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ロシア・CIS・チェチェン

おいプーチン、チェチェンから撤退しろ!今ならまだ間に合うぜ by アンドレイ・バビーツキ

報告:「プーチンによる侵略戦争反対!」―戦争に反対する在日ロシア人らがアピール行動

2022年10月22日、東京・新宿において、「戦争に反対する在日ロシア人」らのアピール行動がありました。結集したのは、日本在住のロシア人、タタール人、そして彼らに連帯する日本人ら約15名で、ウクライナにおける戦争反対の思いを、日本社会に強く訴えました。2月24日に開始された戦争は、ウクライナ軍が反転攻勢する中、ロシアがウクライナ東南部4州を併合し、そこでは戒厳令が出されています。また、クリミヤ橋が爆破され、キエフなど数都市が空爆されています。他方、ロシア国内では部分動員令が出されて、反対運動が再燃する中、国外脱出する若者も少なくありません。

「戦争に反対する在日ロシア人」は開戦直後から新宿や渋谷で街宣行動を続けてきましたが、ウクライナ情勢の展開や世界経済への影響に伴い、コールやプラカードの種類が増えています。また、最近では周囲の日本人の注目を集め、この日は街宣の隊列に加わる人もいました。そこは国境を超えた、情報交換や意見交換の場にもなっています。「戦争のために危険をおかすのではなく、平和のために危険をおかすべき」「プーチンの戦争に協力するのではなく、動員拒否こそ勇気ある行動だ」「平和憲法をもつ戦後の日本人は、戦争に反対のはず。共に行動しましょう」など、様々な意見が出されました。以下、主催者のビラから転載します。

<主催者アピール>
日本に住む私たちロシア人は、様々な理由でこの国に来ています。異文化を受け入れたいと思った人、仕事のチャンスに恵まれた人、現在のロシア政府のイデオロギーに耐えられなかった人。今、ロシア政府によって始められたウクライナに対する酷い戦争はとても卑劣で、私たちはこの悲劇を黙って見ている訳にはいきません。

私たちロシア人は、この戦争を決して望まず、ウクライナ領のルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソンの占領も望みません。そして、占領地の住民投票は支持できず、認められません。自国民に自由で公正な投票を保障しない政府が、他国の領土を決して奪ってはいけません。

私たちは、ロシア政府の行動を非難しています。プーチンの独裁や行動と、一緒の括りで見られたくありません。私たちは、私たちが世界平和を願う同盟者であると世界に認識されることを望みます。

私たちは、ロシア連邦の領土にいる国民が、部分的に動員されるという、最近のニュースに恐怖を感じています。プーチンの演説は、国に対する利己的な権力を守るために行われた、情報操作に過ぎません。ロシア国民は、無意味な戦争のために捨てられる政府の駒ではなく、自分の命、家族、信念を持った人間なのです。動員発表以来、大規模な抗議行動が始まっています。私たちは、ロシア政府の行動に全面的に反対し、ロシアにいる親族、家族、大切な人たちを守るために立ち上がりました。

また、ロシア国民を擁護し、プーチン政権に反対して投獄されている、政治家アレクセイ・ナワリヌイの自由を要求します。現在、彼は弁護士と顔を合わせることすら禁じられており、二人の間のガラスにはテープが貼られ、顔を見ることすらできません。また、ナワリヌイは服のボタンを外し、「人の肉は戦争に使うべきではない」と発言したことで、常に理不尽な懲罰を与えられています。私たちは、彼のおかれた状況に、恐怖を感じています。

プーチンの人質である限り、彼の身は常に危険にさらされていることを、人々に知って欲しいです。私たちの抗議活動に参加し、協力してくれた、すべての日本国民に深く感謝します。表現の自由は、私たちの母国では否定されている権利です。日本では、平和的な抗議活動を行える。

私たちの感情を表現する自由を与えてくれたことに感謝しています。また、プーチンの軍隊として戦いたくないロシア人に、日本で難民資格が取得できることも要望しています。一人でも多くの命が救われるよう、どうかご協力をお願い致します。

【戦争に反対する在日ロシア人】 https://yasoprotivlenie.com/
【参加報告・編集・訳】佐藤和之(佼成学園教職員組合)



 

 

