拘束されている人権派弁護士らへの拷問や虐待が相次いで指摘されている中国で、仲間の弁護士や民主活動家が今月、政府に拷問をやめさせようと「中国反拷問連盟」を結成した。当局の締め付けが強まるなか、400人以上が実名で名を連ね、13日からネット上で参加を呼びかけ始めた。
 
  発起人は、2015年の弁護士ら一斉拘束事件で起訴された謝陽弁護士への拷問・虐待の詳細を先月告発した陳建剛弁護士や、「盲目の人権活動家」として知られ、12年に渡米した陳光誠氏、ノーベル平和賞候補にも名前が挙がる人権活動家の胡佳氏ら12人。
 
  呼びかけ文では、拷問は中国の司法にずっと続く病理であり、言論や思想を理由にした「良心の囚人」に集中していると指摘。特に一斉拘束事件以降、場所を明らかにしないまま拘束を続け、弁護人に面会させない状況の中で多発していると批判した。「むき出しの拷問を前にして、黙っていられない。我々は立ち上がり、恐怖を乗り越えて人間の尊厳を守らなければならない」と訴えている。
 
  中国では組織や団体をつくることも反政府活動だとして捕まりかねないため、連盟は「組織ではなく、理念の共同体」と位置づけ、参加も脱退も自由にしてネット上で呼びかけを続ける。
 
  陳弁護士は「人権派の事件では拷問が非常に多いが、釈放時に当局に口止めされてしまう。この国で民間の力は極めて弱いが、多くの真相を表に出し、現状を変えたい。海外の人にも関心を持ってほしい」と話している。(北京=延与光貞)
 
 東京電力福島第一原発の事故で損害を受けたと偽り、賠償金計約8500万円を東電からだまし取ったとして、詐欺罪に問われたNPO法人元幹部・進藤一聡(かずあき)被告(45)=東京都杉並区=を懲役8年とした二審・東京高裁判決が確定する。最高裁第一小法廷(大谷直人裁判長)が、16日付の決定で上告を棄却した。

 10年以上放置された口座のお金を福祉に使う「休眠預金活用法」が2日、参院本会議で賛成多数で可決、成立した。これまでは金融機関の収入になっていた年数百億円。法整備を後押ししてきた市民らは「多くの人が助かる」と期待する一方、運用スタートまでの課題も残っている。

 

休眠預金で子ども支援 毎年500億円、法案成立へ


 就職や引っ越しを重ねるうちに口座のことを忘れてしまったり、預金者が家族に口座の存在を知らせずに亡くなったり……。金融機関で作られた口座のうち、最後の取引(お金の出し入れ)から「10年以上放置」された預金がこうした休眠預金の対象となる。

 

 いまは残高が「1万円未満」であれば金融機関の収入となる。「1万円以上」なら、金融機関から預金者への通知が届いたと判断されれば通常の預金として扱われる。通知が届かなかったと判断されれば、「1万円未満」と同様に金融機関の収入とされてきた。

 

 大手銀行や金融庁、法案をまとめた超党派の議員連盟によると、休眠預金の大半は残高1万円未満。一方で、合計すれば年に約1千億~1100億円発生。預金者から求められた払い戻し分を差し引いても、約500億~600億円が金融機関の収入となっていた。

 

 休眠預金活用法が施行されれば、現行の通知手続きを経たうえで休眠預金は預金保険機構に移される。そして、公益活動にたずさわるNPO法人や自治会といった団体を公募し、助成や貸し付け、出資される。

 

 具体的な使い方は有識者の審議会などで議論されるが、活用法は使われる先が大都市に偏らないようにすることや、複数年度にわたる活動にもあてられるような対応を要請。議連は①難病の子どもを抱える家族への支援②児童養護施設の退所者や障害者の自立支援――などを想定している。

 

 1年半以内に施行されるが、システム整備もあり、運用開始までに3年前後かかる見通し。いったん休眠預金とされても預金者からの払い戻し要求には応じることになっており、議連事務局長の山本朋広衆院議員(自民)は「何年たっても『預金は預金者のもの』であることに変わりはない」と話している。

 

■NPOは活用に期待

 

 「活用できれば、多くの人を助けられる」。病児保育などを手がけるNPO法人フローレンス(東京都千代田区)の代表理事・駒崎弘樹さん(37)は話す。

 

 駒崎さんは2009年、海外のNPO関係者から韓国で休眠預金の活用が始まったと聞いた。金融機関の収入になっている日本の現状を変えようと、10年ごろから当時の民主党政権に提言。12年に政府が活用方針を決めたが、政権交代で議論は下火に。駒崎さんらNPO代表者らが国会議員に提案し続けた結果、14年に超党派の議連ができ、今年5月に法案が提出された。

 

 休眠預金をどう使うことが期待されているのか。

 

 自閉症などの発達障害がある子や保護者をサポートする「ADDS」(東京都新宿区)の共同代表の熊仁美さん(32)は「新事業を始める時、どこからお金を持ってくるか悩みます」。発達障害がある子には細やかな個別指導が必要だが、行政だけでは手が行き届かない。各家庭を訪問して保護者の指導・研修をしたいと考える熊さんは「寄付やクラウドファンディングに加えた資金確保の新たな選択肢になる」と話す。

 

 「日本の教育予算は先進国の中でも低い。不登校の問題などへの公的な支援も足りていない」と話す白井智子さん(44)は、大阪府池田市で公設民営のフリースクール「スマイルファクトリー」を運営する。「貧しい家庭の子どもの支援に使えるようにして」。白井さんは求める。

 

 地域の課題解決事業に融資するコミュニティ・ユース・バンクmomo(名古屋市)の代表理事・木村真樹さん(39)は「行政が解決できない課題に焦点をあて、民間資金を呼び込むきっかけになって」と話す。

 

■「預金を横取り」と誤解も

 

 課題は預金者への周知になりそうだ。

 

 議連のある議員が休眠預金についてSNSで投稿すると、たびたび「預金が横取りされる」といった誤った認識の声が寄せられるという。国会審議でも議員の一部から「国民の理解が得られているとは言えない」という見方のほか、「公益性の高い事業に資金が供給されるのか」との指摘も。こうした点を踏まえ、活用法には「透明性の確保が図られなければならない」などと記された。

 

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングのアンケート(約1千人)では、34・7%が休眠預金という言葉を「全く知らなかった」と回答。詳しい内容を「知っていた」と答えた割合は31・8%だった。水谷衣里・副主任研究員は「制度設計と資金提供のプロセスの透明化、不正防止のガバナンス、成果の説明……といった仕組みを整備する必要がある」としている。

 

参考URL:http://digital.asahi.com/articles/ASJCZ6GFGJCZPTIL02W.html