和歌山県海南市の藤白神社敷地内にある鈴木屋敷(全国の鈴木姓のルーツとなる鈴木一族が住んでいた)の復元に向けた上棟式が、和歌山県の仁坂知事や全国鈴木姓(約180万人)の関係者らが出席して5月14日に行われ、来年3月の復元完成に向けていよいよ期待が高まってきました。

 

 


この鈴木屋敷の復元には2億円近い資金が必要だそうで、3年以上前から、クラウドファンディングの実施や寄付の募集などで必要資金の一部を確保し、国や県・市など行政の補助も受けながら、やっと完成の目処が立ったとのことです。特に、自動車メーカー「スズキ」(浜松市)の鈴木修相談役は、自社からの多額の寄付を含めて、この寄付金集めの活動も側面支援してこられたようです。

平安時代末期にこの鈴木屋敷で幼少期を過ごした武将の鈴木三郎重家は、弟の亀井六郎重清とともに、壇ノ浦での平家滅亡のあと頼朝に追われる義経につき従って奥州・平泉まで行動を共にしており(途中、重家は藤白にいた病床の母を見舞いに一時帰郷し、その後、平泉に向かう途中で捕らえられて頼朝と対面したと伝えられる)、このことを謡った復曲能「鈴木三郎重家」が東京で二度(2018年と2019年)上演されています(下記リンク参照)。そのシテ役を務められた能楽師の鈴木啓吾さんも、今回の鈴木屋敷復元の上棟式に出席されておられます。

 

 


さて、好評を頂いているFM TANABEの連続ラジオドラマ「弁慶記」(全60話)もいよいよ今週の放送が最終週となりますが、平泉に向かう義経一行に合流する途中、頼朝方(梶原景時)に捕えられて頼朝と対面する鈴木三郎重家の様子が第56話(5月23日)に放送されます。鈴木屋敷復元の上棟式ともほぼ同期して、本当にタイムリーな弁慶記の放送となりました。

来年の鈴木屋敷完成後は、全国から鈴木姓の方を中心に海南市の藤白神社を訪問する観光客が増えることが期待されますが、その際、最後まで義経と行動をともにして平泉で散った弁慶と、鈴木三郎重家、亀井六郎重清の兄弟がいずれも紀州にルーツがあるということがあらためて認識されて、海南市のみならず弁慶生誕の地である田辺市にも足を運んで頂けることを、今から期待しております。

そして、それらをフックとして復曲能「鈴木三郎重家」の田辺市での上演も実現すれば、それを願う関係者の一人としてこんなに嬉しいことはありません。この最高のシナリオの実現に向けて、さらにいろいろな雰囲気を盛り上げていきたいと思っております。