報告:「戦争反対!」「動員反対!」―在日ロシア人らが緊急行動

2022年9月24日、東京・渋谷のハチ公前広場において、ウクライナ戦争に反対する緊急集会が行われました。主催は「戦争に反対する在日ロシア人」で、首都圏在住のロシア人やタタール人、そして支援の日本人ら、約30名が結集。「プーチンは侵略と戦争犯罪を今すぐやめろ」と書かれた横断幕や、「兄は戦争に行かされた」などのプラカードを掲げ、「戦争反対!」「動員反対!」「ウクライナに平和を!」などと訴えました。足を止め、ともに祈り、涙する日本人の姿もありました。開戦直後から、「戦争に反対する在日ロシア人」は、世界各地のロシア人とも連帯しながら、繰り返し街頭で反戦・平和の声をあげています。今回の集会の呼びかけ文とアピールは次の通りです。

◆ロシアでは、動員が発表されました。すでに、全国で数千人が召喚状を受け取っています。彼らは、私たちの家族や友人です。プーチンは、自分の栄誉のために、彼らの命を犠牲にしたい。この栄誉は、彼の病んだ心の中にしか存在しない。この戦争を止めろ!

◆ウクライナ軍が領土をロシアの侵略者から、できるだけ早く解放することを願っています。住民投票をやめろ! 土地収奪をするな! 戦争反対! ウクライナに平和を! ロシアに自由を!

◆日本政府・外務省には、徴兵を拒否したロシア避難民の受け入れを、お願いしたいです。あるいは、第三国への移住を仲介・支援する法律を、制定して欲しいです。抗議デモに参加して政治的弾圧を受けているロシア人も、難民として受け入れて下さい。戦争のためではなく、平和のために危険をおかしているロシア人を、助けて下さい!

2月24日にロシア軍によるウクライナ侵攻が開始され、今も戦争は継続しています。そして、9月21日にロシアのプーチン大統領は、「部分的な動員を実施するための大統領令(部分動員令)に署名した」と、国営テレビを通じて演説を行いました。これは、「現役の軍人以外のロシア国民に招集をかけて、ウクライナとの戦いに参加させる」ことを意味しています。今回招集されるのは、軍務経験がある予備役30万人とされていますが、さらに今後、「総動員令」が出される可能性も否定できません。

現在ロシア連邦軍には約90万人が服務していますが、うち60万人弱が志願兵、残りの約30万人が1年の兵役にやってくる徴集兵で、毎年入れ替わる仕組みです。その結果、相当数の成人男性が、動員対象となり得ます。ロシアのショイグ国防相は、「ロシアには2500万人の動員リソースがあり、今回の30万人は1%余りにすぎない」と述べました。

2月の開戦時、ロシア兵19万人がウクライナに投入されました。その後、ロシア政府は、大規模な兵士の募集活動を行い、とくにシベリアやコーカサスなど貧しい地域から、兵力が追加されました。さらに8月、プーチン大統領は13万7000人を追加雇用する大統領令に署名しています。他方、ウクライナ軍の開戦時の規模は、現役兵が19万6600人でした。その後、ウクライナ政府は大規模な動員令を発令し、兵士の数を大幅に増やしています。さらに、外国からの義勇兵など、非正規戦闘員も加わっています。

現在、「部分動員令」による兵力の移送が開始される一方、ロシアからの脱出者が急増し、各地で抗議デモも再燃しています。また、プーチン大統領が核兵器の使用を示唆する中、9月23日-27日には、ウクライナ東南部のルガンスク人民共和国・ドネツク人民共和国・ザポリージャ州・ヘルソン州において、ロシアへの編入に関する「住民投票」が実施されました。情勢は急展開しています。日本からも反戦・平和の声をあげましょう!

【主催者Web】https://yasoprotivlenie.com/

【代理投稿・訳】佐藤和之(佼成学園教職員組合)

 

2022年9月24日、東京・渋谷のハチ公前広場において、ウクライナ戦争に反対する緊急集会が行われました。主催は「戦争に反対する在日ロシア人」で、首都圏在住のロシア人やタタール人、そして支援の日本人ら、約30名が結集。「プーチンは侵略と戦争犯罪を今すぐやめろ」と書かれた横断幕と、「兄は戦争に行かされた」などのプラカードを掲げ、「戦争反対!」「動員反対!」「ウクライナに平和を!」と訴えました。開戦直後から、「戦争に反対する在日ロシア人」は、世界各地のロシア人とも連帯しながら、繰り返し街頭で反戦の声をあげてきました。今回の集会の呼びかけとアピールは次の通りです。

 

◆ロシアでは動員が発表されました。すでに全国で数千人が召喚状を受け取っています。彼らは、私たちの家族や友人です。プーチンは、自分の栄誉のために、彼らの命を犠牲にしたいのです。この栄誉は、彼の病んだ心の中にしか存在しない。この戦争を止めろ!

