リスキーな一撃 | 紙業新報のブログ

紙業新報のブログ

紙パルプ業界紙。月3回発行。の公式タワゴト、ボヤきその他(笑

{0F300EFC-D944-4B25-AD80-B0FEE154C467}

 

トスが伸びない日はほんとうにうまく行かなくて、昨日と何が違うのか、同じ自分の体なのに思ったところにボールが行かない。昨日と同じ力で飛んで、昨日と同じ力でボールを上げても、いつもと同じところにボールが行かない。

 

Vプレミア女子の各チームの主要セッターの身長と、今季の外国人選手たちの身長を比べますと、

(カッコ内は最高到達点)

 

久光     栄168㎝ 古藤171㎝/アキンラデウォ191(331)㎝

JT      田中美咲174㎝ 山本168㎝ 柴田171㎝/ミハイロヴィッチ189(310)㎝

デンソー  田原161㎝ 鈴木171㎝/クリス193(316)㎝

東レ     田代173㎝ 白井175㎝/ケイディ190(319)㎝

トヨタ車体 比金165㎝ 山上170㎝/ネリマン188(315)㎝

NEC     山口170㎝ 塚田175㎝/

上尾    冨永175㎝/ケニー189(308)㎝

日立    佐藤美弥175㎝ 小野寺175㎝/ジャクソン188(320)㎝

 

 

 

みんな高いすね。上尾のケニーが思いのほか到達点が低いすけど、アゲアゲのときには割り増しジャンプ力が付くのかもしれない。

 

アキンラデウォ、愛称ルークがだんとつに高いですが、あとは、ジャクソンとケイディも高い。ジャクソンは今季で2季目で、昨シーズンは高さを出すのよりも、タイミングのほうを優先してたのかもしれないですかね。今季は高さも一層出てきた印象がある。ケイディの場合、多くのバレー有識者が指摘しているとおり、高い打点で撃たせるとケイディはすばらしい強打が決まりやすいので、特に低いコンビで速さで決めるというとき以外は、いつも高めに供給するべきだという話ですかね。

 

東レの田代も白井も日本のセッターの中では大きめということなので、身長の高さは十分として、あとはタイミングを含めた、供給時の伸びがポイントですかと思います。NECの塚田などは、いいときとダメな時の差が激しい印象がわたしにはあり、山田監督がゲーム中に山口を呼んで、セッター替える前に山口に「悪い!頼む!」みたいな表情で手のひらを上にあげるしぐさをしたりしてます。こういうとき塚田のトスは上がってないんだと思います。じっさい山口が入った直後にチームが生き返ります。

 

逆に、山口がワンポイント程度の起用で、ゲーム全体を塚田で通して勝った日などは、彼女の調子はとてもよかったということで、まあ考えてみたら当たり前ですかね、こんな話 笑

 

外国人選手のいないNECでもトスの高さ――あるいは伸び――が足りない、175㎝の塚田でもうまくいかず、170㎝の山口でチームが勢いづくということなので、まあバレーは単純な高さじゃないなと(笑)。

 

しかし、単純に高さが求められる競技でもある。

 

 

 

わたしが言いたいのは、昨年2017年皇后杯での久光vsデンソーの第5セット、12-12、サーブ久光の場面で、田原のバックトスからのクリスの激しいブロードを石井優希がバシッと受け、栄にAパスが返り、アキンラデウォが猛然と右に走りこんでワイド攻撃に備えた場面のことです。栄はなぜこのときアキンラデウォを選ばず、レフトに開いた今村にトスを託したのか?流れ的には(自宅で配信で見ていて)ここはアキンラデウォでブレイク取りたい感じがあった。実況のアナウンサー氏も同じような感想を持ったらしい。「ここはアキンラデウォではなく今村に上げた!」というような実況をしていた。なぜ栄はあのときライトに上げなかったのか?

