(C) 2020 CNN

ここ何日かで、アメリカのあらゆる州や街で盛んに行われている議論は、と言うと、「娯楽寄りのビジネスをいつ再開するか。」

実際に、先週末から、たとえば床屋や洋服屋、スポーツジム、オートディーラーなどのそうしたお店の営業を、実験的に再開許可する州や街が、少なくなかった。



ニューヨークタイムズがアメリカの地図を基に、どこの州が一部のビジネスなどを開けて、どこはまだ禁止しているのかを、明瞭に色分けしており、きちんとリアルタイム更新なので、これがとても役に立つ。

他の州のモデルになるであろうカリフォルニア州は、本日8日から、条件付きでビジネスを再開しても良い、との声明を、ギャビン・ニューサム知事が公式に発表していた。



たとえば店内には客を入れず、オンラインなどで欲しいものを注文をして、それを店の入り口で会計&ピックアップという、カーブサイド(curbside pickup)と呼ばれる方法を強制。

事務所、飲食店、ショッピングモールは引き続き営業禁止(テイクアウト可能な飲食店のみ営業可)、とのことで、慎重に、徐々に再開プロセスを展開していく方向性がよく、伝わってくる。

カリフォルニア州は先週の段階でも、外出時に許されるアクティビティを、運動競技(Athletics)から始まってヨガまでに至る合計34もリストアップしていたし、制限を少しづつ解除していくロール・モデルになっていこう、との強い意志が感じられて頼もしいし、さすが4,000万人のうち50%が移民という特殊な州民を柔軟に抱えるだけはある。


(C) Vic Walk

私の住む街も、ゴルフコースや公園などのレクリエーション関係には、来週金曜の15日から再開予定との張り紙が貼られていたし、個人的には図書館が開いてもらえるとありがたいところだ。

もっとも、少しづつ各種ビジネスを再開するとは言っても、客同士でも普段以上の心遣いが必要になるから、再開というよりも、リハビリに近い気がする。


(C) 2020 The Guardian

何しろコロナ・ウィルスに関して今の段階で分かっているのは、「ワクチンが無い」「感染率が異常」「潜伏期間が2~14日と、不定」「感染したのに気付かず他者を感染させてしまう」ことで、ゆえに見知らぬひとたちとフィジカルな距離が近くなるようなお店や建物には、気軽には入れない。

外出時には、他人との文字通り、距離感を、つねに考えて行動しないとならないし、じゃあそこまで気を配って外に出る意味は?と冷静に考えるほど、外に出たことで逆にストレスが溜まるんじゃないの?と感じてしまうのだ。

なのでうちの一家に関しては、お店アケルヨー、あちこちアケルヨー、と耳にしても、向こう数か月どころか来年まで、いまの「運動以外で、基本は家から出ない」が続くんじゃないかと思う。


(C) 2020 NPR

もっともウィルス研究専門家で私も尊敬するアンソニー・ファウチ先生が先月末、NBCの「Today Show」に出演した際、「全ての事柄が正しく納まれば、2021年1月にはワクチンが完成する」と明言しており、人生の過半数を疫病研究に捧げている本物の専門家の発言だからこそ、大きな信頼を置ける。

“...if things fall in the right place...”と、断言する段階では無いものの、ほんの少し希望の光が見えてきた感がする。

こういう妙な世の中になってはいるものの、クリエイティビティを忘れないのがアメリカに住むひとたちの面白いところで、たとえばフロリダ在住の弁護士。

フロリダのビーチは、自粛を徹底しているカリフォルニアと違って、開けては閉めてを繰り返していると聞くが、それに対して地元の弁護士、ダニエル・アルフェルダー(Daniel Uhlfelder)が行ったのは、↑の写真のように、大鎌を手にした死神の服装で、ワルトン郡の各ビーチをうろつき、「ビーチを開けるな。ウィルスばら撒くな」との抗議活動に出ていた。


(C) 2020 Miami Times

まあ単にコスプレしたおっさんが話題になっただけ、と言えなくもないが、そのコスプレ・クオリティが高かったのもあって、ニュースは他州にも飛び火したし、アメリカには面白いこと考える弁護士いるもんだな~と感心してしまった。

そういえば6年前、スーパーボウルの中で流れたCMで、単なる弁護士の宣伝なのに何かの復讐劇アクション映画の予告編みたいに仕上がっていたやつを、思い出すな。

フロリダというのも何かと他州からネタにされるもので、特にお笑い番組の司会者たちは、年に何度か必ずフロリダの珍事件をネタにする。


(C) 2015 Orlando Weekly



100日後に死なないワニが公道を徘徊、マシェッテ強盗、だとかの、他州でまず聞かないようなニュースが、忘れた頃に飛んでくるのが、フロリダ。



地元のニュース番組ですら、それをネタにするほどで、タンパのABCがまとめた3年前のこちらの記事なんて、「逮捕された男が警察に没収されるのを恐れ、現金$1,000を肛門内に隠した(Florida man stuffs $1K in rectum to hide it from deputies)」「アリゲーターの死骸を寮に持ち込んだ学生が問題に(Florida students find dead alligator, bring it to dorm room)」など、見出しで一瞬、思考が停止するものが本当に多い。

良好な日差しに呑気な住人、ビーチが最大の娯楽、と、特色を並べるとカリフォルニアとほとんど変わらないのに、そこにフロリダと付くだけで、「あの州ならそれもありだな」と、誤解と偏見なのが頭で理解できていても心では妙に納得できるのが、フロリダ。

以前この場でもネタにしたように、先月ハンティントン・ビーチで、レイシストな空気ダダ洩れ白人が集結してデモを決行、以後週末には参加人数が徐々に増えているのだが、ニュース番組のキャスターたちも普通に「ハンティントンビーチはカリフォルニア州のフロリダだ」と言うものだから、風呂より先に頭が離脱してきそうだ。



ロサンゼルスの老舗テレビ局KTLAも「外出自粛にプロテストしているのは白人が大半」と指摘しているし、カリフォルニア州は特に移民と敵対している白人も少なくないのが気がかりだが、もっとも同州のサンディエゴにあるサンティー(Santee)という小さな街で、マスク代わりにKKKの頭巾をかぶった白人男性がスーパーに入店したところ、しっかり通報、逮捕、さらには公訴(criminal charge)まで進んでいるというのだから、住民の良心はちゃんと生きている。



我々アメリカ在住市民にとっても朗報はあり、たとえば、スティミュラス・チェック(stimulus check)。

これは、2018年と2019年に納税をした市民に対し、1人頭$1,200(約12万円、非課税対象)が、個々の銀行口座へ自動的に振り込まれる、という市民救済処置。

先月末からスタートした臨時プログラムで、当初は私たち移民への振り込みは遅いだろうな、と思っていたら、先週の今日には、私の口座と妻の口座の両方に、ばっちり振り込まれていた。

こういう行動の速さが、アメリカならではだ、と痛感する。



今は本当に、世界的に、明日の状況が読めない段階ではあるけれど、少なくともアメリカに関しては、州や街ごとに差が大きいとはいえ、「住もうと思えば平穏に過ごせる」、過渡期じゃないかと、私は感じている。

(Stephen)