◆ウクライナ軍がロシアの侵略者から領土をできるだけ早く解放することを願っています。住民投票をやめろ! 土地収奪をするな! 戦争反対! ウクライナに平和を! ロシアに自由を!

◆日本政府には、徴兵を拒否したロシア避難民の受け入れをお願いしたいです。あるいは、第三国への移住を仲介・支援する法律を制定して欲しいです。抗議デモに参加して政治的弾圧を受けているロシア人も、難民として受け入れて欲しいです。

 

 

2月24日にロシア軍によるウクライナ侵攻が開始され、今も戦争は継続しています。そして、9月21日にロシアのプーチン大統領は、「部分的な動員を実施するための大統領令に署名した」と、国営テレビを通じて演説を行いました。これは、「現役の軍人以外のロシア国民に招集をかけて、ウクライナとの戦いに参加させる」ことを意味します。今回招集されるのは、軍務経験がある予備役30万人とされていますが、今後招集は拡大される可能性があります。

 

現在ロシア連邦軍には約90万人が服務しています。うち60万人弱が志願兵、残りの約30万人が1年の兵役にやってくる徴集兵で、毎年入れ替わる仕組みです。ロシアのショイグ国防相は、ロシアには2500万人の動員リソースがあり、今回の30万人は1%余りにすぎないと述べました。

 

2月の開戦時、ロシア兵19万人がウクライナに投入されました。その後、ロシア政府は、大規模な兵の募集活動を行い、とくにシベリアやコーカサスなど貧しい地域から、兵力が追加されました。さらに8月、プーチン大統領は13万7000人を追加雇用する大統領令に署名しています。他方、ウクライナ軍の開戦時の規模は、現役兵が19万6600人でした。その後、ウクライナ政府は大規模な動員令を発令し、兵士の数を大幅に増やしています。さらに、外国から義勇兵も加わっています。

 

 

【代理投稿・訳】佐藤和之(佼成学園教職員組合)

 

 

報告:「ロシアの日」に在日ロシア人らが平和と自由をアピール

6月12日(日)14時から、東京・新宿駅東口において、「戦争に反対する在日ロシア人」らが、アピール行動を展開しました。結集したのは在日ロシア人、在日タタール人、日本人支援者ら約30名で、「ウクライナに平和を!、ロシアに自由を!」と、反戦・平和の意思や祖国の現状を日本語でアピール。今年2月に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻から、100日以上が経過しましたが、彼らは日本各地で、およそ月2回のペースで行動してきました。

そして6月12日は、ロシアがソ連邦からの独立を宣言した日で、1992年以降、「ロシアの日」という祝日となっています。ペレストロイカ期、ソ連邦構成共和国が次々と主権宣言・独立宣言をする中、1990年6月12日、ロシア・ソ連邦社会主義共和国でも国家主権宣言がなされました。さらに1991年6月12日、ロシア大統領選挙でエリツィンが圧勝し、同年12月26日、ソ連邦は正式に解体されました。

また、ロシアで戦争を「戦争」と表現すること自体が困難になる中、彼らはロシア国旗から血と戦争を表す赤を抜き、平和と正義を表す「白・水色・白」旗を考案し、国外在住ロシア人による反戦・平和運動のシンボルとしています。ちなみに、当日16時から、新宿駅南口では、在日ウクライナ人らも募金活動を実施しました。以下、ロシア語・英語・日本語でのビラやSNSから、主な内容を紹介します。

〔集会の呼びかけ〕6月12日は「ロシアの日」です。1990年のこの日、ロシアは独立国になりました。それから30年後の今、何を祝えばいいのか、プーチン大統領に聞きたいです。私たちの国が今、誇るべきことは何でしょうか?。戦争で殺された子供たちの人数?。壊された人生の数?。国家の世界からの隔離?。国民の貧困?。それとも、数百万のロシア人が感じる数世代にわたる気持ち、すなわち絶望と挫折?。この戦争はもう100日を超えました。ロシア人は戦争に反対!。ロシア人は世界平和と平和なロシアを願っています!。

