Pale Waves『MY MIND MAKES NOISES』感想&レビュー | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。





●キャッチーだけど明るいだけ

2018年、キラキラしたギターポップやシンセポップが聴きたいなら、Pale Wavesを聴け! 彼女達のデビューアルバム『MY MIND MAKES NOISES』はどの曲を取ってもキャッチーなポップ万華鏡。ただ、どの曲も4番打者のため、キャッチーなのだけど1番打者や2番打者がいない金太郎飴な感じも。

MVを観ると、女性ギターボーカルのヘザー(Heather Baron-garacie)と女性ドラマーのシアラ(Ciara Dran)のゴスっぽい格好に目が行く。ゴスの格好をして、キラキラしたギターポップを演奏する、このギャップに萌える。だが、他の二人の男性メンバーがゴスの格好をしないことが、中途半端に見えてしまう。

最後の曲「Karl」はアコギの弾き語り曲だ。アコギ一本でも感じ入ってしまう、曲の骨格のたくましさ。そう、Pale Wavesはどの曲も骨格がたくましいのだ。だからこそのキャッチーさ。このソングライティングの才能と能力が枯れなければ、今後もヒットを飛ばし続けることができるだろう。

レーベルの先輩であるThe 1975のメンバーのマシュー・ヒーリーとジョージ・ダニエルがプロデュースした「Television Romance」という曲もあり、The 1975とPale Wavesに共通するこのエレクトロニックなキラキラ感こそが、2010年代の社会や文化の明暗のうちの「明」を象徴するのでしょう。

ただ、僕はこの「明」の音楽にリアリティを感じられなかった。その音楽に「明」も「暗」も感じられるザ・キュアーの影響を受けているといえども、Pale Wavesはその表層しかなぞっていないため、「明」だけの音楽に聴こえる。僕は「暗」が含まれていない音楽には共感することはできない。Pale Wavesと音楽性がよく比較されるウルフ・アリスには音楽に屈託があるが、Pale Wavesに屈託は感じられない。

きらびやかなニューウェーブが流行した80年代にも、仄暗い情熱で自身の内面と社会をえぐったザ・スミスというバンドがいた。ザ・スミスにはリアリティを感じるが、Pale Wavesにはリアリティを感じられない。2010年代のザ・スミスはどこにいるのだろうと、僕は今日もSpotifyを検索し続ける。











Score 6.6/10.0