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CINEMA道楽

映画を見続けて40余年。
たくさん見過ぎて
忘れてしまうので、
映画館やテレビで観た
映画の鑑賞日記を
つけることにしました。
ネタバレもありますので、
未見の人は気をつけてね

 私のおじさま好きの原点はチャールズ・ブロンソンだと思います。
 今見ると垢抜けないフツーのおっさんですが、小学生の頃はすごく好きでした。ファザコンなんでしょうね、きっと。

 この頃のハリウッド映画のヒーローは、ゆるぎない正義感とミスををしない完ぺきな仕事振りを併せ持つ完璧なヒーローです。
 格闘技術も銃の腕も完璧、信号式の通信機も操作できるし、蒸気機関車の運転もできるし、ダイナマイトも扱えるし、もちろん馬も乗りこなします。
 そんな、ひたすら「ブロンソンがカッコいい」映画です。
 でも、それだけに止まらず、走る列車内で怒る殺人事件の謎を追うミステリーや密室劇の要素もあるなど、割としっかりした作りで最後まで楽しめました。
 アメリカ人って戦闘機が好きですよね。スーパーボウルとか大きいスポーツイベントでもオープニングに必ず戦闘機の編隊が飛んできます。  
 詳しい人に聞くと、機内のシーンとか戦闘シーンなどはかなりリアルにできているそうですが、そもそもこの映画は軍のリクルート映画的なものらしく、公開当時は映画館の前に軍のリクルート窓口が置かれていたそうです。
 だからパイロットはイケメンでカッコいいし、大きなショックからも自力で立ち直る強さを持ってるし、奇麗で聡明なお姉さんとラブラブになるし、「英雄」として持ち上げられるわけです。

 ところで私の住まいは米軍の某基地の飛行エリア内にあり、不定期に訓練飛行の爆音に悩まされています。昼間がメインですが、たまに夜中の2時とか朝5時に飛んでくることもあります。機体のペイントが見えるぐらいの低空で飛ぶこともよくあり、飛んでくるとテレビの音も電話の声も聞こえなくなり、至近距離での会話も困難になります。
 だから、映画の中の戦闘機の爆音は聞き慣れた馴染みのある音ですが、実際はこんなモノではありません。振動も伴うし。
 サンディエゴにはあれだけ広大で人家もない訓練スペースがあるのだから、わざわざ日本まで来て住宅街の上で飛行訓練しなくていいのに、と心底思いました。
 この映画を「カッコいい」とか「爽快感がある」と言う人もいますが、そんな事情もあって私にはちょっと不快です。

 トム・クルーズも若くてお芝居はまだそんなに上手ではありません。チャラい感じになり過ぎていて、「謎の死を遂げた名パイロットの父の影を背負っている」という、心の影の部分が全然伝わってきませんでした。

 米軍のプロパガンダ映画としては良くできているのではないでしょうか。 
 前作「酔いどれ天使」に続いて、戦後の町医者が主人公の黒澤明監督作品。
 「酔いどれ天使」では結核に感染しながらも、自分の感情とヤクザとしてのプライドのために命を落とす激情型の若いヤクザ役だった三船敏郎が、今度は道徳観念と医師としての良心を貫く、「聖人」のような医師役で登場します。

 軍医として従軍した時に、素手で梅毒持ちの兵士を治療したために自分も梅毒に感染してしまった青年医師(恐らく童貞)。
 戦後は愛する婚約者の女性と結婚するはずでしたが、梅毒のために彼女に触れることもできず、ひたすら医療に打ち込みます。彼女に事実を告げれば「治るまで10年でも20年でも待つ」と言い出すに決まっているので、彼女の幸せを思うと身を引くべきだと考え、本当は愛している彼女を遠ざけ、一方的に婚約も破棄してしまいます。
 真摯に医療に取り組み、患者に優しく、自分に梅毒を感染させた元兵士とその家族にも手を差し伸べるような、まさに「医師の鏡」のような男です。

