瑛人「香水」
TikTok発のヒット。アコギ1本に歌というスタイルでチャートを制した。チャートの歴史をよく知らないから分からないけど、90年代以降で前例はあるのかな? ピアノと歌だと森山直太朗「さくら」があるけど…。
メロディも良いが、歌詞で聴かれるタイプだろう。自称クズの"君といたい"という本音。本音に含まれるイノセンスは、RADWIMPSの歌詞を連想させる。
瑛人「香水」の主人公が彼女と付き合っていたのは3年前まで…。"君"は付き合っていた頃、ドルチェアンドガッバーナの香水をいつもしていた。今、"君"に会ってみると、"君"はタバコを吸い始めたりして3年前から変わってしまっていた。それでも、そばにいると、今も"君"がしているドルチェアンドガッバーナの香水の匂いで付き合っていた時のことを思い出す…。
Tik Tokを使うピュアな若者にウケそうな歌詞だ。瑛人「香水」と同じく、RADWIMPSが若者にウケたのも、そのピュアな側面が理由の一つだろう。
ただ、この歌と違うのは、RADWIMPSは"自分はクズだから"と開き直っていないところだ。
瑛人「香水」には以下の歌詞がある。
でもみてよ今の僕を
クズになった僕を
人を傷つけてまた泣かせても
何も感じ取れなくてさ
この本音の吐露があるからこの曲は泣けるのだろうが、その自分を責めて自身を変えようとする姿勢が無いことには共感しない。
話は変わるが、ホンネ(本音)と日本の大衆文化の歴史について、TVOD『ポストサブカル焼け跡派』を参考にしながら以下に書いてみる。TVODの二人はRADWIMPSに対しては批判的なスタンスだろうけどね。
80年代のビートたけしの芸風は、ホンネの面白さをお茶の間に広めた。彼に影響された芸人や有名人(電気グルーヴ、浅草キッド、伊集院光など)は90年代以降、タテマエを嫌い、ホンネを言うスタイルで人気を博した。
そして、ゼロ年代以降、ホンネを言う面白さに吸い寄せられた2ちゃんねらーの一部やネトウヨが広めてきた"それは偽善だろう"という露悪的な視点を打ち破る歌をRADWIMPSは歌っていると思う。
ラッドは本音の中にある善性を強く打ち出す歌を歌ってきた。リアリズムのしんどさと闘いながら、愛にできることはまだあると歌う姿勢にリスナーは強く惹かれ続けてきた。
何もない僕たちに なぜ夢を見させたか
終わりある人生に なぜ希望を持たせたか
なぜこの手をすり抜ける ものばかり与えたか
それでもなおしがみつく 僕らは醜いかい
それとも、きれいかい
答えてよ
愛の歌も 歌われ尽くした 数多の映画で 語られ尽くした
そんな荒野に 生まれ落ちた僕、君 それでも
愛にできることはまだあるよ
僕にできることはまだあるよ
RADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」
ラッドの「PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~」は、僕がラッドの中でスゴい詞作と思う曲の一つです。
なにほざけ 盗撮、盗聴、尾行、張り込み
好きなだけやりたい放題 天誅下したつもりかね
してやったり顔が見え見えで
気持ちがね どうにもこうにも悪い
あんたらはどれだけ立派な人生なんだ?
どのツラさげてんなことしてんだ
倫理に反したあんたらが
なに「不倫だ、不純だ」言ってんだ
国家権力にゃヘコヘコします 弱いものイジメが板につきます
あんたの子供の頃の夢はまさか それじゃなかったよな?
前にブログにも書いたけど、有名人やアーティストの女性問題、男性問題は報じることによる社会の利益があるのか疑問です。
ラッドのこの歌はゴシップ誌の痛いところを突いている。本音で批判しているからこそ、ここまで攻撃性のある歌詞になっている。
RADWIMPS(味噌汁's)の「ジェニファー山田さん」には以下の歌詞がある。
俺は誰より俺を 君は誰より君を
だけど分かり合いたいの 俺は誰よりも君と
「ナルシストは君の方だろ」と歌っている邦楽バンドがいたが、そのソングライターに聴かせてあげたい歌詞だ。本音では自分は誰よりも自分が好きだけど、誰よりも君と分かり合いたいというのも、また本音なのだ。これほど核心を突いた愛の歌があるだろうか。
ラッドはゼロ年代の自分を支えてくれた大切なバンドだ。
音楽的に好きなアーティストは数多くあれど、心の拠り所になるアーティストは数えるほどしかない。
ラッドには感謝しています。
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