2023支援者・保護者のための障害児・者性教育セミナーinふくい 報告 | 障がい児・者の「性」を学ぶ会 《ゆいの会》

障がい児・者の「性」を学ぶ会 《ゆいの会》

障がいのある人たちの豊かな生活を支援していくために、「性」について学びましょう

4回目となる支援者・保護者のためのオンラインセミナーを11月5日(日)に開催しました。相談支援員、保育所等訪問支援員の寺部佳代子さんを講師にお招きし、「日々の生活の中に性の視点を!」と題しての講演でした。当事者、保護者、支援者を合わせ48名の皆さんが参加してくださいました。

 講演では、まず「性」の学びは「生」の学びであり、自分の体を大切にすることから他の人の心を大切にすることまで、広くて深いテーマがある。愛着形成、基本的信頼感の獲得、基本的な生活習慣の形成、社会性の芽生えは幼児期から始まる。自分の体を知ること、自分を好きになることが『自己肯定感』の基礎となり、自分と周りの人の体と心を守ることにつながると話されました。

 

 また障害のある人も性教育を受ける権利があることが国際社会では確認されている。包括的性教育は、性を禁止・抑圧したり、特定の価値観に基づく恋愛や結婚のあり方を押しつけたりするものではなく、科学的なさまざまな情報を基にして、自分やパートナーの尊厳を大切にしながら、自分がもっとも輝ける性行動を選ぶ力を身につけるために行われる。文科省が推進する「生命の安全教育」以前に、身につけておきたい3つの重要課題として、①自分の体が大切であるという自覚②快いふれあいと不快なふれあいを弁別できる力③それらの根本となる「自分は大切である」という気持ち(=自己肯定感)が育っていることが大切である。障害児教育では、「ダメダメ」、「やめなさい」、「いけません」ではなく、子どもたちが育つ日常生活の中で正しい知識を何度も繰り返しポジティブに。一人ひとりのwell-beingを目指して、生き方、学び方を一緒に考えていくことがポイントであると話されました。well-beingは「より積極的に人権を尊重し、自己実現を保障する」という意味。子どもは単に保護の対象ではなく一個の人間として、権利主体として認められることであり、そのために、まずは大人たちが正しい性の知識と理解のためにともに学び、その学びを広げていきたいと講演を結ばれました。

 

     講師 寺部佳代子さん

 

 講演後の年代別交流会では、3つグループに分かれ参加者の体験や実践を話し合い、お互いの学びを深めました。

①就学前~小学生グループ:他者との距離が近すぎる場合の対応について、距離感は人それぞれに違い、相手や日によっても違うため、毎回丁寧に伝えていくことが必要。その際「腕一本離れなさい」ではなく、大人が柔軟に対応することが重要であり、こうした学びの土台として、ふれあいや快の体験を多く積み重ねることが大切だと確認し合いました。

 

②中学生・高校生グループ:まず母親から中学生男子の性行動についての困りごとに対して、助言者から性教育の必要性についてのアドバイスがあった。各事業所から性教育実践が報告され、子どもたちの「ふれあいたい」という気持ちを大切にし、いろいろな方法で満たしていくこと、「自分が大切」ということが子どもたちに伝わる性教育に取り組みたいと話し合われました。

 

③成人グループ:グループホームは、大人が生きるために頼りになる大切な生活の場であり、性の学びを取り入れることで、より自由に充実して過ごすことができる。支援者は、当事者の性のニーズを把握し、肯定的に対応すること。性教育は構えず、ちょっとしたことから取り掛かればいい。大人の学びそびれに対して、気長に取り組むことが大事と話し合われました。

 

参加者の感想より『愛着形成の大切さを痛感しました。まだ満たされていない状態の時は受け入れてあげることも大事、でも全部OKではなく、嫌な時はきちんとそれを伝える・・など、考え方や線引きの仕方など参考になりました。子どもたちには、「腕1本分」「触らない」といつも言っていましたが、間違いだったんですね・・目からうろこでした』とあり、共に学び合えた貴重な一日でした。                        (文責:松川里美)