 「静かなる決闘」というタイトルは、いつ治るともしれない梅毒治療に黙々と立ち向かう姿のことだろうと思って観ていると、終盤になって「聖人」である彼がついに自分の心情を吐露するシーンがやってきます。
 婚約者だった彼女が「明日他の男と結婚する」と知って、心に押し込めていた感情が溢れだすのです。
 「オレの欲望は実にかわいそうだ。若い頃は若者らしい道徳観に押し込められ、戦争中は"帰れば彼女が待っていてくれる"という思いでガマンさせられ、今は医師としての良心に押し込められている。ずっと脂汗を流しながら必死でガマンしてきたのに、彼女は別の男のモノになってしまう」と。
 ここではじめて、「静かなる決闘」というタイトルは、病気との闘いだけではなく、彼の医師としての責任感や道徳観と、男としての欲望との決闘だということを観客は知ります。
 体内に梅毒がある以外は若くて健康な男性が、目の前の愛する彼女に指1本触れることができないのですから、たいへんな葛藤ですよね、確かに。
 でも、そんな感情を爆発させたのはわずか数分。
 彼はまた、何事も無かったかのように冷静で高潔な「医師」に戻って行きます。

 一方、彼に梅毒をうつした元兵士の男は、きちんと治療をしないまま結婚し、奥さんを妊娠させてしまいます。結局奥さんは梅毒に犯されて酷い姿になった赤ちゃんを死産することになります。赤ちゃんの姿は映りませんが、それを見た元兵士の男の悲鳴と茫然自失ぶりに、どんな悲劇だったのかがうかがわれます。

 戦後すぐの「昔の話」で片づけてしまうこともできますが、梅毒をHIVに置き換えれば、現代にもじゅうぶん通用するストーリーだと思います。決してセックスだけが感染源ではないとか、ちゃんと検査や治療をしないと自分も周りも不幸にするとか。

 みなさん、ちゃんとHIV検査してますか?
 私のフランス革命の教科書は"ベルばら"でした。
 この映画はフランス革命の始まりとされる「バスティーユ襲撃事件」が起こり、マリーアントワネットがベルサイユ宮殿を去る少し前までの宮殿内の様子が、マリーアントワネットの侍女の視点で描かれています。
 実際の暴動や戦いのシーンなどは一切なく、ほぼ全編ベルサイユ宮殿内が舞台で、フランス革命上の事件や人物の名前も宮殿内の噂話として会話の中に出てくるだけなので、"ベルばら"で得ていた知識がとても役立ちました。

 主人公のシドニーは貴族ではなく身寄りのない平民で、マリーアントワネットの「朗読係」としてベルサイユ宮殿の中の従業員寮のような場所で暮らしています。マリーアントワネットが気まぐれに「本を読んで欲しい」と思った時に部屋に呼ばれる侍女です。
 同僚の侍女仲間にはもちろん、"上司"にあたる貴族や時にはマリーアントワネットにもハッキリ意見するような、賢くて気が強い女性です。マリーアントワネットに取り入って骨抜きにしたとされている悪女ポリニャック夫人のことを人前で呼び捨てにしたり、実在していたら、すぐにクビになりそうですが・・・
 とにかくマリーアントワネットが好きで好きでたまらない女性で「王妃のためならなんだってする」と固く心に決めています。しかし、その固い決意ゆえに「最後まで王妃の傍に仕える」という願いは叶わぬ夢となってしまいます。

 撮影は実際のベルサイユ宮殿で行われたそうです。
 華やかなフランス貴族社会の黄昏時が上手く描かれていたと思います。

 別に無くてもいい女性の全裸シーンが2~3回あったのはちょっと気になりました。フランス映画では、女性の全裸シーンが「お約束」なのかしら。
 「マイノリティ」が「普通の」社会の中で「普通に」暮らすことの難しさを描いた映画は結構たくさんあります。
 たいていはお涙頂戴の悲劇的な物語や徹底的に虐げられる物語、もしくは極端に茶化して笑い飛ばす物語になっている作品が多いように思います。
 その点この作品は「手がハサミ」という突飛なキャラクターを使いながらも「笑い」と「痛み」のバランスが絶妙に取られています。
「この街に雪が降るようになった理由」という、とてもファンタジックなテーマを縦糸に、山から街へ下りてきて、結局山へ帰ってしまう青年の喜怒哀楽がテンポよく描かれていきます。

 ポップな色使いの街並みやおとぎ話に出てきそうな丘の上の「お城」、テーマパークのアトラクションのような「工場」。そこに計算されて「配置」された人々の動き。
 こんなにリズム感とバランスの良い映像は他に無いんじゃないかと思うほどです。

 ジョニー・デップは変幻自在な俳優ですが、中でもティム・バートン監督作品では個性的なキャラクターを数々演じています。どれも「ハマり役」に見えてしまうところがスゴい。
 ジョニー・デップとティム・バートン監督は、ハリウッドの中でも屈指の名コンビだと思います。