〔配布ビラから〕<一緒に戦争を止めよう!>。世界中の人々が、何故この戦争が始まったのかを理解しようとしています。ロシア人もこの戦争を望んではいませんでした。今まで何十年にもわたって何万人もの人々が、当局に対し公正な選挙を求めてデモ等の行動をしてきました。結果、多くの人が逮捕され、あるいは国を去ることを余儀なくされ、もしくは自分の主張をする機会そのものを失いました。プーチン時代の過去20年間、ロシアでは様々なことが起きました。政府・メディア・企業が独裁者の支配下にあるとき、一般市民が平和的な抗議で何かを変えることは非常に困難です。ロシアにおける反戦デモの逮捕者は、1万5千人を超えました。

〔プラカードから〕ニュースでは、「ロシア軍のウクライナ侵攻に対する、ロシア国民の支持率は74%」とされています。しかし実際は、世論調査に応じる人は10人に1人です。協力を断った人の数は、最終結果に含まれていません。また、ニュースでは、「ロシア国民は政府に賛成だから何もしない」とされています。実際、今ロシアにいる人は、「戦争反対」とはっきりとは言えません。しかし、ロシア国内では目に見えないあらゆる反戦活動が存在します。例えば、武器の鉄道輸送を阻止する活動、反戦のグラフィティを描いたりポスターを貼ること、「Z」マークを乗用車やバスから外す行動などです。ですから、偽りの情報を信じないで下さい。偽りの情報を共有しないで下さい。プロパガンダに協力しないで下さい!。ウクライナに平和を!。ロシアに自由を!。

【主催者インスタグラム】

https://www.instagram.com/ya.soprotivlenie/

【参加報告・編集・訳】佐藤和之(佼成学園教職員組合)

報告:「戦争に反対する在日ロシア人」らが東京・新宿で反戦・平和をアピール

5月28日(土)午後、東京・新宿駅前において、「戦争に反対する在日ロシア人」らが、アピール行動を展開しました。結集したのは在日ロシア人、在日タタール人、日本人支援者ら約30名で、2時間にわたって反戦・平和の思い、あるいはプーチンが支配するロシアに対する思いを日本語でアピール。今年2月に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻以降、彼らは日本各地で、およそ月2回のペースで行動してきました。また、ロシアで戦争を「戦争」と表現すること自体が困難になる中、彼らはロシア国旗から血と戦争を表す赤を抜き、平和と正義を表す「白・水色・白」旗を考案し、国外在住ロシア人による反戦・平和運動のシンボルとしています。以下、ロシア語・英語・日本語でのビラ・SNS・発言から、主な内容を紹介します。

[集会の呼びかけ]5月9日の対独戦勝記念日に、ロシア国内では125人が逮捕されました。約37人がモスクワの地下鉄で逮捕され、ほぼ全員が顔認識カメラで身元を掌握されました。戦争反対の活動をするロシア人に対し、警察訪問や家宅捜索が行われています。人権活動家や著名人が、些細な容疑で拘留されています。大勢の著名人が、ロシアから移民しました。「世界に平和を」というポスターを持つだけで、反戦デモの参加者は罰金を課されます。逮捕された人は、警察署で暴行されています。ロシア国内で反戦活動をすることは、とても勇敢で貴重な行為です。その方々を、サポ-トしましょう。戦争反対!

[配布ビラから]<ロシアでの反戦デモ逮捕者1万5千人超、反戦デモなど参加告発の刑事事件146件、反戦デモ参加者に対する罰金総額3800万円>。世界中の人々が、何故この戦争が始まったのかを理解しようとしています。ロシア人もそれを予期していなかった。数十年にもわたって数万人が、プーチン政権に対して、公正な選挙のためにデモなどをしてきました。多くの人が逮捕され、国外へ逃げ、自分の意見を表明する機会を失いました。政府・メディア・企業が独裁者の支配下にあるとき、一般市民が平和的な抗議で何かを変えることは非常に困難です。

[主催者SNSから]私たちが日本に住んでいる理由は、異文化への興味・関心、仕事の都合、家族、現在のロシア政府への抵抗など様々です。今回、ロシア政府がウクライナ領内で始めた戦争に対して、私たち在日ロシア人は黙ってはいられません。

