『父がしたこと』読みました | 上機嫌な日々

上機嫌な日々

「上機嫌に生きたい」けど、現実には文句とグチばかり。
ただただ日々の覚え書きなつれづれ日記。

「父がしたこと」青山文平著

読みました。

 

 
〈紹介〉
 
8 年にわたる藩主の痔瘻を治すため、全身麻酔を用いる名医・向坂清庵に手術を依頼すると父から聞かされた永井重彰。
漢方の藩医を差し置いたその手術が失敗すれば、へたすれば向坂の首が飛ぶ。
1年前に息子を難病から救ってくれた向坂は、永井家にとって大恩人でもある。
父子は、執刀医の名を伏せて極秘で手術を進めるなか、父と藩主の深い繋がりが明らかになり……。
 
 
〈個人の感想です↓〉
 
最初は、お江戸の武家モノだもんで「さぞかし“お家ダイジ”で、辛いことが起きまくるお話かなぁ」ってこわごわ読み始めたのですが・・・
 
武家モノよくあるシリーズの
 
①「若い藩主がワガママ」
↑とんでもねぇ~!真逆!
なんとも英明で人当たりもよろしく素晴らしい藩主さま♫
わずか11歳(だったかな?)で藩主に祭り上げられたのに、こんなに賢い藩主さまに(嬉し涙)
 
②「忠臣・重鎮である父とアホボン跡取り」
↑これもとんでもねぇ~!w
めずらしく(?)この父にしてこの息子アリな主人公。
“頑迷“と真逆な、柔和で柔軟な「理想の夫とお義父さん」な父子。
 
③「武家出身じゃない嫁をいびりたおす姑」
↑コレがいちばんとんでもねぇ~!!!
(ココでいちばん、声を大にする!!)
肝が据わってて、物事を表面じゃなく本質でみる女性であられる。
大変な病気をもつ跡取り息子を産んだ嫁を責めるどころか身をもって守り、若夫婦がともにチカラを合わせて病気を克服することに全面的に協力するお義母さま。
のみならず、当時の「常と異なる子が生まれたら女親のせい」とする風潮にも断固として異を唱え、自分が楯になって嫁をそんな世間から護ってくれる。
まさにスーパーゴッドマザーさまです♬♬
 
④「しっかり者の庶家出身の嫁にアホボン夫」
これはもう③を参照ww
どうしても自分を責めてしまうお嫁ちゃんのこころに気づき、寄り添い、自分がお城で重責を担ってるのに息子ちゃんの治療のためどんなに忙しくても処置の時間にはいったん必ず帰城してくれる、「仕事とおうちの両立」ができてるスーパー若手官僚!!!
 
 
そんなこんなでwww
素敵な方々しか出てこないお話なので読んでてホントに気持ちがよくてすいすい読み進んでる、、、とっ!??
 
ひえぇぇぇぇ
最後の最後に、、、
「そっそんなぁーーー凹」←も待ち受けてたぁぁぁ凹凹凹
 
↑ご安心ください!
あんまり素晴らしい展開のお話だっただけに落差にショックを受けただけで、残虐とか、そんなんじゃありません。
 
でも、、、ざんねん。ざんねんすぎる。
 
【注】~↓とつじょネタバレ~
 
お父上は、そりゃ辛いけど、でもまだしも、お年のこともあり、ご最期は予測もできたけど…
 
こちらももうひとりの主人公であられる、花岡青洲の弟子筋で麻酔を用いた外科手術の名医“向坂清庵“(架空の人物です)が、あろうことかラストちかくでお亡くなりに。。。
 
(そのテンマツと理由も、理不尽すぎるし辛すぎる凹)
 
これはつらい!!
息子ちゃんの手術&治療が続けられなくなることも。
蘭学を目のカタキにする漢方医の専横が続くであろうことも。
 
なにより、外科手術の名医でありながら内科においても「西洋の薬が手に入らないから蘭学はどうしても内科でなく外科に特化するしかなかった」という、そんな事情を、薬草の宝庫である山~藩が長きにわたってまもってきた山にやっと自由にわけいって、たくさんの貴重な、西洋の薬の代替となる独自の薬を作り出すことにより、克服できる道が見えた。
 
