!テリィ!!」
キャンディは人目を憚らず倒れゆくテリィを抱きしめた。

「おい!救急車を呼んでくれ!」
誰かが叫んでいる。
テリィは病院へ運ばれていった。

キャンディは病院の椅子でどうして照明器具がテリィに落ちてきたのか考えていた。あまりにも偶然すぎる。それに、スザナの事故をまるで嘲笑っているかのようだわ。。これは誰かが仕組んだ罠だったんじゃ。。

そんな事を考えていると身の毛もよだつ感じがして震えがきた。

テリィの命が狙われている。。!  
誰なんだろう。。劇団員なのか。。テリィを恨んでいる人って。。

団長のウィリアム・キャンベルがキャンディの所に来た。
「あなたはテリィと親しいようですが。。」
「ええ。。あの。。テリィの。。」
何といえばいいのか迷った。
「テリィの大事な人だね?」
「えっ。。あなたは。。?」
「やっぱり!テリィにピッタリな人だね!ああ、紹介が遅れてすまないね。僕は劇団長のウィリアム・キャンベルだ。宜しく。」
「まぁ、そうだったんですね!私はキャンディス・ホワイトです。キャンディって呼んでください。」
「キャンディか、なんて可愛らしい人なんだ。名前の通りの人だね!」
「まあ、そんな!恥ずかしい。。」
キャンディは顔を真っ赤にして照れた。
「しかし。。あんな大きな物が落ちてくるなんて
劇団で始まって以来だ。」
「あの。。テリィが誰かにはめられたって事はありますか?」
「残念だが、あるかもしれない。。信じたくはないがね。。そこのところは迂闊に言えないから、警察に任せるしかないね。テリィは素晴らしい才能を持った俳優だ。アメリカでの評価は高かったが、イギリスではどうなんだろうと思ったが、心配ご無用だったよ。彼の演技は本当に素晴らしい。シェイクスピアをやるために生まれてきたような男だよ。彼はまだ若いのにもう円熟しているんだ。まぁその事に嫉妬を抱いているヤツはたくさんいるだろう。。この世界じゃね、当たり前の事だ。」

キャンディはウィリアムの話を聞きながらテリィの置かれている立場を改めて理解した。

病室から医師が出てきた。

「テリュースさんは、頭を打撲していますがしばらく休むと大丈夫でしょう、あちこち怪我をしてますので処置をしておきました。足を強く打っているので腫れていますが、若いから休めば大丈夫でしょう。何か変わった事があれば呼んでください。では。」

「はい。。」

「どうぞ、お部屋に。。」
看護師はキャンディを案内した。

「。。。スザナ!」

テリィはあの事故を思い出しているんだわ。。

テリィは夢を見ていた。。

「スザナ!大丈夫か!」
「足を切断しなければ助かりませんでした。。」
「あなたはスザナのそばにずっといてください。一生。。一生。。一生!」

「ああーっ!! 助けてくれーっ!!」

テリィは大声で叫び目を覚ました。

「テリィ。。テリィ!私よ、キャンディ。。」
「。。。キャンディ。。!」
テリィはうっすらと目を開けた。
「テリィ、大丈夫。。?!こわい夢を見たの。。?」
「。。。ああ、夢か。。良かった。。」

テリィの心はやはりまだあの事故のトラウマに苦しんでいるのだとキャンディは知った。

「もう大丈夫よ、テリィ。。ウィリアムさんも来てるわ。。」
キャンディはウィリアム団長を病室へ招いた。
「団長。。」
「テリィ。。気がついたかい?良かった。。怪我は軽いようだよ。しっかり休んでまた次の舞台から頼むよ。。お客が大喜びして帰っていったぜ。」
「良かった。。ありがとうございます。」
「じゃな。。ゆっくり休んで。。」
ウィリアムは病院を出ていった。


「キャンディ。。」
「テリィ、苦しいのね。。うなされてたわ。。」
「普段は忘れているつもりだった。。だが芝居中にあんな事が起こるだなんて。。」
「誰かの仕業かもしれないですって?」
「。。。」

テリィは目を閉じて誰がそんな事をしたのかはもうわかっていた。副団長のマットは前方のライトの下で最終幕を演じろとわざわざ言ってきたのはおかしかった。観客に良く見えるようにと善意を装って細工していたに違いなかった。



ウィリアムは劇団に戻り、マットに事情を聞いた。
「この事故の件で君に聞きたい事がある。何か知ってる事があったら教えてくれないか?」
「ああ、僕は照明係に点検させましたよ。わざわざ。テリィの頭上に落ちたら大変だからとネジを締めさせたんですよ。」
「じゃ、どうしてあんな重いものが落ちてくるんだろうね。。」
「照明係がわざと緩めたに決まってる。締めたと言ってたがわざとその時に緩めたに違いない。」
「だがなぜそんな事を彼がする必要あるんだ。」
「さあ。。僕に聞かれても知りませんよ!」
「これは警察に来てもらわねばならないな。」
「警察に?」
「ああ、一歩間違えればテリィは死んでいたかもしれない!明らかな殺人未遂だ!テリュースに対する憎悪と嫉妬だ。。そうじゃないかね。。?」
ウィリアムは鋭い視線をマットに向けた。
マットはさの視線を避けた。
「。。。そうですか。。」
「君も参考人として色々聞かれるだろうが誠実に答えるんだ。いいな!」
「団長。。俺を疑ってるんですか。。?」
「正直に話せと言っているだけだ。王室が来られていたというのに何ていう恥さらしだ!」
「ええ、本当に。。」