 

――まあそんなことは栄に直接聞けばすぐわかる話なんすけど、1バレーファンにすぎないわたしが無敵女王久光製薬キャプテンの栄と知り合いのはずもなく(笑)、なんといいますか推測するしかなくてですね。いちばんわたしが思ったのは、ゲーム中、栄は何度も今村の手を強く握って話しかける場面があった。いまその情景を思い出すともうそれだけでじーんときてしまいますが、この日かなり調子の上がっていた今村に、栄は強い信頼を感じていた。

じっさい、あのときルークに上げようが今村に上げようが、ほんとはどっちでもおなじくらいだったろうというのが、すべての激闘が終わり、年も越して何日か経過したわたしの冷静な感想です。あんがい石井優希のバックアタックでもよかったのだけれど、この日、それまでに何度か試してアウトになってたりしてたので、この局面での石井優希は難しいチョイスと感じたとは思う。

 

ここでリードすれば圧倒的に有利になる。確実な1点を取りたいというとき、その決定力の高さゆえにマークの厳しいルークを使うよりも、好調の今村に託して1点取ってもらう――ほんとうに、今日だって何度も決めてくれた。いつものように開いて1点取ってくれたらもうそれでいい……

目の前にクリスがいる。位置的にはブロックにクリスが飛ぶ位置はインナーだから、ルークが飛んでクロスに打ち込むときに止められるかもしれない。

 

今日は序盤からかなりルークを使ってきたから、相手のマークはルークに付きやすいかもしれない。とすればここは当たってる今村のほうが決まる可能性が高いかも……

 

 

ルークにトスを高く上げてやれれば、もうほぼここは決まる。打つ角度の自由度を得るために高くしかも素早く出してやる必要があった。ルークはもう打つ気まんまんでラッシュしている。

 

もしかしたらタイミング的に難しかったのかもしれない。あるいは、ネットや相手ブロッカーとの位置関係がよくなかった?

 

ルークはこの日、何度か止められていた。向こうも必死で飛んでくる。ここぞ、というとき、万全の状態で高く、しかも素早くトスを供給できるのなら彼女だ。でも目の前にクリスが怖い顔して待ち構えている。トスに十分な高さが出なかったら、ルークの射角は狭くなり、止められる可能性が高くなる。ここでルークで決まらなかったときのチームのダメージは少し大きすぎるかも?……

 

 

 

以上、わたしの空想に過ぎないのですが、結果は周知のように今村と工藤のレフト同士の打ち合いになり、そうなると序盤から出ずっぱりで疲れていた今村よりも、途中から入り、時おり交代も入って体を休めて比較的フレッシュな状態で臨んでいた工藤のほうが有利ではあったかもしれない。だがそれは久光にとって言い訳にもならない。

両チームのリベロもスーパーディグの応酬で、わたしはとりわけ戸江とともに小口には称賛を送りたい。何度かの打ち合いののち、得点したのはデンソーのほうだった。試合はそのままデンソーのフル勝ちとなり、続く準決勝で東レを倒したデンソーは、決勝戦でのトヨタ車体との大激戦の末敗れ、惜しくも準優勝に終わった。

 

 

思うに、そんなに背の高くない栄が、がっちりとしたワンダーウーマンのようなアキンラデウォにしっかり合わせて、注文通りのトスを上げ切るのはすごい。さすが久光の正セッターだと、いつも感心して見ていた。もちろん、いつもというわけにはいかないけれど、小さな栄が思い切り体をそらせて高くて速いトスを上げ、すでに右サイドでジャンプ――というよりも離陸――して上空でタキシングしているルークとランデブーする様子は、豪快そのもの。小さなセッターと大きなミドルのダイナミックなコンビネーションは、今季の久光の見どころのひとつだと思う。

 

そして、ここで取り上げたゲームの対戦相手のデンソーの田原とクリスのコンビも、Vプレミア女子には欠かせない風景だと思う。クリスはいつも指を一本たてて「高くして!」という。オーケイ!と田原は答えて、栄よりももっと小さな体から、マジックのように高いトスをクリスの打点に上げてみせる。打ち終えたクリスは「今のよかったよ!」と感謝をかけるけれど、次に打つときにはまたすぐ「高くして!」と注文をつけるのょね。笑 うまくいかないこともしょっちゅうあるし、でも最近はすごくよく合ってきた印象がありますね、ふたり。田原&クリス。

 

ふたりのコンビが決まったときは、それはもうほんとうに素晴らしくて、まさにシュトルム・ウント・ドランク、疾風怒涛の一撃!栄・ルーク組のアクロバティックなアタックとはまた一味違う鋭さを持っているふたりだと思います。




追記)戸江選手の名前の漢字を正しく直しました。戸絵×→戸江◯