1993年にミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団を率いて来日した時には東京芸術劇場でその演奏を聴きました。
シューベルトの「未完成」とベートーヴェンの「田園」。
忘れることのない感動です。
チェリビダッケを聴く3度目のチャンスは、体調不良のため来日中止となってしまいました。
そして1996年、禅を理解し仏教徒でもあったチェリビダッケは、日本のお盆にあたる期間に息を引き取ったそうです。
1998年に発売されたブルックナー・チクルス(12枚組)を迷わず購入しました。
チェリビダッケの演奏は、簡単に言うと超スローテンポ。
それは、作曲家が書いた音符ひとつひとつをいとおしむような表現でした。
信奉者になってしまったら、どの演奏を聴いても素晴らしいわけです。
とりわけブルックナーの交響曲は、もうこれ以上の極みは考えられないくらいの演奏です。
クラシックファンの間で3大Bという言い回しがあって、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスのことです。
僕の中では、チェリビダッケを知ったことで、3大Bの3つ目はブルックナーです。
7、8、9番の究極の演奏を胸の奥に刻み付けましたから、僕はもう死を前にしても(たぶん)うろたえることはないと、本当にそう思い込むことができるほど、この体験は僕にとって重要なものでありました。
気仙沼にいても、どこにいても、この幸せが消えることはありません。 (10月14日)