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司法試験向け論文演習、ロー課題など

一.乙の罪責

1.スナックCでD子から35万円を受け取り、D子を姦淫した行為について

(1)ア.乙がスナックCでD子にエアーガンを突きつけ、「カネ、カネ、キンコ」と繰り返し、D子が金庫から35万円を取り出して乙に手渡しているから、「暴行又は脅迫」を用いて財物を「強取」したといえ、強盗罪(刑法(以下略)236条1項)が成立しないか。

イ.強盗罪における「暴行または脅迫」とは、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものをいう。反抗を抑圧するに足る程度か否かは、被害者側の事情、行為の態様、加害者側の事情を総合考慮し、社会通念に従い客観的に判断すべきである。

本件において、当該エアーガンは本物の拳銃のように見え、これを突きつけられれば社会通念上生命身体の危険を感じるものといえ、D子は22歳の女性であり店内に他に人がいないことも考慮すれば、反抗抑圧に足りるものといえる。

よって、「暴行又は脅迫」を用いたといえる。

ウ.次に「強取」とは、暴行・脅迫により被害者の反抗を抑圧して財物を奪取することをいい、暴行・脅迫と財物奪取の間に因果関係がある必要がある。

本件において、D子は、エアーガンを本物の拳銃と誤信し、乙の鬼気迫る様子に抵抗の意思をなくして、金庫から35万円を取り出し乙に渡しているから、乙による暴行・脅迫と現金35万円の奪取の間に因果関係が認められる。

よって、「強取」したといえる。

エ.以上より、現金35万円の奪取について強盗罪(236条1項)が成立する。

(2)なお、現金奪取の後、反抗を抑圧された状態のD子を強いて姦淫しているから、「強盗」が「強姦」したといえ、強盗強姦罪(241条前段)が成立する。

2.追跡するE男にエアーガンを発射した行為について

(1)乙はスナックCから逃走する際、追跡するE男の身体の中心部にエアーガンを3発発射しこれによりE男に加療3週間の打撲症を与えており、人の生理的機能に障害を生じせしめているから、「強盗」が「負傷」させたといえ、強盗致傷罪(240条)が成立しないか。

(2)ア.まず、強盗致傷の成立に傷害の結果がいかなる行為から生じたものであるかが問題となる。

イ.この点、傷害の結果は強盗の手段たる暴行・脅迫行為によって生じたものである必要はなく、強盗の機会に行われた暴行・脅迫から生じたものであれば強盗致傷が成立すると解する。

ウ.本件では、乙がスナックCから逃走した直後にE男は追跡を開始し、スナックCから30メートルの距離の路上で乙がE男にエアーガンを発射している。これは、時間的にも場所的にも強盗の犯行現場から近接しており、追跡から逃れるためになしたもので強盗行為と密接な関連がある。

エ.よって、強盗の機会に負傷させたといえる。

(3)だとしても、既に乙に強盗強姦罪が成立しているところ、別途強盗致傷罪が成立しうるか。

この点、強盗強姦罪の保護法益は「女子の性的自由」であるところ、強盗傷害罪の保護法益は「人の身体」であり、両者はその範囲を異にする。そうであれば、強盗強姦罪により姦淫の相手方の女子に対する法益侵害が評価されたとしても、追跡者の法益侵害は評価されていないから別途強盗致傷罪を成立させることができる。

よって、強盗致傷罪(240条)が成立する。

3.E男から現金2万円の入った財布を奪った行為について

(1)乙はエアーガンが命中しショックで倒れたE男の反抗抑圧状態を利用して財布を奪っているが、当該行為について強盗罪(236条1項)が成立するか。

乙は追跡を逃れる目的でE男に暴行を加え、それによる反抗抑圧状態を利用して財物を奪取しているところ、当該行為について強盗罪(236条1項)が成立するか。

(2)この点、強盗罪は反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を手段として財物を奪取する犯罪であるから、暴行・脅迫が財物奪取に向けられることが強盗罪の成立要件といえる。

とすると、本件では暴行を加えた時点で乙はE男に対して財物奪取意思を有していないから強盗罪は成立しないかにみえる。

(3)もっとも、乙は財布を奪うことを決意し、E男を睨みつけながら「文句はないな」と申しむけけており、E男がすでにエアーガンが3発命中し抵抗不能の状態であったことを考慮すると、この程度の脅迫であっても反抗抑圧状態を維持するものであれば、財物奪取に向けられた新たな暴行・脅迫があったといえる。