私たちロシア人は、祖国を愛しています。愛国心とは「平和的な国際関係」「他国の人々との経済的、科学的、文化的な繋がり」、そして「お互い人間的な関係を築きたい」という願いであると信じています。ロシアはこうすることで世界から理解され、繁栄することができるのです。それは、「戦争をすること」でもなく、「街を破壊すること」でもなく、「人を殺すこと」でもありません。

ウクライナには多くの親戚や友人がいます。私たちは、ウクライナ領内での侵略戦争の即時停止を要求し、ロシア政府の行為に断固として反対します。虐殺者ではなく、友人や同盟者であり、平和的で人間的な関係を築くことが私たちの望みです。

自由と未来を賭けて挑んでいるロシアのデモ参加者に、敬意と感謝を捧げます。戦争が必要だと訴える政権に対し、「No to War」をスローガンに掲げ、その旗の下、私たちは平和的に街へ繰り出しましょう。また、抗議活動に参加し、平和的な反対意見表明、抗議行動をする機会を与えて下さった日本の協力者の方々に、深く感謝を申し上げます。この表現の自由こそが、私たちが祖国で奪われた権利なのです。

【主催者インスタグラム】https://www.instagram.com/ya.soprotivlenie/

【参加報告・編集・訳】佐藤和之(佼成学園教職員組合)

 

ロシア軍のウクライナ侵攻弾劾、軍事ブロックNATOの拡大反対

ー 世界の平和勢力と連帯して闘おう!

 

開戦前夜に何があったか

昨2021年11月、ロシアがウクライナとの国境近くに大軍を集結させた。米国情報機関は、17万5000人を動員した、ロシア軍によるウクライナ侵攻の可能性を指摘。これに先立つ10月末、ウクライナ軍は、同国からの独立をめざす東部のドンバスの親ロ派勢力に対し、初めてドローン攻撃を決行していた。12月8日、緊迫化した情勢をうけ、バイデン・プーチン両大統領の会談がオンラインで実施される。内容は非公開だが、サリバン大統領補佐官によると、バイデンはプーチンに、「ロシアがウクライナに侵攻した場合、アメリカは強力な経済措置を取る」「クリミア占領を阻止できなかった、2014年の制裁よりも厳しい内容になる」と、伝えたという。他方、プーチンはバイデンに対し、「ウクライナをNATOに加盟させないこと」「ウクライナにミサイルなどを配備しないこと」を要求。プーチンは、「ウクライナにNATOのミサイルが配備されれば、5分でロシアを攻撃できる」と語っている。

2022年1月10-13日、さらに米国・NATOとロシアとの協議が開催された。米国・NATOは、「NATOに加盟するかどうかは、ウクライナ自身が決めるべき問題」だという理由で、「NATO不拡大の約束」を拒絶。プーチンは、「ウクライナをNATOに加盟させない法的保証を得る」という目標を達成できなかった。そして2月18日、ロシアは「ウクライナ軍の攻撃が激化して危険だ」との名目で、ドンバスから住民の避難を開始させる。欧州安全保障協力機構(OSCE)によると、1日1000~2000件の銃撃が発生。それゆえ、女性・子ども・高齢者を中心に、6万人の住民がロシア領に避難した。

続く2月21日、プーチンは、「ドネツク、ルガンスクでジェノサイドが起きている」と主張し、親ロ派勢力が支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認。同時に、「平和維持軍」の派兵を決定し、未明にはロシア正規軍が行動している。だが、ウクライナ政府と国際社会は独立を認めておらず、この時点で、「ロシア軍のウクライナ侵攻」が決行されたことになる。さらに2月24日、プーチンは「特別軍事作戦」の実施を決定し、テレビ演説で明らかにすると同時に、ウクライナの東部・南部・北部(ベラルーシ国境)の3方面から、全面侵攻が開始された。その後の戦況は割愛するが、開戦後約1カ月の死者数は、民間人約1000人(国連)、ウクライナ軍約1300人(政府)、ロシア軍7000~1.5万人(NATO)と、推定されている。

