土曜当番のあたしが仕事に出かけようとした時
パパの部屋からドーン!と言う音が響いた。
休みなのに何してんの?
見に行ったらベッドから落ちてその下で
もがいているパパ
どうしたの?
とりあえずベッドに引きずりあげると
声にならない声をあげて
失禁した。
只事ではない。
寝ている娘を起こす。
パパがおかしいんだけど、、、
寝ぼけ眼で起きてきた娘が
救急車を呼ぼう。と、言う。
救急車?110番?119番?
震える手で携帯を探す。
あ、119番だ。
程なく下に緊急自動車が救急車と消防車2台到着。
火事じゃないんだけど、、、
救急隊の方がパパに呼びかける。
『○さーん、あなたのお名前はー?』
あたしが答える
『いや、、奥さんバイタルチェックなので』
そこから救急隊の方があちこちに電話をする。
『意識混濁、58歳男性、受け入れをお願いします。脳疾患と見受けられます。』
引き受け先が決まらない。
30分経って決まったのは隣の市の大学病院
救急車の中で
救急車ってこんなに揺れるの?
と、ただ揺られてるあたし。
着いた先の緊急外来
濡れたままの毛布に包まれてるパパ
寒いかも、、、とだけ思う。
やがてパパは奥に消えて
1時間半後に先生から話があると呼ばれる。
目の前には
頭のレントゲンとCTとMRIの写真
頭の半分が真っ白で何も映っていない。
『頭の一番太い血管が詰まって、左手半分が死滅してします。数時間後にこのまま亡くなるかもしれない。一週間後に亡くなるかもしれない。もし生き残れても一生寝たきりになります。意識も戻らないと思います。気管を切開して、空気の通り道を作るのなら、今日中に手術をするかを決めてください。それをしたら亡くなるまで外せません。食べることもしゃべることもできません。どうしますか?』
しばしの沈黙。そしてあたしと娘が目を合わす。
頷き合う。
『やらないでください。それでは生きているとは言えません。』
この時から覚悟は決めた。
ここからどうなってもこの人の天命。
そこから、すったもんだの10年目を迎えた。
話すことは出来ず、身体のの片側は機能しなくても
お菓子が大好きな3歳のパパが元気にしている。
天命って、なんだっけ、、、、
病院からの着信を他と区別して
ひとときも携帯を離せなかったあたしはもういない。
ここからは、一日でも長くパパより生きること。
見送って出かけること。
それだけが望み。
そんなこともあったねーと
すべてを笑い飛ばすには、まだ人間が出来ては居ないけれど。
やれることをやれるだけ。
この話を書いたら一冊の本が出来そうだから
10年ぽーんと、飛んでみた。
今日もできることを出来るだけ。
そうやって今まで来たんだから
これからもそうしていこう。
人間だもの、、いい人ばかりではいられない。
怒ったり笑ったり
頭を撫でられたいけど
頭を撫でてあげよう。
今年はコロナで面会謝絶が続くけど
梅が咲く頃に、桜が咲く頃に
お散歩に連れて行ってあげられる日まで
支える側がへこたれては居られない。
今日も元気に参りましょー。
おっと、、この人よりも長生きしなきゃーね。