『月ぞ流るる』澤田瞳子著
読みました。
〈紹介〉
平安時代中期の女性歌人に、赤染衛門(あかぞめえもん)がいる。
歴史物語『栄花物語』の作者ともいわれている。
本書は、その赤染衛門を主人公にした、重厚な歴史絵巻だ。
長年連れ添った夫を亡くした56歳の朝児(あさこ=赤染衛門)は、静かな解放感に浸っていた。
それぞれ不満はあるが、3人の子供も育て、後は余生を過ごすだけである。
ところが権僧正の慶円から、頼賢(らいけん)という若者に和漢の手ほどきをしてほしいと頼まれたことから、彼女の周囲は騒がしくなる。
不義の子で、左大臣藤原道長の甥(おい)である頼賢は、5歳のときに養い親の藤原原子が後に皇后となる藤原娍子(せいし)に殺されたと信じ、あだを討とうとしていたのだ。頼賢の暴走に巻き込まれた朝児は、道長から命じられ、三条天皇の中宮である藤原妍子(けんし)に仕えることになる。
だが、天皇と道長が対立する宮中には、人々の愛憎と欲望が渦巻いていた。
実に読みどころの多い作品である。
平穏なはずの朝児の日常は、頼賢との出会いによって、大きく変化した。
相次ぐ内裏の火事などに、彼女は狼狽(うろた)えながら、自分のできることをしようとする。
その過程で、いろいろなものが見えてくる。血が繫(つな)がっていても、親子は別個の人間であるという苦い認識。
天皇に退位を迫るほど、巨大な権力を持つ道長の根底にあるもの。
妍子と天皇の愛憎劇。
人が生きることの悲しさと、美しさ。
どれも深く掘り下げられており、興味は尽きない。
さらに、もうひとりの主人公というべき頼賢が、原子の死の真相を追う部分は、ミステリーといっていい。
頼賢と朝児に加え、彼らと縁のある文章博士(もんじょうはかせ)の菅原宣義(のぶよし)が、素人探偵のように話し合うシーンなど、ワクワクさせられた。
もちろん、死の真相は意外なものである。
また、「物語」「史書」「歌」は、なぜ人に必要なのかということも、じっくりと描かれている。
朝児に託して語られる、作者の歴史小説家としての想いや願いも、真摯(しんし)に受け止めたい。
(文芸春秋・2200円)
評・細谷正充(文芸評論家)
~産経新聞の書評より~
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〈個人の感想メモ〉
上記、長々と(てか全文)引用しちゃってスミマセン。
ただ…お江戸ものは好きでいろいろ読むけど
平安時代となるとカラッキシ。
(源氏物語だけは読んだけど←もちろん現代語訳を)
ただただ、ホントに、シンプルに、面白かった、しか書けなくて
(出てきた名前もよく覚えられない)
フクザツなあらすじを簡潔に、その感想は「そのとおり!」って
同じ想いをまとめてくださってた細谷氏の書評を
載せさせていただきました。
(無許可でスミマセン)
そもそも、主人公の「朝児さん」(あさこさん)=浅染衛門さん。
失礼ながらヒロインにはややトウがお立ちでw
読み始めてすぐは、すこーしテンション下がったけど(しつれい!)
いやいや、読んでるうちに
なんとも、たおやかで頼りなさそうなのに
その実、肝の据わった、
魅力的なおばさまぶり(←しつれい2!)が
大好きになっていきます。
くわえて、鮮烈なご登場!!
身分あるダメダメ男凹の不義の子として生まれて
とにかくまーー「こじらせまくり」の頼賢(らいけん)くん。
彼の、お勉強のせんせい役を押し付けられてしまいます。
その頼賢くんの描写も、そりゃもう意外性の連続。
最初はただの乱暴者みたいで、朝児ならずとも
眉をひそめてしまうのだけど、
だんだんと、深~~い、彼なりの理由と信念が
あることがわかってきて、
そのうち彼の応援団(な気持ち)に変わってしまうのです。
あと、唯一知ってる名前=「藤原道長」さんww
とにかく、濃~~~~いお方(な描写)
こりゃもうすさまじいまでの生命力と権力欲???
だけどなんとも人間的に描かれてて
コッチにも眉をひそめたくなるものの
なんか、悪役として魅力的に描かれてます。
※そういえば、たまたま土曜日にNHKつけたら
大河ドラマやってたのですが、
まさに紫式部とか道長さんとかがテーマなのね
(知らなかった(^^ゞ)
そこに一瞬だけど「赤染衛門」って役名が見えて
まぁなんともタイムリーって驚いたのでした。
ミステリーとしても、
平安の女性たちの生き方問題としても、
権力争いのすさまじさドラマとしても
予想とぜんぜん違ってて読み応えありまくりでした!!
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ちなみに、たまたま同じ時期に読んでたコミックですが
期せずしておなじ平安京のおはなし・・・
⇩
18巻まで出てるのだけど
実におもしろいです!!!
〈ウィキさんより⇩〉
平安京を舞台に巻き起こる怪奇事件を、在原業平と菅原道真が解き明かすクライム・サスペンス作品。
事件は平安時代に信じられていた鬼や物の怪などが引き起こすという形で発生するが、真相は人間たちが引き起こしたものとして解決される。
また、事件の背景には、朝廷で勢力争いを繰り広げていた藤原氏や伴氏といった有力貴族が何らかの形で関わっているなど、歴史ものとしての側面も描かれている。
(ウィキさんは以上)
そう、主人公は若き菅原道真くん。
ところがこちらも大したこじらせ男子w
頭脳明晰ぶりがすさまじく、コナンばりに(いやそれ以上)
怪事件を解決していきますwww
女ったらしで有名な?業平さんのオトコマエぶりと一緒に
楽しめます♬