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司法試験向け論文演習、ロー課題など

一 設問1
1.ビデオ撮影・録画の法的性質
(1)本件ビデオカメラによる撮影は、人の容貌等をみだりに撮影されない自由やプライバシー権を侵害するものとして強制捜査にあたり、無令状の本件捜査は違法の疑いがもたれるのではないか。(刑事訴訟法197条1項但書、同法218条、憲法33条、同法35条)
(2)刑事訴訟法197条の「強制の処分」とは、個人の意思に反して重要な権利を侵害する処分をいう。
(3)本件ビデオカメラによる撮影場所は公道及び誰でも出入りできる屋根の無い駐車場内であるから、そのような場所では他人に自分の容貌を見られること自体は了解せざるを得ないから、そこでの撮影によるプライバシー侵害の程度は大きいとはいえない。
したがって、これらの場所での撮影は、重要な権利を侵害しているとは言えず、強制捜査にはあたらず任意捜査であるといえる。
2.ビデオ撮影・録画の適法性
(1)では、撮影が任意捜査であったとしても、いずれも犯罪が行われる前に対象者の同意を得ないで撮影するものであり、任意捜査の範囲を超えたものとして違法とならないか。
(2)この点、任意捜査といえども、プライバシー権の侵害があることから、無制限に許されるものではなく、警察比例の原則による限界があると解する。
具体的には、①犯行の相当高度の蓋然性、②証拠保全の必要性・緊急性、③撮影方法の相当性、をもとに適法性を判断すべきである。
(3)まず、S,T,U駐車場での撮影について検討する。
ア.本件において、不審火事件が3月7日、16日、21日に連続的に発生しているが、そのいずれもが自然発火が考えにくい状況であり、揮発性の高いベンジンが前部バンパー部分に塗布された形跡があることから、放火である可能性が高い。
また、それぞれの放火は、B町内の人気のない深夜の住宅密集地における管理人不在の駐車場で発生しており発生場所、発生時刻が類似し、対象物もC社製の高級車に限られており、前部バンパーへ塗布したベンジンへの引火という放火の態様や焼損以外の引っかき傷をつけるという手口も類似している。
以上より、本件における一連の不審火事件は同一犯による連続放火事件であることが伺われる。
イ.連続放火事件であれば、近い将来同様の条件の場所において放火事件が発生する蓋然性が高いといえ、撮影場所となるS,T,U駐車場は、いずれもC社製の車が駐車されており、管理人のいない、見通しのきかない住宅密集地の駐車場であり、一連の不審火事件の現場と類似するといえ、近いうちに放火事件が発生する蓋然性が高いといえる(①)。
ウ.また、当該駐車場は木造住宅の多い住宅密集地における、車両への放火であることから、発見が遅れれば、内部のガソリンに引火し、付近の車両、木造住宅の広範囲に延焼する重大な事態に発展する危険も考えられ、住民の不安は大きく、被疑者の特定の緊急性が高い(②)。
これに加え、事件はいずれも人通りの少ない深夜の住宅街で起きており、住宅密集地に囲まれた見通しの悪い駐車場であることから、目撃者を確保することも極めて困難であること、また、各駐車場付近の公道は幅が狭く、犯人に気づかれずに警察官が張り込んで監視することが困難な場所であることから、カメラによる監視の必要性が高い(②)。
エ.そして、ビデオカメラによる撮影範囲は、C社製高級車を中心とするもの、及び、駐車場出入り口を中心とするもので、特定人を不当に長時間監視するものでもなく、録画された映像は警察署内での精査のあと、必要がなければ上書き録画により消去されていることから、犯行現場の監視、犯人特定のために必要な範囲内であり相当性が認められる。(③)
オ.以上より、当該駐車場におけるビデオ撮影・録画による捜査は、任意捜査の範囲内といえ、適法である。
(4)次に、甲宅玄関前の路上の撮影について検討する。
ア.(3)で述べたように本件一連の不審火事件は同一犯による連続放火であると考えられるところ、甲はQ駐車場における不審火事件直前に、駐車区画を賃借していないにもかかわらず当該駐車場内で目撃されている。
また、甲が勤務しているクリーニング店では染み抜き剤として使用されている500ml容器入りベンジンを紛失しているが、これを甲が取得していたとすると、R駐車場における不審火事件前後にR駐車場付近にいた人物の所持品の目撃情報や、放火の態様と符合する。
さらに、R駐車場における不審火事件直前に、友人に「R駐車場にC社製の車があった」と話しており、これはC社製の車にこだわる犯人像と符合するといえる。
以上の複数の目撃情報や状況証拠により、甲が本件連続放火事件の犯人である蓋然性が高いと言える(①)。
イ.また、(3)で述べたように住宅密集地における放火という事件の重大性にかんがみれば犯人特定の緊急性が高く、甲宅前路上も幅が狭く警察官の張り込みによる監視が困難であることから、ビデオカメラによる監視の必要性が認められる(②)。
ウ.そして、ビデオカメラによる撮影範囲は、甲方玄関前の路上にとどまり、甲の住居内部までを監視するような方法ではないし、録画された映像も必要がなければ上書き消去されていることから、犯人特定のために必要な範囲であり相当性が認められる(③)。
エ.以上より、甲宅玄関前の路上のビデオ撮影・録画による捜査は、任意捜査の範囲内といえ、適法である。
二.設問2
1.本件では、甲が以前にも今回の放火事件と犯行態様が酷似する犯罪行為を行ったことを示す証拠が存在するが、これは今回の放火事件の犯人であることを証明するための証拠として証拠能力を有するか。
2.この点、他の犯罪行為等に関する証拠から被告人の性格・性質を推認し、その性格から被告人が犯行に及んだことを推認させることは、まったくの不合理とはいえないが不確実な推認に過ぎず、その一方で不当な予断を与えるおそれがあることから、安易に許さるべきではない。
しかし、一切許容されないものではなく、動機の立証や、特殊な手段、方法による犯罪について、同一ないし類似する態様の犯罪を行ったことにより犯人性を立証する場合などに、その必要性・合理性が認められる場合には証拠能力が認められるものと解する。
3.本件において、甲が器物損壊事件時点において、C社日本法人に対する恨みを抱いていることから、今回の放火事件の動機を立証し、また、C社製高級車に引っかき傷をつけたうえでベンジンを塗布して引火させるという同種手口の犯罪を行ったことから、今回の放火事件の犯人性を立証するものであり、明確な犯行動機の見出しにくい、連続した建造物等以外放火事件において、その犯人性を見極めるうえで必要性が認められる。また、このように類似の器物損壊事件から導かれる推認は経験則に基づく合理的なものであって不当な予断偏見はないといえる。
4.以上より、本件において事例8記載の事実を、同被告事件の犯人は甲であるとの認定に用いることが許される。
以上