「NATOの東方拡大」をめぐって

この戦争は、ロシア側の暴挙であり、即座に停戦・撤退すべきだ。すでに2月28日から、停戦協議が繰り返されている。ウクライナ側の主な要求は、①即時停戦、②ロシア軍の撤退であり、ロシア側の要求は、①ウクライナの「中立化」「非武装化」「非ナチ化」、②クリミア半島でのロシア主権の承認、③東部2州の独立承認が柱である。このうち、ウクライナ側の要求は当然だが、ロシア側の要求については読み解く必要があるだろう。そのポイントは、「NATOの東方拡大」と、「マイダン革命」以後の情勢である。

1990年に東西ドイツが統一する際、東ドイツ駐留のソ連軍を撤退させるために、米国ベーカー国務長官がソ連のゴルバチョフ書記長に「NATOを東に拡大しない」との約束をしたが、条約化はされていない。そして1991年、ソ連邦崩壊とともに、ワルシャワ条約機構(WTO)は解体される。ただし翌年、ロシア・ベラルーシ・アルメニア・カザフ・タジク・キルギスは、集団安全保障条約(CSTO)を締結した。他方、北大西洋条約機構(NATO)は存続し、1999年以降、WTOメンバーだった東欧諸国とソ連を構成していたバルト3国が加盟していく。その後、ジョージアやウクライナもNATO加盟に意欲的となり、ロシアは警戒心を強めていった。

ところで、1994年にウクライナは、「ブダペスト覚書」を交わすが、条約化はされていない。これは当時、ウクライナ・カザフスタン・ベラルーシにおかれていた核兵器をロシアに集め、ロシア・アメリカ・イギリスは核放棄した3国の独立・領土保全・武力の不行使・核兵器の不使用を保障するといった内容である。ところがプーチンは、2004年の「オレンジ革命」による革命政権に「ブダペスト覚書」は適用されない、と2014年に表明していた。アメリカ・イギリスは今回、「ブダペスト覚書」の規定通りに、国連安保理に行動を要請しただけだ。なお、ゼレンスキーは2月19日、ミュンヘンでの国際会議で、「ウクライナは、ブダペスト覚書が機能しないなら、1994年の包括的な決定の効力は疑われると信じる権利がある」と発言した。プーチンはこの発言を根拠に、「ウクライナは核兵器を開発する可能性がある」と主張している。

「マイダン革命」とクリミア併合

 2013年11月、親ロ派のウクライナ大統領ヤヌコビッチは、「欧州連合協定」の調印を棚上げにした。その直後、プーチンはウクライナに150億ドルの支援と、天然ガス価格の値下げを約束している。これに親欧米派の民衆が激怒し、キエフで大規模デモが連続的に発生。ベルクト(警察特殊部隊)など治安当局と、民族主義武装組織「右派セクター」や全ウクライナ連合「自由」などユーロ・マイダン派が衝突し、双方に死傷者を出した。2014年2月22日、身の危険を感じたヤヌコビッチは、キエフを脱出しロシアへ亡命。「革命」によって、親欧米派の新政権が誕生した。直後の暫定政権を経て、5月の大統領選ではポロシェンコ、2019年にはゼレンスキーが選出されている。

 この「マイダン革命」には、ヌーランド米国務次官補などネオコンや、ジョージ・ソロス財団の関与が明らかとなっている。また、バイデンの息子ハンター・バイデンは、父親が副大統領だった当時、ウクライナのガス企業の幹部に就任している。当時の大統領オバマは、騒乱が落ち着くと、「我々の勝利」を宣言した。なお、2014年5月2日、オデッサにある親ロ派の「労働組合会館」を、「右派セクター」に扇動されたサッカーファンが襲撃し、48人を虐殺するという事件も発生している。

  キエフで発生した政変に対し、ロシア系住民が多い南部のクリミア州では、ロシア軍が展開する中、3月16日の住民投票で、ロシアへの編入が決定された。クリミアのセヴァストーポリ市には、「ロシア黒海艦隊」が存在する。ロシアはヤヌコビッチ政権と、「2042年まで黒海艦隊を駐留すること」で合意していたが、親欧米派の新政権は、米軍やNATO軍を入れる意志を示していた。それゆえ、プーチンはセヴァストーポリを併合する必要があったのだ(ウクライナ政治におけるクリミアからの親ロシア票は失った)。これに対し、ウクライナ政府と国際社会は、ロシアのクリミア編入を承認せず、経済制裁を課している。