(4)そして、当該暴行・脅迫と財布の奪取に因果関係が認められるから、「強取」したといえる。

(5)以上より、乙は暴行・脅迫によりE男の財布及び現金2万円を強取したことについて、強盗罪(236条1項)が成立する。

二.甲の罪責

1.(1)上述したように乙には犯罪が成立するところ、甲は強盗の実行行為を行っていないが乙を強盗の道具として利用したとして、間接正犯とならないか。

(2)間接正犯は①正犯意思を有し②他人の意思を抑圧し一方的に支配利用して実行行為を行わせた場合に成立する。

(3)本件では、甲はスナックCで使った30万円を取り戻すために、乙に犯行を持ちかけており、実際に乙がD子から奪った35万円のうち32万円を自己のものとしている。よって自己の犯罪として強盗を指示したといえ、正犯意思があったといえる(①)。

(4)また、乙は14歳で事態の適切な処理能力が十分ではなく甲に対する恐怖心に支配されており、意思を抑圧されているともいえそうである。

しかしながら、乙は店のシャッターを閉めたり、発覚防止のため強姦に及んだり、甲に言われたことだけを機械的に実行しただけではなく、自らの判断で主体的に強盗を実行したといえる。

以上より、乙は甲により意思を制圧され道具として犯罪を実行したとはいえない。

(5)よって、甲は間接正犯とはならない。

2.(1)そうだとしても、甲は乙に対しエアーガンを用いた強盗を指示命令しているから、共謀共同正犯(60条)となるのではないか。

(2)共同正犯において一部実行全部責任が認められるのは共同正犯者相互が利用補充関係に基づき特定の犯罪を実現するためである。とすると共謀共同正犯が成立するためには相互利用補充関係に基づく因果的寄与が必要であると考えられる。そこで①正犯意思を有し②実行行為に準ずる重要な役割を果たしたと認められる場合には共謀共同正犯が成立すると解する。

(3)本件では、上述したように甲は自己の犯罪として乙に強盗を指示していたといえ、正犯意思を有すると解する(①)。

また、甲は乙の弱みにつけこんで、言うことを聞くように脅迫し、強盗を実行するように強く働きかけている。さらに強盗に使用するエアーガンと目だし棒を手渡し、「女の店長しかいない夜10時以降に行くんだ」と指示し、犯行実行に必要な道具と情報を提供している。よって、強盗の実行に重要な役割を果たしたといえる(②)。

(4)もっとも、甲は強盗の故意を有していたところ、上述したように乙には強盗強姦罪が成立しており、認識した内容と発生した事実が異なる構成要件に属するから、故意が阻却されるのではないか。

この点、認識した内容と発生した事実とが、構成要件的に重なり合う場合は、その重なり合う範囲において例外的に故意を認めるべきであると解する。

本件では、強盗罪と強盗強姦罪は、強盗罪の限度で重なり合いが認められる。

よって、甲には強盗罪の共同正犯の故意が認められる。

(5)ではさらに、甲はE男の負傷の結果についても責任を負うか。

強盗致傷罪は強盗罪の結果的加重犯である。結果的加重犯は、基本犯自体に加重結果発生の高度の危険性が含まれるために基本犯と相当因果関係のある加重結果を結合し1個の犯罪としたものである。とすれば、基本犯について共同正犯が成立する場合、共同して加重結果発生の高度の危険を発生させたものとして、相当因果関係のある加重結果についても当然に共同正犯が成立すると解する。

本件では、甲・乙の共謀による強盗を乙が実行した後に逮捕を逃れるためE男に暴行を加えたのであり、基本犯である強盗とE男の傷害結果に相当因果関係が認められる。

(6)したがって甲はE男の傷害結果についても責任を負い、強盗傷害罪の共同正犯となる。

三.罪数

1.乙について、D子に対する35万円の①強盗強姦罪(241条前段)、E男に対する35万円の②強盗致傷罪(240条)及び現金2万円と財布についての③強盗罪(236条)が成立し、①・②・③は併合罪となる。また、①は強盗罪の範囲で甲と共謀共同正犯(60条)、②も甲と共謀共同正犯となる。

2.甲について、D子に対する35万円の①強盗罪(236条)、E男に対する35万円の②強盗致傷罪(240条)の共謀共同正犯(60条)となり、両者は併合罪となる。

以上