ハケンの女 第2回 | 恐竜おんなのブログ

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肉親とうまくいかず、子供も産めなかった。
どーせ、わたしは哺乳類の基礎もない、恐竜女。
ま、それでもいっか。
縦、血脈の繋がりがゼロでも、横に広がっていけばいいかな。
せっかく、ここに生きてるんだから。

主治医の先生と、認知療法の心理士と、体のゆがみ矯正の先生に呆れられながら、
まだ、苦情受付サンドバック状態のコールセンターでの仕事を続けている。
OCDの治療に効果はなかったが、今月から始める催眠療法学習の費用を稼ぎたくって。

TVコマーシャルでガンガン流れる 『新規 or 乗り換えお申込み受付中』 の契約センターの片隅にいるのだが、
朝から晩まで「申し訳ございません」を連呼し続ける日々だ。

この空間こにいると、旧社保庁が国民から預かった年金データを、ズサンな事務処理で
通していたのも理解できる。
--人間は 他人のモノを自分のモノと同じようには 大切に扱わない。--
--1日に8時間も ミスをせずに仕事ができるほど、集中力は続かない。--

それを踏まえて、業務フローやシステムを作ればいいのに。。。
必須条件は土日出勤、安い時給で人を集めて、ろくな教育もせずに働かせれば、
こんな程度の仕事にしかならないよ。

個人情報やオーダー内容を、勝手に変えられて、想定外の商品が届けば、誰だって怒るよね。
「どうして、間違うんですか!?」
「途中で手続きがストップしているのは、おたく(会社)の都合でしょ?」
「早急に進めるために鋭意努力中、なんて、民間企業が使う言葉なの?」

私たちだって、困ってるんです!!

と言い返したいけれど、会話は全て録音されているからなあ。

間仕切りもなく、100人ほど詰め込まれているフロアに漂う、暑く汚れた空気は、
今のよどんだ社会と同じかもしれない。

挫折したり、エリートでなくなった日本社会が吐く、無数のため息とストレスと、
それでも、働いて食べていかなければならない私たちの、体から発する低温の熱。

ここにいるのは事務仕事の年齢をオーバーしたオバチャンや、失業したオッチャンだけじゃない。

「あと1万円手取りに残してくれたら、ずっと楽なのに…」
「そうだよね。 わたし、年金もらうまで生きてないから、払いたくないんだけど。」
20代の若者は、エレベータ内で乾いた笑いを交わしている。
このコたちは、就職したことがあるんだろうか。。

電話の向こうから怒りをぶつけてくる人々も、きっと人生の嘆きを体の外へ出したいのだろう。

ここには100人分の、悔しさと歯がゆさと、まだ頑張りたいというリジベンジと、
見えすいたあきらめが共存している。
私は今日も、マイナスエネルギーを浄化してくれるらしいブレスレットを付けて、ヘッドホンマイクを構える。