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CINEMA道楽

映画を見続けて40余年。
たくさん見過ぎて
忘れてしまうので、
映画館やテレビで観た
映画の鑑賞日記を
つけることにしました。
ネタバレもありますので、
未見の人は気をつけてね

 崔洋一監督の映画のセックスシーンはとてもエロいです。映画的に観客に媚びて魅せようとしている感じがまったく無く、リアルでな生々しいのです。だからエロい。 
 役者さんも崔監督にかかると、他の監督作品では感じることのないエロさやセクシーな魅力が引き出されているので不思議です。
 もうひとつ、リアルで生々しいのがバイオレンスシーン。血まみれの遺体や、一方的に殴りつけるようなシーンが、「もうやめて!」と叫びたくなるほど延々と映し出されるシーンが多いのも特徴です。

 「マークスの山」は高村薫の人気小説を映画化したものですが、小説に書き込まれている登場人物の生い立ちや半生、人間関係などがある程度頭に入っていないと、よく意味がわからない映画に思えてしまうかもしれません。崔監督の映画には親切な説明台詞は無いので、察して観ないといけないのです。
 私も予備知識無しで映画を観たので、わかりにくい部分がけっこうありました。後でwikiなどで人物像をチェックして納得したところがいくつかあります。
 原作を読んでから映画を観れば、もっと感情移入できたのかもしれません。
 それでも、警察、犯人、(殺人の過去を背負った)被害者という三者の、視点と感情が絡み合った骨太な濃い印象的な映画でした。
 まだ米軍の占領下にあった昭和24年に起きた当時の国鉄総裁轢死事件が、真相を追う新聞記者の視点で描かれています。

 下山事件は、自殺か他殺かの確定すらされないまま警察捜査が打ち切られてしまった謎だらけの事件で、時効成立後も多くの作家やライターなどがこの事件の真相に取り組み、たくさんの本も出版されています。

 この作品は、事件発生当時から新聞記者として取材をすすめた記者の小説を原作に、社会派の熊井啓監督がドキュメンタリー調に撮っています。
 朝鮮戦争、60年安保闘争、東京オリンピックなどの実際のニュース映像を交え、日本の戦後の復興と経済成長が進む様子がわかりやすく、生々しく伝わってきました。

 有名な未解決事件として「下山事件」の名前を知っている人は多いと思いますが、私も、国鉄総裁という要人の死亡事件が、なぜ自殺か他殺かの確定もされずに捜査打ち切りになったのか、それで世間は何とも思わなかったのか、など不思議に思っていました。
 この映画を観ると、朝鮮戦争を翌年に控えた米軍が、ドッジ・ラインに基づく経済の立て直しや、民主化よりもレッドパージを優先する占領政策を早急に進めるためのスケープゴートとして下山総裁が選ばれた、というストーリーが浮かび上がってきます。

 敗戦の傷から立ち直り、めざましい勢いで復興と経済成長を遂げた戦後の日本ですが、その裏にはたくさんの政治的な思惑や謀略がうごめいていたのかもしれません。
 日本の戦前・戦中の歴史に比べると、語られることが少ない戦後史ですが、もっと深く知りたくなってくる映画でした。
 ジャック・ライアンシリーズはアメリカでは定番の人気小説が原作のシリーズ。「レッド・オクトーバーを追え!」「パトリオット・ゲーム」など、映画もたくさんあります。
 アメリカ版「007」、なんていうキャッチコピーもよく見かけます。日本でいえば金田一耕助や明智小五郎のような位置付けのキャラクターかな、と思っていましたが、原作では大統領にまでなっているらしいので、島耕作の方が近いかもしれません。

