サカナクション『アダプト』感想&レビュー【アクションし続けるバンド】 | とかげ日記

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●コロナ禍でもアクションし続けるバンド

セールスと実験性を両立させるサカナクションが放つ渾身のニューアルバム。「セールスと実験性を両立させる」という点では日本のRadioheadといえるだろう。なお、このアルバム『アダプト(適応)』は後に発表される『アプライ(応用)』と対になるコンセプトアルバムであるとのこと。

アルバム全体を通して音が良く、#1「塔」#6「エウリュノメー」のインスト曲もスルスル頭に入ってくる。Wikiによると、エウリュノメーとはギリシア神話の女神や女性の意味のことらしい。神話のように俗世から離れてミステリアスなサウンドに脳みその側坐核と前頭前皮質が活性化される。

#2「キャラバン」は彼らの過去曲でいうと、「マッチとピーナッツ」のような立ち位置の曲だと思う。ミドルテンポで繰り返すメロディに旅をしている気分にさせられる。

#3「月の椀」#8「フレンドリー」は、サカナクションの初期エレクトロニカ路線を彷彿させる曲。しかし、2022年の今の音にアップデートしていてモダンで美しい。



#4「プラトー」はメロディ、歌詞、サウンドにサカナクション流の夜のロマンティシズムが結実した名曲でオススメです。



#5「ショック」は日本の80年代歌謡曲のエッセンスを散りばめながらホーンセクションが華やかなファンクソングであり、僕がこのアルバムで一番推したい曲だ。



フェラ・クティやトーキングヘッズから受けたこの曲への影響がメンバーへのインタビューで語られているが、確かにアフリカのリズムやワールドミュージックからの影響を感じる。

個人的にこの曲はアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「ブギー・ワンダーランド」を僕に想起させる。突き抜けた大衆的なポップネスとリズムの切れ味抜群のファンクネスを聴けるという点では「ショック」と通じているものがあると思う。

また、歌謡曲も日本人にとってはアイデンティティに刻まれたルーツミュージックといえるだろう。最近のJ-POPシーンの歌謡曲回帰を見ていると、歌謡曲や80年代回帰の時代がまた来るといち早く気づいたサカナクションと山口一郎さんは慧眼だと思う。

#7「シャンディガフ」はど直球のメロウな歌もの。晩酌して寝るという行為を抒情感たっぷりに歌ってみせる。

#8「フレンドリー」の歌詞は"正しさ"や"左右"がテーマになっていて、それは政治思想のことだとも解釈が可能だ。"正しい"と"正しくない"、"左"と"右"で揺れる曲の主人公に、どっちつかずの自分も共感を覚える。

こうして見ていくと可能性に満ちた様々な曲があることに気づかされる。僕はブログ(『とかげ日記』)の説明欄に「王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行」と書いているが、まさにそれを地で行くアーティストがサカナクションだ。次の作品も期待していますよ!

Score 8.1/10.0

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