ビッケブランカ『Devil』感想&レビュー【豊かな音楽だが、歌詞がつまらない】 | とかげ日記

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●プロフェッショナリズムの極致の音楽だが、歌詞はつまらない

ポップ職人ビッケブランカによる3rdアルバム。

どの曲にもプロフェッショナリズムを感じるきめ細やかさがある。#8「Save This Love」#9「Heal Me」ではEDMに挑んでいるが、海外の第一線のEDMと比べても遜色のない出来栄えに感嘆する。

曲調はバラエティに富み、リード曲の#2「Shekebon!」や、話題になった#3「Ca Va?」など、ファンク色の強い曲もある。「Ca Va?」は、冒頭はシャンソンだけど、そこからファンクになる驚きソング。このアイデアが形となって、中毒性のあるポップソングになっていることに驚く。

#4「TARA」のようなバラードや、#5「白熊」のようなミッドテンポのポップソングもあるし、#6「Black Catcher」のような、アニメとタイアップしたのもうなずけるヒロイックなアップテンポのポップソングもある。かと思えば、#6「かたうた」のようなピアノ弾き語りの小品もあって、一息つける隙もある。

今のメジャーシーンでこれほどポップで音楽性が豊かな曲を書けるソングライターは彼とヒゲダンの人しかいないのではないかと思う。個人的には、この2組はあいみょんよりも良い曲を書くと思う。ビッケブランカはヒゲダンと並んで注目されるべき存在です。

全てのアレンジを一人で考え、演奏もしているというから、音楽性は全く違うが、現代ポップ版中村一義といったところか。

しかし、中村一義と違ってメッセージ性の密度が薄すぎるし、歌詞に詩的なものを感じない。アルバムタイトルは『Devil』なのに、ありきたりの、当たり障りのないことしか言わない歌詞。僕はそのあたりがつまらない。

ただ、歌詞の言葉遣いはこなれているし、拙いものではないんですよ。この歌詞でも感激できる人はいるだろう。しかし、僕は音楽性だけではなく、歌詞にも深さを求めてしまうので、この歌詞ではつまらないのです。

ただ、最後の曲#11「Avalanche」の歌詞は面白かった。Avalancheとは雪崩の意味。「夢を見る者たち 全てを飲み込んで」いく雪崩があっても、「あきらめぬ者たち 全てに幸あれ」と歌うのが、ただ諦めるなと歌うのではなく、ひとひねりしてあって良かったのだ。ありきたりといえば、ありきたりだけどね。

まとめると、音楽性はプロフェッショナリズムの極致だし、一人でこの音楽を全てこなすのは天才だが、歌詞が面白くなかったという感想です。僕は歌詞も重視するので、彼の音楽は一部を除いて当分聴かないかな。何が歌われているのかということも、テキスチャー(楽曲の全般的な響き)と同じくらい、僕にとって重要なのです。あと、僕はもっとオルタナティブな音楽が好みだしね。ただ、「Ca Va?」だけは、ナンセンスで面白いので長く聴き続ける予感がします。

Score 7.0/10.0