あいみょん『瞬間的シックスセンス』アルバムレビュー&感想 | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。少数派のための、あるいは、少数派への優しさを持った多数派のための音楽。



●良い印象を持っていなかった僕がファンになるまで

正直に言うと、僕はあいみょんに良い印象を持っていなかった。

あいみょんはバックサウンドもボーカルも小綺麗で、すごく作り込まれていると感じていた。良質な「うた」であり音楽なのだけど、その作り込みが僕にとっては嘘くさく感じちゃうんだよな。小綺麗なサウンドで「生きる」ことや「死ぬ」ことを歌われても切実じゃないんだ。

僕があいみょんへの考え方を改めたのは、公表されていた神聖かまってちゃんの"の子"があいみょんへ書いた手紙を読んだのがきっかけだった。





の子からあいみょんへの手紙。の子の手書きの文字は汚くてww、パソコンで清書されてやっと読める。

そして、手紙の内容がとてもいい。闇の部分を表現できてこそ、本当の人間であると。僕もあいみょんをじっくり聴いてみようかな、そう思い立った。

その後、あいみょんの「君はロックを聴かない」を聴いた。あいみょんが幅広い支持を得る理由は、ロックを聴く側の人間でありながら、王道のポップスを歌っていることにあるのだと思った。

ロックもポップスも、サブカルもメインストリームも、王道も邪道もどちらにも理解ありますよというスタンスが、それらで分断されがちなリスナーを統合して広範な支持を得るのだと僕は考える。あいみょんの戦略は、今の時代で広い支持を得る上で最適解だと思う。

そうして、本作『瞬間的シックスセンス』を聴くに至る。

名曲ばかりで、笑いしか出ない。今の時代は、過去に作られた良曲で飽和していて、なかなか新しい良曲が出てこない時代だと思っていたが、あいみょんの本作は良曲で埋め尽くされている。

人が気持ち良く感じられる歌メロは限られている。良い歌メロを作っても、過去の誰かの作品と類似していて、お蔵入りということが多いのが現在だろう。しかし、あいみょんの本作は、新しい良い歌メロは探せばまだあるのだということを教えてくれる。

#1「満月の夜なら」の隙間の多いサウンドから聴こえるあいみょんの濃密な歌。性的なメタファーの歌詞は、スピッツの「ハチミツ」と近いものを感じる。
#2「マリーゴールド」のエバーグリーンな名曲感。オススメ!
#3「ら、のはなし」のあいみょんを身近に感じられる歌詞の親近感。
#4「二人だけの国」。シティポップ風サウンドのイントロを経て念仏のように平坦に歌うAメロから、起伏の富んだBメロとサビを迎えて高揚感を覚えるアイデア。
#5「プレゼント」のアコギのクリーンな響きが聴こえるAメロでタメて、コーラスも聴こえるサビで祝福しながらプレゼントを渡すこの感じ。そのプレゼントも、「溢れそうな泉」だったり、「弾けそうなガラス」だったりして、一筋縄ではいかないのがあいみょんらしい。幾千年も前からこうして愛や涙を作っているという歌詞には、RADWIMPSと近いものを感じた。神を身近に感じる視点というか。
#6「ひかりもの」のピアノで落ち着く安心感。
#7「恋をしたから」のアコースティックな弾き語りの醸し出すセンチメンタリズム。
#8「夢追いベンガル」のアッパーさに、リスナーの僕も励まされる。「セックス・ピストルズ」という歌詞が出てきて、やっぱりあいみょんはロックを聴く子なんだなと思う。
#9「今夜このまま」も刹那の感情が切ない大名曲だ。オススメ!
#10「あした世界が終わるとしても」。歌詞の主人公は自分の守り方を知り、今度は「君」を守ろうとする。その気持ちの純粋さと力強さに胸打たれる名曲。オススメ!
#11「GOOD NIGHT BABY」は、一番Aメロのギターのカッティングが小気味よく、二番以降も音楽の仕掛けがたくさんあって、サビのレガートに歌われる良メロディに感動できる名曲。性欲のことをこんなに爽やかに愛の歌として描けるのはあいみょんしかいないのでは? オススメ!
#12「from 四角の角部屋」には、ナマな生活感がある。吹奏楽器もヤケクソに鳴ったりしていて…。

あいみょんの凄いところは、2010年代的な感性を持ちながら、その歌は90年代以前の歌を好きな世代にもストレートで胸に響くところだ。90年代の古き良き黄金期J-POPのメロディにも負けない色あせないメロディの良さ、誰が聴いても上手いと感じさせる歌唱、過不足のないアレンジがそうさせているのだろう。

あいみょんの音楽の作り込みは、嘘臭い小綺麗な欺瞞ではなく、音楽への誠実さの表れであることを知った。アルバムを通して聴いて、僕はすっかりファンになってしまった。次の作品にも期待しています!

評価★★★★★