「愛媛県玉串料訴訟」 | 宗教法人判例・行政情報ナレッジベース

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宗教法人アドバイザーⓇ 行政書士橋本哲三が宗教法人等の裁判例・行政情報などを綴ります。

※ 右筆のザクコメ(ザックリコメント)


 愛媛県が2つの神社(宗教法人)の祭に、


玉串料などを公金から支出したのは、


憲法第20条第3項、第89条に反する行為だと提起された訴訟。



 果たして、「一般人に対して、


県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており


右宗教団体が他の宗教団体とは異なる


特別のものであるとの印象を与え、


特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるを得ない」


として、違憲判決



 前出の「津地鎮祭事件」とザックリ比べると、


「社会の一般的慣習に従つた儀礼を行うという


専ら世俗的なものと認められ」


「効果が神道を援助、助長、促進し


又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められない」



一般社会の感覚として

(1) 世俗的なものか


(2) 特定の宗教団体を支援していると認められるか


この視点で、合憲、違憲の判断が分かれたと思われます。



最高裁判例


事件番号       平成4(行ツ)156号
事件名         損害賠償代位
裁判年月日      平成9年04月02日
法廷名         最高裁判所大法廷
裁判種別       判決
結果          その他
判例集等        民集 第51巻4号1673頁
原審裁判所名     高松高等裁判所
原審事件番号     平成1(行コ)3
原審裁判年月日   平成4年05月12日


判示事項


一 県がD神社又はE神社の挙行した例大祭、みたま祭又は慰霊大祭に際し玉串料、献灯料又は供物料を県の公金から支出して奉納したことが憲法二〇条三項、八九条に違反するとされた事例


二 委任又は専決により県の補助職員らが公金支出を処理した場合において知事は指揮監督上の義務に違反したものであり過失があったが補助職員らは判断を誤ったけれども重大な過失があったということはできないとされた事例


三 複数の住民が提起する住民訴訟と類似必要的共同訴訟


四 複数の住民が共同訴訟人として提起した住民訴訟において共同訴訟人の一部の者がした上訴又は上訴の取下げの効力


裁判要旨


一 愛媛県が、宗教法人D神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である例大祭に際し玉串料として九回にわたり各五〇〇〇円(合計四万五〇〇〇円)を、同みたま祭に際し献灯料として四回にわたり各七〇〇〇円又は八〇〇〇円(合計三万一〇〇〇円)を、宗教法人愛媛県E神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である慰霊大祭に際し供物料として九回にわたり各一万円(合計九万円)を、それぞれ県の公金から支出して奉納したことは、一般人がこれを社会的儀礼にすぎないものと評価しているとは考え難く、その奉納者においてもこれが宗教的意義を有する者であるという意識を持たざるを得ず、これにより県が特定の宗教団体との間にのみ意識的に特別のかかわり合いを持ったことを否定することができないのであり、これが、一般人に対して、県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており右宗教団体が他の宗教団体とは異なる特別のものであるとの印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるを得ないなど判示の事情の下においては、憲法二〇条三項、八九条に違反する。


二 愛媛県が憲法二〇条三項八九条に違反して宗教法人D神社等に玉串料等を県の公金から支出して奉納したことにつき、右支出の権限を法令上本来的に有する知事は、委任を受け又は専決することを任された補助職員らが右支出を処理した場合であっても、同神社等に対し、右補助職員らに玉串料等を持参させるなどしてこれを奉納したと認められ、当該支出には憲法に違反するという重大な違法があり、地方公共団体が特定の宗教団体に玉串料等の支出をすることについて、文部省自治省等が、政教分離原則に照らし、慎重な対応を求める趣旨の通達、回答をしてきたなどの事情の下においては、その指揮監督上の義務に違反したものであり、過失があったというのが相当であるが、右補助職員らは、知事の右のような指揮監督の下でこれを行い、右支出が憲法に違反するか否かを極めて容易に判断することができたとまではいえないという事情の下においては、その判断を誤ったものであるが、重大な過失があったということはできない。


三 複数の住民が提起する住民訴訟は、類似必要的共同訴訟と解すべきである。


四 複数の住民が共同訴訟人として提起した住民訴訟において、共同訴訟人の一部の者が上訴すれば、それによって原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として上訴審に移審し、上訴の判決の効力は上訴をしなかった共同訴訟人にも及ぶが、上訴をしなかった共同訴訟人は、上訴人にはならず、上訴をした共同訴訟人のうちの一部の者が上訴を取り下げた場合は、その者は上訴人ではなくなる。


(一につき、補足意見、意見及び反対意見がある。)



参照法条


地方自治法
第153条第1項 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部をその補助機関である職員に委任し、又はこれに臨時に代理させることができる。

第242条の2第1項 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第四項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第四項の規定による監査若しくは勧告を同条第五項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。


一  当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二  行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三  当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四  当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあつては、当該賠償の命令をすることを求める請求


第242条の2第4項 第一項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもつて同一の請求をすることができない。


第243条の2第1項 会計管理者若しくは会計管理者の事務を補助する職員、資金前渡を受けた職員、占有動産を保管している職員又は物品を使用している職員が故意又は重大な過失(現金については、故意又は過失)により、その保管に係る現金、有価証券、物品(基金に属する動産を含む。)若しくは占有動産又はその使用に係る物品を亡失し、又は損傷したときは、これによつて生じた損害を賠償しなければならない。次に掲げる行為をする権限を有する職員又はその権限に属する事務を直接補助する職員で普通地方公共団体の規則で指定したものが故意又は重大な過失により法令の規定に違反して当該行為をしたこと又は怠つたことにより普通地方公共団体に損害を与えたときも、また同様とする。


一  支出負担行為
二  第二百三十二条の四第一項の命令又は同条第二項の確認
三  支出又は支払
四  第二百三十四条の二第一項の監督又は検査


憲法
第20条第3項 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。


第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。


その他、民事訴訟法第52条1項、同法第363条



裁判所掲載全文はこちら↓


http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122324485697.pdf