スサノオで～す
小春「鹿島♪鹿島♪」
影狼「……」
『スサノオと日本の神を巡る旅』。
～オオクニヌシの国造りの地～を経て、
次はいよいよ、
古事記一番のハイライト。
『国譲り』の地へ。
まずその一つ目、
茨城県は、鹿島神宮。
ス「何を喜んでんねん。
気持ち悪い顔して」
あ「だって、
タケミカヅチさん、
格好いいじゃないですか」
ス「そうか。
お前が俺以外に初めて会った神が、
タケミカヅチか。
まぁ確かにあいつは俺も認めるぐらい、
格好ええわな」
あ「自分を鍛えて、
その姿勢を見せて、
『戦わずして勝つ』っていうのがね。
これぞ男の憧れですよ」
そんなことを言いながら、
寛永11年（1634年）築の重要文化財、
『楼門』を潜り、
あ「ここの本殿って本当に美しいですよね…。
まぁ神社はどこも美しいんですけど…」
そして、
本殿で参拝。
（二礼二拍手一礼）
そして…？
『シュンッ』という音とともに、
光の速さで、
鹿島神宮のご祭神であり、
高天原最強の武神、
『タケミカヅチ』が現れた。
タケミカヅチ「スサノオ、荒川さん、お久しぶりです」
ス「何か見た目が良くなっとる（笑）」
あ「いや、まぁ前までのタケミカヅチさんは、
僕のひどい絵でしたから…（笑）」
俺の絵はいつ変わんねん？」
あなたはもうこれで、
定着しちゃいましたから（笑）」
…それはそれとして、
タケミカヅチさん。
タケミカヅチ「改めて、
ここに来てもらえると嬉しいものですね。
遠方までご足労おかけしました」
『高天原最強の武神』にも関わらず、
相変わらず物腰の柔らかいタケミカヅチさんに恐縮して、
僕も言う。
あ「いえいえ！
もうこうして迎えて頂けるだけで光栄です。
今日はお邪魔致します」
僕がそう言うと、
タケミカヅチさんはニッコリ笑って言う。
タケミカヅチ「そうですか。
それでは、こちらへどうぞ」
そう促されて、
僕らが向かったのは、
本殿を背にして右側にある、
『鹿島神宮の森』。
タケミカヅチさんの荒魂を祀る『奥宮』、
そこに向かうまでの森の中で、
タケミカヅチさんと会話する。
タケミカヅチ「ここ鹿島神宮の自慢は、
この天然記念物にも指定されている、
豊かな森なのです」
活力を与える効果があります。
ぜひここに来られた方には、
この『森林浴』を味わってほしいですね」
その言葉通り、
鹿島の森は本当に素晴らしく、
目を瞑って、
ただ伸びをするだけで、
穢れがどんどん祓われていく。
タケミカヅチ「どうです？
『鹿島の森』は素晴らしいでしょう？
それでは行きましょうか」
そうして森の最深部まで進むと、
そこには、
かつてタケミカヅチさんがこの地に降り立った場所という、
『要石』。
ゆっくりと話をした。
タケミカヅチ「どうですか、旅は？」
タケミカヅチさんはいつも優しくて、
こうして僕が喋るより前に、
色んなことを聞き出してくれる。
あ「はい、おかげさまで。
たくさんの神さまに会い、
たくさん学ばせて頂いています」
ス「こいつ前、オオモノヌシに怒られよってんで」
あ「ちょっ、もう、やめましょうよ！！」
タケミカヅチ「ハハッ！
まぁオオモノヌシ始め国つ神系は怖いところもありますからね。
ちなみに、
次はどちらへ？」
あ「えっと、次は…諏訪大社ですね」
タケミカヅチ「諏訪大社…ですか…」
『諏訪大社』。
その言葉を聞いた瞬間に、
一瞬タケミカヅチさんが、
考え込んだように見えた。
それを察したのか、
スサノオが言う。
ス「お前ら諏訪と鹿島は、
まだ何の交流も無いんか？」
スサノオのその言葉の意味。
それは、
古事記の『国譲り』の物語の中で、
タケミカヅチさんと、
諏訪大社のご祭神 タケミナカタが、
争った因縁のことを意味している。
そのスサノオの問いに対して、
タケミカヅチさんが答える。
タケミカヅチ「いえ、そんなことはございません。
2011年の東日本大震災…、
震災から1か月後、
当社近くの浜に、
1枚の札が流れ着きました」
あ「札？」
タケミカヅチ「はい。
その札は岩手県陸前高田市の、
『諏訪神社』のもの…」
タケミカヅチさんのその言葉に、
鳥肌が立つ。
タケミカヅチ「何の因果でしょうね。
もちろんその札をきちんと諏訪神社にお返しし、
以来、
鹿島と諏訪の交流は続いております」
ス「時を経て、
因縁が解消されたということか…。
かつては、
鹿島にとっての神の使いでもある、
『鹿』を諏訪の祭りで、
食べたりしてたぐらいやのにな。
