今日は12時開演に向けて国立劇場に出かけました。歌舞伎座では通し狂言は珍しいのですが、秋の国立劇場は毎年通し狂言が上演されます。本日の演目は「天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)」。4世鶴屋南北作による人気狂言です。
江戸時代初期に実在した商人・徳兵衛が東南アジア諸国を渡って、その道程と風俗をまとめ、長崎奉行に報告したという実話に基づいて、南北が徳兵衛を妖術で日本転覆を企む謀反人として描きました。
主演の中村芝翫はまさにはまり役。天竺から帰国したばかりの船乗りとして、殿様の佐々木桂之介(長男の橋之助)の所望により呼び寄せられ、異国の珍しい噺を面白おかしく語ります。アドリブをたくさん取り入れ(昨日のワールドカップの話題まで)まさに芝翫の独り舞台でした。
父親から蝦蟇(がま)の妖術を譲り受け、大日丸(だいにちまる)を名乗る存在になると、一気に日本征服を目論む妖術使いになるという、まさに自由奔放な筋書きです。
蝦蟇に変身したり、将軍からの上使に化けて敵方の屋敷に乗り込んだり、最後は巳の年月日が揃った葛城(高麗蔵)の生き血を浴びて、蝦蟇の妖術が使えなくなったり、結果の出ないままに後日の再会を期して一同別れを告げるという尻切れとんぼのような結末でしたが、歌舞伎らしい見所の多い演目を楽しみました。