『香港の流れ者たち』 | 映画鑑賞備忘録

映画鑑賞備忘録

香港映画が大好き人間の映画鑑賞の記録

フランシス・ンが主演と聞いて、さっそく見てきました。内容としては、香港で実際に起きたホームレス荷物強制撤去事件を題材にした社会派ヒューマンドラマ。

 

いや、とにかく、フランシス・ンがすごすぎる。香港ノワール系に出演の時は、とにかくかっこいいおじさまなんですが、この作品ではホームレス役。顔の肉付きが本当に不摂生している人の感じそのもの。その様変わりに驚くとともにすごいなと思いました。

 

全体的にホームレスでリアルだけどキレイだけどリアルみたいなすごい的確という表現でいいのかわからないけど、そんな印象を受けました。

 

内容とはあまり関係ないですが、撮影時点の香港の街並みがしっかりと映像に残されていて、街の記録としても重要な作品のような気がしました。香港のネオンライトはもうかつての映像の中にしかないように目まぐるしく変わっていく香港という街のある時点を切り取った記録。おそらく日本でいうコンビニが出てきたり、正式かわからないけれども葬送の儀式が出てきたり。なにより驚いたのは、マンションですね。マンションの部屋をシーンで使っている作品はこれまでも見てきましたが、この作品は今まで見てきたマンションの部屋の感じとは異なっていて、なんだか日本のマンションにとても近くなっていた印象でした。ドアがに二重は変わってなかったけど。現代をテーマにしているとそういう変化を感じ取れるのもいいなと思います。

 

あとは街並みでいえば、夜景を上空から映しているシーンがあるのですが、めっちゃくちゃきれいだった。日本の町の夜景とはまた違うなんとなく整然としている感じの夜景。ライトの色がほぼ黄色でそろっているからかな。とてもきれいでした。

 

お話でいえば、香港映画って、「やあこんにちは」みたいな感じで新しい登場人物が入ってくる印象が結構あるんですが、今回もそんな感じで人が登場してきて、おもしろいなぁと。結構脈略なく出会った人が接触してくるよね。わりと異性が。そして恋仲とかになるよね。嫌いじゃないあの感じ笑

 

ふと全体を見ながら思ったのは、結構言葉で説明しないアンニュイなシーン入りがちだよなぁとか。このあたりは日本映画に近い気もするけど、日本映画以上に意味脈略をとらえにくいシーンが入る気もする。とくに香港ヒューマン系。わたしがただ香港のそれをうけとる文化的造詣がないだけなのかもしれないけれども。

 

ラストは、なんとなくふとこんな終わり方しそうだなと想像がついてしまったんだけど、まさにそんな感じに終わったけど、いや、そうおおわるのか、、、まじかという印象。特に最後たぶんカメラワークが変わらなかったので、長回しだったと思うのですが、その回されている時間が、ああ。。。と思うに十分な時間があって、何とも言えない感じでおわりました。少し罪悪感すら残るような。

 

香港のヒューマン系は見れるときは見に行きますが、特別好きでも嫌いでもないのですが、今回この作品を見て思ったのは、根底に流れているのは、香港ノワールと何ら変わらない、香港の人が人としてどう生きていくのかという生き様の話だなと感じました。だからこそ、フランシス・ンが主演をしていることにめちゃくちゃ私は腹落ちしてしまいました。もしかしたら多くの香港映画で描かれているものは描き方スタイルこそ変われど、本質的なものはそんなに変わらないのかもしれない。そんなことを思いました。

 

見終わったあとに思ったのは、直接は関係ないのだけれども、『メイド・イン・ホンコン』のような作品はもう現れないのかもしれないということでした。そこに悲しさもさみしさも別にないのだけど、ただなんとなくそんな気がした。

 

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監督:李駿碩

出演:呉鎮宇、謝君豪、李麗珍 他
2021年/香港

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