ドンバス戦争

さらに、ロシアと国境を接する東部のドネツク州・ルガンスク州では、親ロ派勢力が州庁舎などを占拠した。2014年4月、彼らは「ドネツク人民共和国(DPR)」と「ルガンスク人民共和国(LPR)」の建国を宣言。ドネツク州460万人のうち230万人がDPRの支配地域に、ルガンスク州240万人のうち150万人がLPRの支配地域に居住している。ただし当時、ロシアは積極的に動いてはいない。これは、クリミアに比べて安全保障上の価値が低く、編入した場合の財政負担と見合わないからだろう。当然、ウクライナ政府もドネツク・ルガンスクの独立を承認せず、親ロ派勢力との間で内戦が勃発した。

このドンバス戦争は、マレーシア航空機撃墜事件など、紆余曲折を経て2015年2月に、ドイツとフランスの仲介により、「ミンスク2停戦合意」が成立する。この内容の核心は、東部2州に高度な自治権を認める点にあるが、外交権も含まれるため、ウクライナのNATO加盟にとっては桎梏となる。結局これは履行されずに戦闘が続き、2022年2月21日、ロシアは独立を承認すると同時に、合意の破棄を明言した。この「破棄」自体は、ロシアにとって不利だが、数日後のウクライナ全面侵攻で、世界はプーチンの異常な決意を見せつけられることになる。

ドンバス戦争は、親ロ派武装勢力とウクライナ軍との戦いが軸だが、そこに義勇兵・傭兵・私兵らが加わっている。親ロ派側にはロシアが物的・人的な支援をしており、軍事会社ワグネルなども関わっている(最近ではチェチェンの首長カディロフの私兵も投入された)。ウクライナ側には義勇兵が加わっており、オリガルヒに支援されたアゾフ大隊などは、後に連隊として国家警備隊に昇格した。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、2014年-21年のドンバス戦争に関連する死者を、13,100-13,300人としている。その内訳は、民間人3,375人以上、ウクライナ軍兵士約4,150人、親ロ派武装集団約5,700人である。

反戦・平和運動の国際的高揚

2022年2月24日、在日クライナ人らが急遽SNSで呼びかけ合い、渋谷ハチ公前広場に結集し約100人が反戦を訴えた。それまでも、ロシア大使館への抗議行動などはあったが、予想を超えた情勢の急展開に、参加者は不安と怒りを隠せない。それでも、ウクライナ国旗や手書きのプラカードを手に、日本語や英語で、「戦争反対」「ウクライナに平和を」などと声をあげた。続いて、26日の集会は約2000人、3月5日のデモは約4000人が結集。在日ウクライナ人だけでなく、ベラルーシ人、ミャンマー人、香港人、日本人、そしてロシア人らも参加。この過程で、以前からあった「在日ウクライナ人の会」とは別に、運動体「Stand with Ukraine Japan」を立ち上げた。

日本の市民団体が主催する、反戦運動も各地で続いている。とりわけ、プーチンが核兵器使用の可能性を口にし、ロシア軍がチェルノブイリ原発やザポリージャ原発を占拠すると、「核戦争反対」「原発を攻撃するな」と激しい抗議の声があがった。労働組合の影は薄いが、それでも「ウクライナへの軍事侵攻に抗議します!」(連合)、「ロシアのウクライナへの軍事侵略に強く抗議し、直ちに撤退を求める」(全労連)、「ロシア軍のウクライナ侵攻を糾弾し、直ちに戦争停止を求める」(全労協)といった声明を出している。日本共産党も社民党も、ロシアに抗議する声明を出したが、れいわ新選組は国会決議に反対し、その理由を声明で述べている。すなわち、「大きく分けて2つの対立する勢力の、どちらかに加勢する立場を日本が取れば、ロシアと対立するもう一つの側とみなされる」というものだ。

世界に目を転じよう。国連緊急特別総会は3月2日、「ウクライナに対する侵略」を非難する決議を、賛成141・反対5・棄権35で採択した。反対したのは、ロシア・ベラルーシ・北朝鮮・エリトリア・シリアで、棄権したのは、中国・インド・イラン・キューバ・カザフスタン・南アフリカ・ベトナムなど。経済制裁には、アメリカ・EU・イギリス・カナダ・日本・韓国が参加。各国から義勇兵がウクライナでの戦闘に合流する一方、日本からは、政府が1億ドルの緊急人道支援を決定し、駐日ウクライナ大使館が約15万人計40億円の寄付を受けた。ウクライナからの避難民は1000万人を超え、日本も受け入れを開始している。

