キャンディの森 344話 テリィ物語 悪夢再び | キャンディの森

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キャンディキャンディの私的二次小説

 
  テリィのハムレットの千秋楽の日。。

キャンディは深緑色のロングドレスを着て劇場へ行った。

「いよいよ、千秋楽ね。。テリィ!お疲れ様。。これが終わればしばらくずっとテリィと一緒にいられる。。」

キャンディはそんな事を考えながらワクワクしていた。

千秋楽は役者たちも気合いが入っている。お互いにここまで良くやってきたと褒め合い、あるいは誰かがミスをしても励まし合いながら進めてきた。芝居は一人でできるものではなく、役者も裏方も一体となってのチームワークだ。その事はテリィは、ロックスタウンからニューヨークに帰って裏方の勉強をしながら這い上がってきた事がとても今役に立っているのだった。


「テリュース、最後の立ち位置なんだが、後方のライトの真下になっていたが、前方のライトの下に変更らしい。いいな?」

副団長のマット・ウォーレンがシナリオに書き込みを入れたものを見せながらそう言った。

「こことここのセリフの間に移動してくれ。。いいな、ホレイショー役のやつには既に伝えてある。ちょっとでもお前を見たいというお客さんの事を考えての事だ!いいな!間違えるなよ。」


そう言ってテリィの肩を叩きウィンクして立ち去った。その時にテリィはマットが妙な笑いを浮かべているような気がしたのは気のせいだったのかもしれない。

「わかりました。副団長、必ず。。」
そんな事を疑っている暇もなく楽屋はごった返しているのでとにかく従う事にした。


マット・ウォーレンはテリィの人気が益々高まってきていつか自分を押しのけて副団長になるのではないかと内心ビクビクしていた。あいつさえいなければ。。といつもそう考えていた。いきなりアメリカから来たやつに俺の苦労がわかってたまるか。。
そんな事を考えながらテリィの情報を集めていた。

「確かあいつはスザナ・マーロウと婚約してたはずじゃ。。」
その事の発端が照明落下事故にあった事を思い出した。

「ふふふ。。いいアイデアが浮かんだ。。今度はお前の番だぜ。。」

マットは計画通りに事を進めた。昨日の夜の事だった。照明係を捕まえてこう聞いた。

「上の照明が落ちてこないかどうか確かめたいんだ。」
「そんな事なら私が確認しますよ。副団長にさせるわけにはいきません!」
「そうかい、そしたらちょっと見てくれないか?」
「ええ、どこですかね?」
「この前方のライトを見てくれないか?明日、テリュースが立つ事になっていて、落ちないか再確認したい。」
「わかりました。」

照明係はネジの緩みがないかどうか確認して再度きつく締めた。

「これで大丈夫です。ビクともしないですよ。」
「ああ、ありがとう!俺も安心した。」

そう言って照明係はその場を立ち去った。副団長は最後まで劇場に残り一旦外に出てアリバイ工作をした。

「俺は先に帰るから、あとみんなよろしく頼むよ、千秋楽楽しみだな、じゃ!」
「また明日!おつかれ様でした!」

夜中の12時を過ぎた頃にマットは劇場に戻り、舞台のライトを点け、ハシゴを使って天井のライトのネジを緩めた。そのライトはテリィが一番よく立つ位置にあるものだった。5箇所の大きなネジを全て緩め、グラグラになるように、少しの衝撃でも落ちるように細工した。

「テリュースに落ちなかったとしても誰かの上には落ちる。。確率としてはテリュースだ。。ふふ。。ふふ。。」

そうニヤニヤ笑って劇場を後にした。


開演前になった。

「さぁ、みんな!いよいよ始まるぞ!ハムレット千秋楽だ。ここまでみんな良く頑張ってくれた。今日は王室からもたくさん見えている。緊張感持ってやってくれ!いいな!テリュースをみんなで盛り立ててやってくれ。」

いつになくテリィに親切な言葉を投げかけるマットだった。

「副団長、気遣ってもらってありがとうございます。。」
テリィは礼を言った。
「いや、それだけお前の演技が素晴らしいからさ!頑張ってくれ。」


最終幕まで何事もなく芝居は進んでいった。


「テリィのお芝居は何度見ても飽きないわ。。ステキな声に立ち居姿。。こんなテリィと私は一緒にいれるだなんて。。なんて幸せなの。。」

キャンディはテリィの姿に惚れ惚れしていた。

足が長く、栗色の長い髪、青く澄んだ瞳。。学生時代と変わらないテリィ。。憧れていたテリィ。。そのテリィとやっと結婚できる。。あなたのお嫁さんになれるのね。。


最終幕が始まり、ハムレットが死ぬシーンになった。
テリィが前方に移動して来たその時だった!



ガッシャーーーーン!!!



キャーーーーー!!!


観客席から悲鳴が上がった!

照明器具がテリィの頭上めがけて落下したのだった!


「ああーーーー!!」

テリィの叫び声が聞こえたのと同時にテリィはその場に倒れていた。

観客席はシーンと静まり返った。

その様子がまるでスローモーションのようにキャンディの目に映った。


「テッ、テリィ、テリィ、テリィーーーーー!!!」

その叫び声は劇場中に響き渡った。




キャンディはその場で気を失い倒れてしまった。