糖質コルチコイド | きくな湯田眼科-院長のブログ

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ステロイドの語源はギリシャ語の「固体・立体」を意味するstereosに由来します。 stereo(立体音響)と同じ語源で、この言葉にoid(~のようなもの)がついて出来た言葉です。もともと胆石中に発見され、フランス人Chevreulにより命名されたコレステリン: chole (胆汁)sterin (固体) から派生してきた言葉で、その名の通りコレステロールから合成されます。(コレステリンはアルコールのようにOH基がついていることから、後にアルコールを意味する-olがつき、コレステロールcholesterol となりました)

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上の図はステロイド骨格を表しています。図のように4つの員環はそれぞれアルファベットで識別され、構成炭素Cには図のように番号が付いています。


ステロイドは脂溶性物質で、リン脂質で出来た細胞膜を容易に浸透し、細胞内へと入っていくことができます。ペプチドホルモンなどは水溶性のため細胞膜には浸透できず、作用を発揮するには、細胞膜にある特別な受容体を必要とします。ステロイドホルモンは直接細胞内に入り、細胞内の受容体と結合し作用を発揮します。そこでステロイドホルモンである糖質コルチコイド(GC)の働きを見てみましょう。


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細胞質にある糖質コルチコイド受容体(GR)はタンパク質で出来ています。これには2つのアイソフォームαとβがありますが、重要なのは前者です。αGRは分子量777で、熱ショックプロテイン(HSP90) と結合し、非活性な状態で細胞質中に存在しています。


下の図はヒトの糖質コルチコイド受容体(hGR)の模式図です。Sはアミノ酸セリンを表しています。S226はアミノ酸配列226番目のセリンです。(実はS221かS226かどちらがリン酸化されるかで、アクチベーターとして働くか、リプレッサーとして働くかが決められると言う報告があります)


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糖質コルチコイド(=Ligand リガンド:受容体と結合する物質を一般にリガンドと呼びます)が受容体に結合すると、HSP90がはずれ、受容体の立体構造が変化し、核内へ進入していくことが可能となります。


一般にステロイド受容体タンパクはN末端から順に、A~Fの6つの部分に分けることができます。


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このうちA/Bは 可変領域で、細胞や対応するホルモンにより異なっており、RNAへの転写の調節を行う部分に相当します(N - terminal domain)活性化機能因子AF-1がこの部分に含まれています。


Cは受容体GRが標的遺伝子DNAの応答性エレメント(GRE)と結合する部分となります(DNA binding domain : DBD)。DNA結合ドメインはDNAの基本配列(糖質コルチコイドでは多くはTGTTCT)を認識してDNAに結合します。


Dは蝶番領域と呼ばれ受容体が核内に入るときに蝶番のように、この部分で曲がり核内に入ることが可能となります(Hinge region)。


Eはホルモンと結合する部分です(Ligand binding domain : LDB)。活性化機能因子AF-2がこの部分に含まれています。リガンドがLDBに付着しAF-2が活性化されることによりAF-1の活性が誘導されます。


FはC末端部(C - terminal domain) で、作動薬と拮抗薬との識別に役立っていると言われています。


こうして標的DNAに結合したGRは他の遺伝子アクチベーター蛋白と結合し、RNAへの転写を促進させます。また、逆にリプレッサーと結合し転写を抑制する作用も示します。このようにして糖質コルチコイドは遺伝子を通して、生体にいろいろな作用を現すことになります。


下の図はDNAと結合したGRの様子とアクチベータータンパクと結合しRNA転写を促進させる解説図です。

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