 「ボーイスカウト」と揶揄されるほどに正義感の強いライアンが、CIA内部やホワイトハウス内部の闇に立ち向かうお話です。激しい銃撃戦やアクションもたくさんあって、3時間近い映画ですが、飽きずに楽しめます。この頃のハリソン・フォードにピッタリの役柄だと思います。
 ラストはCIA内部やホワイトハウスを告発するであろう、議会の公聴会で宣誓をするシーンで終わります。
 この後ライアンはどうなるのか気になるところですが、原作ではCIAを去るものの、大統領補佐官→副大統領→大統領と出世して行くらしいです。
 しかし、映画シリーズはこの後、主演俳優を変えて、またライアンの若い頃のストーリーに戻ってしまいます。
 原作ではこの後、日本が反米政権になって、自衛隊がグアム島を占領したりして、アメリカと日本が戦争するような話になっているそうです。
 商業的にも、政治的にも、そういう映画を作るのは難しいでしょうね。
 原題は「The Blind Side」なのですが、どうしてこんな邦題にしたのでしょうか。
 この映画の冒頭でも説明がありますが、アメフトの右投げのクォーターバック(QB)は、パスを投げる時に体を右に向けて振りかぶるので、QBにとって左側は完全に背中を向けた「死角」になります。この左側を「ブラインドサイド」といいます。
 この映画の主人公マイケル・オアーのポジションは、その「ブラインドサイド」を守るオフェンスラインの一番左、レフトタックル(LT)です。

 アメフトはボールゲームですが、ボールに触れると反則になってしまうプレイヤーがいる、ある意味不思議なスポーツです。QBの前に並んでディフェダーを防ぐ役割をするオフェンスラインのプレイヤーは原則ボールに触ることはできません。
 ただ「守る」ためだけにいるのがオフェンスラインマンであり、QBの死角を守るLTは、その「守りの要」の重要なポジションです。
 「保護本能」がずば抜けて人よりも高いマイケルにとって、仲間を守るためのこのポジションはまさに「天職」といえます。
 そのことに気付かせてくれたのは、彼の後見人になってくれた白人のリー・アン一家。まともに教育も受けられず、ストリートチルドレン同然だった黒人少年のマイケルに、しあわせな暮らしと教育を与えてくれました。
 もともと保護本能が強かったマイケルは、自分を盾にしてでも家族や仲間を守る勇気を得ることができたのです。
 そんな自己犠牲の精神がなければ、ボールに触れられないボールゲームプレイヤーなんてできない、と私は思います。

 アメフトのことがわからなくても、ホームドラマとしてもシンデレラストーリーとしても楽しめる作品になっていると思います。
  オープニングのローレンス・テイラーのプレイシーンとか、エンディングに流れる本物のマイケル・オアーのドラフトのシーンやスチール写真など、NFLファンにとっても嬉しい作品でした。

 マイケル・オアーというのは実名で、この映画は彼の半生を綴った「The Blind Side」というドキュメンタリー小説を映画化したものです。
 NFLファンの私は、テレビでマイケル・オアーが出場するゲームを見るたびに、彼の自伝がベストセラーになっていること、映画化もされることを何度も聞いていたのですが、「いつ映画化されるんだろう?」と思っていました。
 それから数年経ってしまいましたが、全然関係ない邦題がつけられていたので、この映画が「ブラインド・サイド」だということに最近やっと気づきました。
 フットボールのことなんか全然知らない人が邦題を付けちゃったんでしょうね・・・

 ちなみにマイケル・オアーはこの映画ができたぐらいのタイミングで、同じオフェンスラインでも「ブラインドサイド」を守るレフトタックルから、ライトタックルにコンバートされました。
 9.11にまつわる映画はたくさん撮られていますが、この作品も9.11で父親を亡くした少年が主人公です。
 少年が父の遺品の中から謎の鍵を見つけ、その鍵の"穴"を探し歩くお話。少年はアスペルガー症候群という設定で、神経質過ぎるほど綿密に資料をデータベース化し、念入りに計画を立てて「鍵穴探し」の探検に挑みます。
 尋ねる先々でけっこう親切に応対してもらえるので、「9.11被災遺児」はアメリカではそういう待遇を受けるものなのかと思いながら観ていましたが、実は彼の母親が先回りして事情を説明して回っていたことが最後に明かされます。
 途中から彼のお婆ちゃんの間借り人(実は彼のお爺ちゃん)が探検に同行するようになり、調査は一気に進みますが、お爺ちゃんは彼の痛みを抱えきれなくなって去ってしまいます。原作の小説では、戦火を生き抜いたこのお爺ちゃんとお婆ちゃんのストーリーもしっかり書かれているそうで、その部分が抜けている映画版に、原作ファンは物足りなさを感じているようです。

 出会った人たちの写真を撮り、少年が作りあげた「探検の書」がステキです。
 父の死後、痛みや苦しみや秘密を抱えてきた少年が、たくさんの人と出会い、その人たちの様々な痛みや悲しみに触れることで、ひとつ乗り越えてオトナになった少年を見届けられたような気持になれます。