Yves Tumor(イヴ・トゥモア)『Safe In The Hands Of Love』感想 | とかげ日記

とかげ日記

【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。





●内面が見える音楽

ピッチフォークで高得点、雑誌『MUSICA』でも洋楽の月間ベストに選ばれるなど、国内外で注目されている作品。

僕はアーティストの内面が見える音楽が好きだ。自己の内面をこれまでかというほど吐露するような音楽が好きだ。

本作はIDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)の意匠を用いて、憂鬱にメロウに内面を表現している。ファッションメンヘラではない、ガチのメンヘラ音楽だ。しかし、分裂症的な偏執さは感じなく、洗練された美しさをまず感じる。ジェイムズ・ブレイクのようにビートをいじりつつ、ソウル・ミュージック的な意匠も感じ取れる。ジェイムズ・ブレイクほど歌は上手くないけど。それほど歌が上手くないのに自分が歌を歌っているところからも内面を見せていることがうかがい知れる。そして、トリップポップやインダストリアルなどのロックのフィーリングもある。僕の好きな、内面を吐露するタイプのロックの現在進行形の音楽がイヴ・トゥモアの音楽だ。

本作を聴くと、主流から疎外されている者の音楽という気がして…。学校でいうと、クラスの人気者から遠く離れて一人音楽に打ち込む人間…。このフィーリングに共感する。僕もオルタナティブな表現しか出来ないし、王道ではなくオルタナティブな作品により惹かれる人間だから。でも、こういう生き方って孤独なんだよね。本作でも孤独と孤独だからこそ愛されたいというフィーリングが表現されていて、僕の琴線は波打つように共鳴する。本作の孤高さに孤独は常について回る。群れなすことができない者の魂の叫びの音楽だ。

アヴァンギャルドなんだけど、ポップでもあって、そのバランス感覚が良い感じで聴きやすい。また、何にもカテゴライズされないし、様々なジャンルにカテゴライズできるような、ジャンルを横断する自由さがある。あえて言うなら、ジャンルは「イヴ・トゥモア」その人自身だろう。自分の内面を表現するために、あらゆるジャンルの本質を継ぎ合わせて自分の音楽にしている。尖った音楽が好きな方は是非。







Score 8.1/10.0