【最速面白ライブレポ】笹祭(笹口騒音の3バンド w/内田万里、Khakiなど)@西永福JAM | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。



今日は泣く子も笑顔になる笹祭!🥳🎋
最速面白ライブレポを召し上がれ😋🎶
(貼り付けている動画は過去のものです)

★16:30〜 NEW OLYMPIX 2 (STAGE)


ホワイトストライプスさながらに、登場したのは、笹口騒音さんと謎の美女ドラマーの二人組! NEW OLYMPIX 2の2とは、1期から2期になったことと、メンバーが二人組であることから取られているのだろうか。また、ベーシストがいないのにベース並みの低音が響いていたのだけど、あれはエフェクターなどによる工夫なのだろうか。

……などと考えていたら、ライブ中に笹口さんのMCから飛び出したのは、「ニューオリンピックスはいろいろあって二人になりました」との言葉。えっ?と驚倒した。ギター森岡さん、ドラムのツガネさん、ベースの大内ライダーさんはいずこへ? 続報を求む。

笹口さんがYAOAYの名義だった時代の曲の中で気になっていた「ピクシーズ」が聴けて良かった! 日常と社会の下世話な風刺からおごそかな深淵に届く幽玄な歌メロとボーカルの質感に吸い込まれそうになる。ドラマーの女性の方も音にクリアカットな明快さがあって頼もしい。

★17:00〜 & 18:10〜の2ステージ 根本快(LOUNGE)


👆笹口さんの曲のカバー。

torontoというバンドのフロントマンの根本さん。第一期うみのてのラストライブにも観客として行っていたそう。僕がいたあの場に彼もいたのだ。torontoは少ない音数の中で音楽の密度がギュっと濃い精巧さがあって素晴らしいバンドなので、みんな聴いてくれ。今日の根本さんソロによる荒井由美「卒業写真」のカバーも良かったです。

★17:25〜 内田万里(STAGE)


ふくろうずの内田さん! やっぱり素敵で、今日のライブは僕の心にしっかりと刻まれた。刻もうと意識する前に刻まれていた。

スピッツに「僕の天使マリ」という曲があるが、この日はまさに「みんなの天使マリ」だった。フロアを華やいだ明るい空気で満たしたり、悲しい曲ではしっとりとしたバイブスに観客を引き込んだりするムードメーカーの素質が内田さんにはある。しかし、それだけではなく、真実の一端を射抜くような本質的な表現であることが内田さんの音楽をますます価値あるものにしている。そう、内田さんの鍵盤弾き語りは世界を作り、世界を語っていた。

最初の「ごめんね」(ふくろうず時代の代表曲の一つでもある)から僕はノックアウト。熱いような冷ややかなような、どっちつかずのテンションの内田さんがつむぐ真摯な歌。観客のリクエストに応えた「サタデーナイト」も良かったな。

そして、笹口さんをゲストに迎えた「砂漠の流刑地」が白眉だった。笹口さんとのかけあいの多少のたどたどしさも含めてドラマチックだったし、一つの風景だった。(あと、内田さんのMCで笹口さんの格好がオシャレだと笑顔で言っていたくだりがツボだった。"アンダーグラウンド"なオシャレとも形容されて笹口さんはしきりに照れていた。)

★18:35〜 うみのて(STAGE)


どんなテーマでも歌にする笹口さんの音楽。表現に対する真摯な姿勢はいつだって僕を勇気づけてくれた。人間には知的負荷の少ない方向へ行こうとする傾向性があるが、今日も演奏した うみのての「テトリ(キッ)ス」の曲にあるように、Feel(感じろ)だけではなくThink(考えろ)と訴えるからこそ、笹口さんの音楽は素晴らしい。

ライブ動画だと、同じ時間に一つの視点でしかステージアクションを観れないが、ナマのライブの良いところはメンバー全員の良いところ(悪いところも)を見られるところ。今日もうみのてのメンバーは皆、輝いていた。円庭さんによる鉄琴の凛々しい音を、ムルアイさんの高ぶるエレキギターのエモーションを、キクイさんの温かいアタック感のドラムを、あきもとさんのピッタリと張りつくベースのグルーヴを感じてほしい。

ワタナベさんが今日もMOTHER Tシャツを着ていた(MOTHERはよーよーも大好きな奇妙でおもしろいそしてせつない RPG)。Fade Tシャツを着ている観客がナイスなように、MOTHER Tシャツを着ている演者がナイスなのは確定されている(よーよー調べ)。ツボを外さない安定感のあるギターがカッコいい。

