あいみょん『瞳へ落ちるよレコード』感想&レビュー【4つの魅力】 | とかげ日記

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●あいみょんが持つ4つの魅力

変わらず邦楽界最前線のシンガーソングライター"あいみょん"の2年ぶりのニューアルバム。

以前に彼女の作品をレビューした時も高い評価をしたけど、彼女の作品が良くなったのか、それとも彼女の作品に対する僕のリテラシーが鍛えられたのか、今作はとりわけ素晴らしく聴こえる。(Jポップアカ界隈の皆さんのおかげて何が良い"うた"なのか見極める力が少しはついたというのもあるかなと思う。)

僕の考えるあいみょんの魅力を4つの項目で書いていこう。

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①歌唱が良い!!
まず、どの曲も歌いこなす歌心を感じる。声量もあるし、伸びも良い。YouTube番組『THE FIRST TAKE』によって多数の歌うまシンガーが世間に広まる中でも、彼女の歌声の魅力はあせない。

また、繊細な表現もできる。声色の使い分けが精細で多彩なのだ。ウェルメイドだったりあけすけでざっくばらんだったりするポップスでもキまっているし、R&Bやシティ・ポップでもソウルを感じられて映える歌声。その表現力は他者の追随を許さない。

②サウンドが良い!!
ポップスにしては楽器隊の演奏にプレイヤビリティや味わいを感じる。一般的にポップスはあくまでボーカルが前面に出て主役なケースが多いが、ロックは楽器隊がボーカルと同等の主張をするケースが多い。それを考えると、あいみょんの音楽はポップスとロックのあいのこなのかもしれない。そして、僕が彼女の音楽に惹かれるのはそれが理由の一つなのだろう。

③ソングライティングの妙
メロディとリズムには既聴感は比較的無く華があるし、歌詞も日常的だったり、内省的だったり、気づきに満ちていてこなれた内容だ。

特に#6「3636」が白眉だ。曲中に「宅配ボックス」いう歌詞があるのを含めて日常感があって素敵だ。曲名は暗証番号のことだそうだ。彼氏さん、彼女の心の宅配ボックスを開けてくれ。



④ただずまいや姿勢がナイス
(1)性
9月9日(金)深夜24:20よりテレビ朝日系で放送される「タモリ倶楽部」のラブホテル特集にあいみょんがゲスト出演するらしい。(そういえば、あいみょんの彼氏である尾崎世界観さんのバンド"クリープハイプ"の曲にも「ラブホテル」ってあったな。)

人間的に生きるための一つの環境として、性に対してオープンかつ誠実な社会が必要だと僕は思っている。昔は誠実ではなかったかもしれないが、性について今よりもオープンでおおらかな側面が社会にあった。現在進行している、性の話題を遠ざけ続けることによる潔癖症な社会では子作りもされにくいだろう。

もちろん、現在も過去とは違う側面においてはオープンとも言える。バラエティ番組で藤田ニコルが女性向けAVについて話していたいたり、蛙亭のイワクラ(♀)が女性相手の風俗に行っている話をしたり、過去には考えられなかったことだ。(ちなみに、蛙亭の二人は神聖かまってちゃんファンらしく、僕は何となくの親近感を抱いている。)これを嚆矢として性についてオープンに語れる文化が根付いてほしい。性やエロを曲に取り込む手つきが素晴らしいのは笹口騒音(うみのてetc)さんが筆頭だが、あいみょんもそれに続くだろう。

本作『瞳へ落ちるよレコード』にはこんな歌詞の曲もある。

白のパンツを
青春と名付けて被ってしまった
青く波打つ海が見えた気がした

白のブラジャーを
若気の至りと被ってしまった
ピンクのあの華に手が届く気がした

(#10「神秘の領域へ」)

歌詞中にあるとおり、なんとも若気の至りな歌詞だ。だが、これくらいあっけらかんと性に触れて歌われるのは、可能性を感じる。そう、僕たちは様々な分野において、先人たちが拓いた言葉の地平上を歩んできたのだ。

(2)毒

活動初期からある毒づきも#12「インタビュー」を始めとして本作でも健在だ。おそらくインタビュアーに対する毒づきなのだろうが、辛辣かつ的確で的を射ている。同曲には実際のインタビュー風の生声も聴こえてきて臨場感たっぷりだ。この毒づきは、パパラッチに対して強烈に毒づいたRADWIMPS「PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~」を僕に想起させた。

漂白された無味無臭かつ無毒で性的要素の無い音楽よりも、毒も間違いもあるし性に開かれていて生命力のあるジャングルのように冒険のワクワク感がある音楽の方が好きだ。その点でもあいみょんの音楽はポップスであると同時にロックで魅力的なのだ。
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あいみょんは本作のタイトルの由来について「人の黒目ってレコード盤っぽいなと思って。瞳にコンタクトを入れるみたいに、瞳にレコードを落として体の中で響いたら面白いなと思います」と語っている(Apple Music)。彼女の目に映るものについて、彼女は自然体の全身で鳴らしているのだ。

一曲目の「双葉」では、「君の夢の中へ/遊びに行くからね」という歌詞がある。また、ジャケット写真ではレコードの形をしたプールで女性たちがくつろいでいる。それらと同じように、音楽というプールや、音楽が創り出す夢の中で目一杯楽しもう/楽しんでほしいという姿勢が本作の随所から感じる。

本作は間違いなく今年の邦楽ポップスで五指に入る佳作だ。これからも聴き込みます。











Score 9.1/10.0

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