それから照明係が警察に事情聴取を受けた。
「私はキツイぐらいにネジを締め直したんだ!マットさんに聞いてくれ! 俺は本当の事を言ってるさ!俺が緩めただと?誰だ!そんな事を言う奴は!俺はテリュースのファンなんだ!信じてくれ!そんな事をするはずがない!」

「そのマット・ウォーレン氏だが、テリュースの事を嫌っていたとか知っているのかね?」

「そう言えば、良く悪口を言ってましたね。。中堅の俳優たちと。。」

「そうか、奴か。。いや、ありがとう。君はもう帰ってくれ。」
刑事はそう言って照明係を帰し、警備員らに聞き込み調査を行った。

「そう言えば私が帰ろうとした時に、確か夜中でしたがマット氏の車が劇場に来るのを見ましたね。忘れ物かと思いましたので声をかけませんでした。」

「やはりそうか。。」

警察がマットに聞いても否定をするばかりだったが、照明器具を調べるとマットの指紋が出てきて結局は犯人である証拠が掴まれ逮捕となった。
マット・ウォーレンは劇団から解雇されたのは言うまでもなかった。


テリィは自宅でその事を新聞で知った。

「キャンディ、見てみろよ。」

「 ロイヤルカンパニーの副団長、テリュース事故の真犯人!   テリィ。。!  まさか副団長が。。」
「ああ、あの人は入団テストの時から俺を嫌っていた。エレノア・ベーカーの息子だと言う事もどこかで聞いたのか、嫌味を言われた。残念だが、仕方ない。」
「卑怯だわ!そんなやり方で人を陥れようとするだなんて!許せない!」
「まあ無事で良かったよ。」
「もしあなたが死んでたら私は。。!私はどうすれば!」
「俺が死んだらどうする?」
テリィはソファに座り足を組んで新聞を広げたまま聞いた。
「生きていられないわ。。」
「嬉しいね!でも死んじゃいけない。」
「死ぬわ!」
「死なないよ!君は!」
クククッとテリィは、笑っている。
「本当よ。。テリィ。。」
「わかったよ。。キャンディ。俺は大丈夫だ。」


その後、テリィはロイヤルカンパニーの副団長に選ばれたのだった。

「テリュース、今回の事は許してくれ、俺の監督ミスで君を危ない目に合わせてしまって。。もう身体は大丈夫か?」


「いえ、団長のせいではありません。そんな、謝らないでください。。それよりも俺が副団長だなんて。。」
「いやいや、君は今やこの劇団の中心的存在だよ。必ず背負って立っていく人物だ。だから当然の事だと思ってるよ。」
「団長。。」
「キャンディ嬢は元気にしてるかい?憔悴しきっていたぞ。君の大事な人なんだろう?」
「ええ。。」
テリィは恥ずかしそうにはにかんだ。
「結婚はしないのかい?」
「ええ、近々にと思っていた矢先の事だったので。。でもようやくこれで晴れて結婚できます。」
「きっと世界中の女性ががっかりするだろうよ!」
そう言ってウィリアムは大声で笑っている。
「彼女には大変苦労をかけているので、早く結婚したいと思ってるんです。。」
「劇団の方はしばらくオフだから構わないよまた秋からよろしく頼むよ、テリィ副団長!」
「はい、よろしくお願いします!」


テリィは自宅に戻ってキャンディに報告した。

「まあ、すごいわ!テリィが副団長だなんて!」
「うん。。それは別にいいんだ。それより。。早く。。」
「なぁに?」
キャンディはキッチンでコーヒーを入れながらテリィの話を聞いていた。
「俺たちの。。俺たちの結婚式を早く挙げよう。」
「テリィ。。!」
「早く結婚して君を安心させたい。」
「テリィ!」
キャンディはテリィの方へ走り寄り飛びつくようにして胸に飛び込んだ。
「なんてステキなの!本当に結婚できるのね?!」
「当たり前だろう?」
「だってあんな事があったからしばらくはって思っていたから。。」
「俺は君と一刻も早く正式な夫婦になりたいんだ。。」
「テリィ。。」
テリィはキャンディに口づけをした。
「キャンディ。。」
長い長い口づけ。。キャンディはテリィのたくましい腕に包まれて身も心もとろけそうになった。
「愛しているよ。。キャンディ。。」
「テリィ。。私もよ。。もう一人で苦しまないで。。あなたの苦しみを私にも分けてほしい。。」

そう言ってキャンディはふと昔にアルバートさんがそう言ってくれた事を思い出した。

アルバートさん。。アルバートさんは私を心から愛してくれていたのね。。養父として。。いえ、心から愛してくれていた。。

キャンディはアルバートの大きな愛に感謝していた。

「キャンディ。。明日にでも親父に会いにいこう。結婚の報告に。」
「。。。心配だわ。。もし、反対されたら。」
「反対されても俺の気持ちは変わらない。何も心配しないでいいんだ、君は。いいね?」
「ええ!」
「やっと笑ったな!さてと、お楽しみを先に。。」
「テリィ!」

テリィはキャンディを抱いて寝室へ入りドアをパタンと閉じた。

リビングには夜の光が差し込み、静けさが漂っていたが熱い愛の吐息がドアの向こうから時々聞こえるのだった。