「RAINBOW TOKYO」は照明の色も相まって虹のような美しさを音楽がたたえていた。その後の「一般人」は光のように疾走して輝くロックなグルーヴを感じた。

ラストに演奏された「UMINOTE LAST TRAIN」はリスナーの僕らをどこに連れていくのだろう。ヘロヘロでグダグダなMCとそれさえも笑いに変える笹口さん。それとは打って変わってロックの未来を確かな目で見つめる笹口さんに舵取りの頼もしさを感じ、僕はロックの未来をそこに見た気がした。(シンのロックを感じて考える笹口さんはいつだってロックの未来だ。)

★19:30〜&20:40〜の2ステージ 小棚木もみじ(LOUNGE)


歌心、ここに極めまれり。牧歌的な感じかと思いきや「優しい人から死んでいく」という歌詞に象徴される明け透け感や、ダイナミクスの振り幅の凄まじさなど、挑戦的なアコギ弾き語り。確固とした小棚木ワールドを音と歌で作り出していた。

彼女の音楽が気になった方は、彼女が歌っている"のっぺら"というバンドも聴いてみてほしい。あと、笹口さんが監督した『VR笹口』という映画でも好演しているのでそちらも是非!


👆『VR笹口』ラッパーの呂布カルマの怪演やジョニー大蔵大臣(水中、それは苦しい)の落語も見れる。なんと曽我部恵一さんも出演!

★19:55〜 Khaki(STAGE)


王道ではなくオルタナティブに発達した僕の脳みそによくフィットする音楽。音の美しい輪郭、強靭なグルーヴにただ身と心を委ねればいい。よくできた不条理劇を見終えた後のような謎の達成感があった。

古着屋ファッションだったり、モッズっぽいセミフォーマルな服装だったり、彼らの身体の揺らし方だったり、統一されていないメンバーのそれぞれのたたずまいの世界観からしてロック。長髪のボーカルの二人は若い頃のストーンズのようだった。終盤の曲での絶唱に彼らの心の形を見た思いがした。

21:05〜 笹口騒音オーケストラ(STAGE)


小棚木さんをゲストに迎えた「地球の店員」が特に素晴らしい! この曲のイントロは、笹口さんの代表曲の一つ「SAYONARA BABY BLUE」のような憂いと切なさのある音色のアコギストロークだけど、悩みから吹っ切れたようなサッパリした風通しの良さも感じる。

「THE MAN WHO…」もバリ良かった。ちょっとしたBeirut味を感じるような、猥雑さの中で人間模様を描くのはクストリッツァ監督の『アンダーグラウンド』(笹口さんもオススメの名作)さながら。

今日のライブで笹オケはバリエーションに富んだ様々な曲を披露していたが、カトー直喜さんとNAPPIさんによるホーンセクションは、ああ、川の流れのよう。大林いくおさんと雨ノ地晴太郎さんによるリズム隊は、ああ、地の恵みのよう。僕はアラフォーだけど良い音楽をシャワーのように浴びてぐんぐん育っていく。

紅一点の西山小雨さんがベリーキュート。西山さんのソロでは「未来へ」という曲がオススメです。なんといっても胸を打つ歌唱が素晴らしい。おごそかでスケールの大きな曲でありつつ、かゆいところまで手が届く細やかな作りの佳作です。

アンコールでは今日は他のメンバーに予定があったために参加できなかった太平洋不知火楽団の新曲(「ロ(ッ)クでな(お)しブルース」)を笹口さんがソロで披露。文化と社会を風刺する手つきは邦楽界隈で無二の鋭さだ。

アンコール二曲目の大ラスでは、「たとえば僕が売れたら」を笹オケ+今日出演したボーカリストで歌唱&演奏。とても楽しいひとときだった! 表現と音楽の最前線への挺身ぶりは、笹口さんが随一だ。笹口さんと彼の仲間たちの音楽が売れて広まることを祈っています。

笹祭2023.2.26.@西永福JAM
16:30〜 NEW OLYMPIX 2 (STAGE)
17:00〜 根本快(LOUNGE)
17:25〜 内田万里(STAGE)
18:10〜 根本快(LOUNGE)
18:35〜 うみのて(STAGE)
19:30〜 小棚木もみじ(LOUNGE)
19:55〜 Khaki(STAGE)
20:40〜 小棚木もみじ(LOUNGE)
21:05〜 笹口騒音オーケストラ(STAGE)