【ライブレポ】大笹祭(笹オケ,うみのて,太平洋不知火楽団,NEW OLYMPIX) | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。
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今夜は笹口騒音関連バンドが勢ぞろいする大笹祭! それぞれのバンドが平成の代表曲をカバーするという目玉もあるし、僕はこの日を楽しみに待っていた。

一番手は笹口騒音オーケストラ! 新曲も良かったし、ナマで聴く「NEW MUSIC. NEW LIFE」は沁みたなぁ。アコーディオンを弾く西山小雨さんが天使にしか見えない。ナンバーガール「鉄風鋭くなって」のカバーも良かったよ! ヒリついて殺伐としたナンバーガールを多幸感バンドの笹オケがカバーするという意外感。MCでも笹口さんが言っていたけど、ホーンセクション入りでカバーしたのは、笹オケが全宇宙史上初ではないでしょうか!



二番手はうみのて。前回の大笹祭には出演していたキクイマホ(Dr),円庭鈴子(Key, 鉄琴)が諸事情により出演できなく、つまり、うみのて第1期からはメンバーはフルチェンジのうみのて。今回の新しいサポートメンバーは、笹口さんが「最近みてビビっと来た若者たちをセッソウなくスカウトしまくりました」とのこと。

うみのてヤングチームの演奏、素晴らしかったです! 本日のベストアクトでした。特に、音楽にエクスペリメンタルな要素を加え、足下にエフェクターをずらりと並べたギターの村井さんの腕前が神!(でも、アンプの前にいるせいか、村井さんの音量が少し大きめな感じはした) Radioheadのカバーから始まり、代表曲の「Words Kill People」や、なぜか曲中に長渕の乾杯を歌う鬼気迫る「東京駅」を織り交ぜ、エキセントリックなショータイムでした! 新曲の「レイシスト」もベースリフが印象的で、歌詞も挑発的な良い曲でした。

うみのては美しい過去として終わらせるべきだと言っている方がいた。美しい過去で終わらせず、うみのてを再始動させた笹口さんの今の視点を僕は信じています。そして、笹口さんの未来への視線も信じています。あなたが美しい過去に浸っても、うみのてが別物になったとしても、それでも物語は続いていきます。

「あのー」や「なんか」とMCで言うことが多いので、封印しようとした笹口さん。それでも、「あのー」や「なんか」を連発して笑いを誘う。だけど、「意識しているのと意識していないのでは違うんですよ。『グリーンブック』が言っていることもそういうことでね」と言うMCに僕は心を動かされた。(このライブレポはよーよーの少ない記憶力で書いてますので、正確な文言は違うかもしれませんが、言っていることの大筋として読み取ってください。)



三番手は太平洋不知火楽団! 「そうだ、海へ帰ろう!!」「たとえば僕が売れたら」「Dancing Hell」など、代表曲をノイジーなギターと共にカマしてかっこいい。「Dancing Hell」はいつものことながら、お客さんも大盛り上がり。今日演奏した、歌に訴求力のある「ADHD」と「売春歌」は新たな代表曲になるだろう。H Jungle with Tの「Wow War Tonight」のカバーも、途中でテンポアップしたりするなど、意表を突くアレンジで良かったです。



トリはNEW OLYMPIX! 「NO MUSIC. NO DANCE」で観客を踊らせ、新曲「NO TOKYO」で熱いピアノを聴かせ、最後の「?(BIG QUESTION)」では有無を言わせぬ勢いで観客を圧倒。村井さんよりもソリッドな森岡さんのギターも素晴らしい。今回からベーシストが大林いくおさんではなく、大内さんになったけれども、不知火楽団の身体を大振りに動かす大内ライダーを観ているから、身体ではなく指だけ動かす大内さんを観るのは新鮮でした。ウルフルズの「サムライソウル」のカバーは気迫がこもっていた。笹口さんの結婚相手である円庭さんへの気持ちもこもっていたのかな。



ところで、僕は「表現」に関心がある。自分の言葉とメロディで歌うこと、自分で楽器を演奏することは、その人自身の表現だ。僕は表現を通して、その人の魂に触れたい。魂という言葉は陳腐だけど、敢えて使う。ザラついていたり、柔らかったり、膨らんでいたり、熱かったりする、その人自身の魂に触れたいんだ。

「僕が言いたいことってあまりないと思うんです」とうみのてのインタビューで語っていた笹口さん。だけど、彼の魂の在り方は、触れるように伝わってくる。彼の魂の形はいびつで不気味だけれども、まっすぐで美しい。あのキッチュな笑いや、Spotifyで言うところのEXPLISIT(露骨で明白)な表現には笹口さんにしか出せない味がある。今夜のアンコールのソロ「さくら(毒唱)」は、笹口さんのEXPLISITでアンビバレント(両義的)な魂が刻印されていた。



演奏者を代えればいくらでも代替可能な音楽が多い昨今において、彼にしか鳴らせない音楽であり、表現であるという点において、笹口さんは稀有な音楽家であり、表現者だと思う。彼の音楽がもっと評価され、聴く人が増えれば、音楽業界も変わるかもしれない。僕はそこに一縷の望みをかけて、これからも彼のバンドを応援し続けたい。