まぁそれにしても、
タケミナカタは、
国つ神の中でも特別な神やからな…」
『特別な神』…？
その言葉に、
再びの疑問が僕の心に浮かぶ。
あ「『特別な神』って、
どういうことですか…？」
ス「ん…？
…そうか、お前は古事記で伝えられている、
タケミナカタしか知らんもんな」
あ「どういうことですか？」
ス「まぁいずれ次に諏訪大社に行くんやから、
その時に直接感じればいい。
ただ今言えることは、
あいつ、タケミナカタは…、
古事記で言われているような、
タケミカヅチに惨敗して諏訪に逃げ込んだだけの、
神ではないということや」
あ「そ、そうなんですか…」
スサノオ「ここ鹿島神宮が位置している場所。
ほとんどの神社の鳥居は南を向いている中で、
鹿島神宮だけは西を向いている。
それはなぜか？」
あ「………」
ス「その方角の先には、
タケミナカタを祀る諏訪大社があんねん」
あ「本当…ですか…」
ス「『国譲り』を終えた後でも、
あの『高天原最強の武神』が、
タケミナカタを抑えるために、
この場所で、
睨みをきかせ続ける必要があった、
ということやねん」
あ「……。
何だか…壮大過ぎて…言葉が出ないです…」
タケミカヅチ「タケミナカタに、
実際に会われてみてください。
スサノオの言葉通り、
タケミナカタとの戦いは、
決して『古事記』で伝えられているように、
私が圧勝したわけではありません。
どちらに勝敗が転ぶか分からなかった。
そのことだけはお伝えしておきたいと思います」
あ「そ、そうですか…」
にわかに、
タケミナカタという神の存在が、
クローズアップされ、
僕の胸に少しの鼓動が起きる。
あ「怖い神さま…なんですかね…？」
ス「まぁとはいえ、
さっきも言っていた通り、
もう鹿島と諏訪の因縁も解消されつつあるらしいからな。
その点は大丈夫ちゃうか？」
タケミカヅチ「私もそう思います」
あ「わかりました…。
とはいえ、
心を引き締めて参りたいと思います…」
ス「まぁそれはそれとしてや、
せっかくやねんから、
最後に、
タケミカヅチに聞いておきたいことはあるか？」
あ「聞いておきたいこと…ですか…」
そうして、僕がした質問は…。
あ「タケミカヅチさんにとって、
スサノオさんはどんな神さまですか？」
ス「なんやそれ（笑）
俺の前で聞くなや（笑）」
あ「何だか気になっちゃって」
タケミカヅチ「私にとって、スサノオ…ですか…。
…そうですね…」
そうしてタケミカヅチさんは、
一拍置いて言う。
タケミカヅチ「良き友であり、
良き見本…ですね…」
あ「良き見本！？こんなに頭悪いのに！？！？」
ドゴンッ！！
（思いっきりスサノオにお尻を蹴られる音）
あ「……っ！！
（激痛に耐える顔）」
タケミカヅチ「いやまぁ、確かに頭は悪いですが（笑）
見習うところはたくさんあります。
その中でも特筆するべきところは、
誰からも慕われていること。
どうです？
この旅に出て、
スサノオのことを嫌っている神に、
出会ったことなどないでしょう？」
…確かに。
思い返してみれば、
どこの神社に行っても、
神々はみんな『スサノオさん』、『スサノオさん』と言って、
嬉しそうに寄ってくる神々ばかりだった。
タケミカヅチ「みんなスサノオの生き方が好きで、憧れているんですね。
豪快で、常に楽しくて、
力があるのに、愛情が深くて、
誰にも平等で偉ぶらない。
そして、そんなスサノオがその中でも、
一番大切にしているのが…」
ス「おい、もう恥ずかしいからやめろ（笑）」
あ「いいじゃないですか（笑）
聞かせてください」
ス「もうええわ。
おぅ、邪魔したな。もう行くわ。
楽しかった」
タケミカヅチ「こちらこそ。
またいつでも」
そうして、
スサノオは早足で、
その場をあとにしようとする。
あ「あ、タケミカヅチさん！
こちらこそ、今日もありがとうございました！！」
そうして、
小さく手を振るタケミカヅチに挨拶をして、
僕らは鹿島神宮に別れを告げた。
『スサノオの本当の正体』。
この旅で何度も浮かぶそのワード。
今回も、
その核心部分について触れることは出来なかったが、
これまでの一つ一つの神々の出会いと、
スサノオと過ごす時間の積み重ねから、
なぜだか僕はこの時、
もうすぐ迎える、
この旅の終わりにはその答えを得ている、
確かな感触を感じていた。
『スサノオと日本の神を巡る旅』。
次は、
～諏訪大社 タケミナカタ編～をお送り致します☆
