2015年にドラムが無期限休養になり、今年はギターが活動休止におちいった満身創痍のRADWIMPS(ラッドウィンプス)がリリースしたメジャー8枚目、通算10枚目の渾身のスタジオ・アルバム。
フロントマンの野田洋次郎さんは自身のツイートで炎上したり、「HINOMARU」という曲では左派ネット界隈がざわついてこれもまた炎上したり、毀誉褒貶あるアーティストだ。しかし、流布されているイメージに左右されずに虚心坦懐に聴いてみれば彼らの作品の豊かさが分かるだろう。
アルバムタイトルの『FOREVER DAZE』は"永遠の揺らめき"という意味だそうだ。花から花へ蜜を吸いにいく蝶のように、一つの場所に留まらない彼らの姿勢を端的に示している。それは、バイオグラフィー(活動履歴)にしても、音楽性についても言えることだ。
それでは、各曲を簡単に見ていこう。
オープナーの#1「海馬」。武田祐介さんのベースがブイブイ脈打つのが気持ち良いミステリアスで深みのある曲だ。タイトルに「海馬」とつけるセンスは、デビューシングルに「25コ目の染色体」と名づけるセンスの延長線上にあると思う。生命の神秘と「君」との関係がシームレスにつながるセンスは彼ら独特のものだ。
#2「SHIWAKUCHA」。女性歌手・ラッパーであるAwich(エイウィッチ)をフィーチャリングに迎えた曲だ。野田洋次郎さんの誠実で実直な歌声が、切実で本格なAwichのラップとシンクロする。
#3「匿名希望」。海外のラップ音楽であるトラップを研究して作られたのではないかと思うダークで明け透けな曲。
#4「TWILIGHT」は前曲と打って変わってスケールの大きく真っ直ぐな曲。ColdplayやワンオクロックがEDM化した時のような明るい祝祭感に満ちている。
#5「桃源郷」は炭酸を飲んだ時の爽快感のようにスカッとするアップテンポナンバー。
#6「夏のせい」は快晴の太陽の下で学校のプールにたたずむような開けた空気感のある曲。間奏で金管楽器が入ってくる箇所の開放感は筆舌に尽くしがたい。僕はこれから先もこの曲を聴くと2021年の夏を思い出すのだろう。
#7「MAKAFUKA」はストリングスが印象的でインスピレーション(≒霊感)があふれる名曲。
#8「Tokyo」はシンガーソングライターのiriをフィーチャリングに迎えたチルな曲。アリシア・キーズの弾き語りの映像を見て音楽を志したというiriの歌心がキラリと輝いている。
#9「うたかた歌」。菅田将暉をフィーチャリングに迎えたオーセンティック(≒真正)な歌もの。ザ・ファーストテイクで歌っても、映えそうな曲だと思う。
#10「犬じゃらし」。過去に配信リリースされた「猫じゃらし」のオーケストラアレンジ。このアレンジの良さは「猫じゃらし」を超えたのではないかと思う。サビで没入感のある、よーよーおすすめの曲です。
#11「グランドエスケープ」。映画『天気の子』で使用された曲をセルフカバー。スケールの大きさに羽が伸びていくような開放感があり、メロディも美メロでこの曲もおすすめです。
#12「かたわれ」。「君」がいない喪失感を歌った歌。優しい歌声とシンプルなアレンジが心に沁みます…。
#13「鋼の羽根」。野田さんが存在理由(≒レーゾンデートル)を高らかに歌いあげ、筆者の僕も「僕」という意味が欲しいので共感する。ぼんやりとした不安にさいなまされる僕も、揺るぎないものが欲しいのだ。
アルバムラストの#14「SUMMER DAZE 2021」。重みのある表現の曲が多かったこのアルバムのトリを務めるのは、軽やかで清々しい四つ打ちナンバー。自分の抱える全ての問題や悩みが昇華されていくのを感じる。
こうして本作『FOREVER DAZE』を見ていくと、歌として一本筋の通った歌ばかりであることが分かる。ソングライターとしての野田さんの才能は偉大だ。
そして、本作を聴いていると、青い春の恋を歌ってきたアーティストが大人の成熟した愛を歌っているように殊更感じるのだ。『RADWIMPS 4〜おかずのごはん〜』で甘酸っぱい恋を歌っていた時と比べると隔世の感がある。『FOREVER DAZE』というアルバムタイトルのとおり、揺らめき続け、変わり続ける彼らをこれからも応援したい。
Score 8.2/10.0
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