※ 右筆のザクコメ(ザックリコメント)
参照文献(1)及び判決全文によりますと、
公務中の交通事故で亡くなった自衛官の妻(キリスト教徒)は、
某県にある護国神社(神道の宗教法人)に
亡くなった夫を含む殉職自衛官の合祀申請が、
政教分離原則に反する行為であり、
自分の宗教上の自由を侵害されたとして、
損害賠償と合祀申請の取り消しを求めた訴訟事件。
結果は、「宗教とのかかわり合いが間接的で」
「他の宗教に圧迫、干渉を加える効果は認められず」
「その態様、程度が社会的に許容し得る限度を超える場合でない限り、
法的利益が侵害されたとはいえない。」
として、亡自衛官の妻の訴えが認められなかった。
(1)参照文献:「憲法判例百選Ⅰ 第6版」有斐閣 発行
最高裁判例
事件番号 昭和57(オ)902号
事件名 自衛隊らによる合祀手続の取消等請求事件
裁判年月日 昭和63年06月01日
法廷名 最高裁判所大法廷
裁判種別 判決
結果 破棄自判
判例集等 民集 第42巻5号277頁
原審裁判所名 広島高等裁判所
原審事件番号 昭和54(ネ)84
原審裁判年月日 昭和57年06月01日
判示事項
一 私的団体が護国神社に対し殉職自衛隊員の合祀を申請する過程において自衛隊職員のした行為が憲法二〇条三項にいう宗教的活動に当たらないとされた事例
二 死去した配偶者の追慕、慰霊等に関して私人がした宗教上の行為によつて信仰生活の静謐が害された場合と法的利益の侵害の有無
裁判要旨
一 社団法人E会のF支部連合会がa県護国神社に対して殉職自衛隊員の合祀を申請する過程において、自衛隊Aiの職員が合祀実現により自衛隊員の社会的地位の向上と士気の高揚を図る意図、目的の下に右連合会に協力して、他のAiに対し殉職自衛隊員の合祀状況等を照会し、その回答を右連合会会長に閲覧させるなどした行為は、宗教とのかかわり合いが間接的で、職員の宗教的意識もどちらかといえば希薄であり、その行為の態様からして国又はその機関として特定の宗教への関心を呼び起こし、あるいはこれを援助、助長、促進し、又は他の宗教に圧迫、干渉を加える効果をもつものと一般人かち評価される行為とは認められず、憲法二〇条三項にいう宗教的活動に当たらない。
二 死去した配偶者の追慕、慰霊等に関して私人がした宗教上の行為によつて信仰生活の静謐が害されたとしても、それが信教の自由の侵害に当たり、その態様、程度が社会的に許容し得る限度を超える場合でない限り、法的利益が侵害されたとはいえない。
(一、二につき補足意見、反対意見がある。)
参照法条
憲法
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
民法 (不法行為による損害賠償)
709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(条文は、現行表記による)
裁判所掲載全文はこちら↓
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120534667871.pdf