そんな矢先に凹凹(号泣)
このへんの、医学バカ(いい意味で!)な向坂せんせいの描写に、朝ドラ「らんまん」の植物バカ・牧野せんせいを思い出したり。
 
そう、「いい人しかでてこない」って書いたけど、外科医を「外道」とか「蛮医」とか“出る杭”として、確実な手術で人々を救える西洋医学の進化を妨害しようとする「本道」を自称する漢方医たちの描写はムカついた~
(直接の妨害は出てきませんが、背景として)
 
でも、そんな時代でも、確実に一歩一歩、妨害に負けなかったお医者さまたちがおられたからこそ、麻酔を研究・実用化してくださり「痛み」を克服して手術で治すことが出来るようになったんだなぁ、って
 
(ドラマJIN-仁-のペニシリン開発とかも思い浮かびますよね~)
そんなことにもしみじみ感謝しもしました。

 
 
と、いうのは・・・・
 
向坂せんせいが、決して失敗できない命がけの手術(患者もだけど医者も命がけ)を引き受けてくださる、
 
その若き藩主さまの病気って、「痔瘻」なんですよね。
 
当時は参勤交代のため駕籠に乗っての長旅のせいで「痔瘻」をわずらう殿さまが多数おられたって、、、
知らなかったーーー!
 
 
でね、ちょうど昨年の秋ごろ、うちの息子(@20代半ば)も「痔瘻」の手術をしたんです。
 
今思えば、栄えある浪人時代にもお尻にやたらオデキができて(いちおう机に座ってはいたからね)
 
でもそのときは「痔」には至らなかったのですが、
 
職場でデスクワーク主体にかわって1年。
仕事が覚えられない分(涙)残業で座ってる時間が倍増した、それが理由だと思うのです。
 
まさに「参勤交代のお殿様」を彷彿と!??(←違うと思うw)

で、いろんな検査を経て手術ということになり、その術式などは、主治医せんせいが図で解説してくれて心配することなく受けることができて、ひとまず完治することができましたが、、、
 
そのときの「図の解説」とほとんど同じ治療法・術式が今回この作品に、ほんとに詳しく段階を追って書いてあって、そのことに驚くやら感心するやら感動するやら。
 
(息子のばあい「結紮(けっさつ)して壊死させる」ことは必要ない痔の形態(?)でしたが、説明は受けました)
 
ともあれ「藩主の痔瘻の手術」がテーマの小説なんて意外すぎますよね。
 
あともうひとつ。
主人公の跡取り息子ちゃんが生まれながらの病気を抱えてる、と書きましたが
 
それは「鎖肛(さこう)」という病気なんです。
 
検索してみると↓
 
「鎖肛とは直腸および肛門の形成異常で、肛門が生まれつきうまく作られなかった病気です。
 おしりに肛門がないものから、瘻孔(ろうこう)という小さな孔(あな)がみられるもの、肛門の位置がずれているものまでさまざまです。 
鎖肛は新生児の消化管の先天異常の中で最も多い病気です。」
これまた知らなかった。。。
 
 
やっと産まれた息子ちゃんのおしりに、肛門がなくてつるつるだと気づいたときのママちゃん(お嫁さん)の衝撃たるや。
 
江戸時代ですよっ!!!
考えただけで泣けてくる。
 
でも、絶望したパパとママとご両親たちを向坂せんせいが救ってくださったんです!!
 
その、手術と術後の長きにわたる処置を説明する、詳しく具体的な描写にも圧倒されます。
 
そう、ちゃんと、治療の方針や根拠や心持ちをひとつひとつ丁寧に患者さんに説明してくださる、そんなところも先進的で真心こもった稀有なお医者さまだったんですっ!!!
(思い出し涙…)
 
そんな細かい医学的描写こそがまたこの作品の説得力&魅力でもあるって思いました。
 
 
以上っ、あれこれとっちらかって書きなぐりましたが
(いつものこと)
 
コチラで↓
作者の青山文平さんがこの作品についてとっても丁寧に語ってくださってて、とても参考になったり共感しまくったりでした。
 
ぜひともご一読くださいませ♫
(勝手に宣伝隊)