世界各地で反戦運動が高揚しているが、なかでも注目すべきはロシア国内の動向だ。まず3月17日、全ロシア世論調査センターによると、「特別軍事作戦」に関し、支持74%、不支持17%、分からない9%となっている。開戦以来、支持が漸増している一方、情報統制と厳しい弾圧の下で、反戦デモは止むことがない。ロシアの人権団体によると、3月13日時点で、デモは60都市以上で発生し、拘束者は1万4千人を超えた。ただし、ロシア独立労組連合(FNPR)は、「プーチン大統領とロシアの政治的、軍事的リーダーシップの措置を支持する」と表明し、ロシア労働連盟(KTR)は、「敵対行為の早期停止、平和的対話の再開およびロシアとウクライナの多国籍国民間の共存の必要性に信任を表明する」という曖昧な態度だ。

反戦・平和運動をめぐる論争

ユーラシア諸国出身者の在日コミュニティが、深刻な対立に陥っている。まず、「特別軍事作戦支持」のロシア人が、「戦争反対」のデモ参加者への暴行と、とくにロシア人の顔写真を連邦保安庁(FSB)に送付する行動を呼びかけた。実際、動画などで反戦を唱えていた、若いロシア人が委縮し始めている。また、「特別軍事作戦支持」のロシア人は、ウクライナ人らによるロシア大使館前抗議行動を近くで罵倒し、日本の市民団体のオンライン集会にも乱入し中断に追い込んだ。インターネット上はさらに酷く、「戦争反対」声明に対する誹謗中傷コメントや、SNSでのヘイト発言も多い。筆者のロシア語SNSでも、ウクライナ現地や避難先を含め、各地から様々な意見が出され、しばしば激論となっている。テーマは、プーチンの蛮行への非難、ファシストを容認したゼレンスキー政府への批判、双方のフェイク報道への指摘、戦争を止められない国際機関への絶望、世界の平和運動への感謝などだ。

最後に、日本の運動圏での議論を、簡単に見ておきたい。第1に、国旗の問題がある。国旗はナショナリズムの象徴なので、反戦デモに持ち込むべきではない、といった議論である。まず、世界のデモに国旗が登場することは多いが、日本では左派が日章旗を持ち込むことはない。ウクライナ国旗の場合、被抑圧民族の団結の象徴という側面もあると思うが、それでもナショナリズムに変わりはない。ちなみに、反政権派の象徴となった「白赤白旗」を掲げたベラルーシ人は、「ウクライナが羨ましい。なぜなら、民主的な選挙で選ばれた大統領が、民衆と一緒にたたかっているから」と言った。

第2に、「NATOの東方拡大」にも反対すべきか、といった議論である。反対すべきという論者は、ドンバス戦争を含め、米ロ対立が背景にあるという認識だ。それに対し、あくまでロシア軍の侵略戦争に反対すべきという論者は、国際法を重視する。ロシアによる東部2州の独立承認と集団的自衛権の行使という論理には無理があり、国連憲章違反だと批判する。米国の対イラク戦争(2003年)やNATOによるコソボ紛争でのセルビア空爆(1999年)にも問題はあるが、ロシア軍の侵略戦争とは切り離して論じるべきだという。

第3に、非暴力闘争の問題がある。まず、ゼレンスキーは市民にも戦闘を呼びかけ、成人男性の国外退避を禁じ、希望者には武器を配布している。しかし、ジュネーブ諸条約は、戦闘員と非戦闘員は区別すべきだと規定した。非戦闘員(民間人)は保護しなければならない。だが、非戦闘員と非正規戦闘員(義勇兵・傭兵・私兵)とは、実際の戦場では区別されない。国家指導者が「市民よ銃をとれ」と言ったら、敵は誰でも戦闘員として撃つ。また、「停戦合意」が成立した場合、正規の指揮命令系統に制御されにくい彼らは、「停戦合意破り」を繰り返す可能性が高い。他方、ヘルソンなどロシア軍の被占領地域では、非暴力の抗議デモや不服従の抵抗運動が報告されている。日本の運動圏では、戦争に駆り立てる「ゼレンスキー政権打倒」を提唱する者も少なくない。反戦・平和運動の在り方が問われている。