頭痛 あれこれ -7ページ目

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 認知症の予防・治療の原則は、ミトコンドリアの機能を改善させ、ミトコンドリアを弱らせる要因を取り除き、「抗酸化物質」・抗酸化食品を積極的に摂取することです。
 ミトコンドリアは「生命のエネルギー工場」と呼ばれ、エネルギーを産生する重要な場所です。ミトコンドリアの働きの悪さは、新陳代謝やエネルギー代謝など代謝の低下を意味します。
 偏った食事は、ミトコンドリアの働きを悪化させ、新陳代謝やエネルギー代謝が円滑に行われなくなります。
 このエネルギー代謝を円滑に行うためには、食生活でとくに栄養素・ビタミン・ミネラルを過不足なくバランスよく摂取することが大切になります。
  それでは、バランスのよい食事とはどのようなものなのでしょうか。


バランスのとれた食事とは・・・


 医者や栄養士はよく、バランスのとれた食事が大切であると言います。しかし、これほどあいまいに使われている言葉はありません。バランスのとれた食事が大切であると言う医者や栄養士自身が、それが実際にどのような食事を指すのかが分かっていないのです。 具体的な指示を出さずに、どうして患者に食生活の改善を指導することができるでしょうか。それでは口先だけのきれいごとになってしまいます。「バランスのとれた食事」とは、どこまでも具体的な内容によって示されるべきものです。
 具体的に言えば、ビタミンやミネラルなどの必須栄養素・食物繊維・薬理効果の高い植物栄養素を十分に含み、オメガ3とオメガ6の摂取比率が適正で、抗酸化栄養素・解毒栄養素・酵素をたっぷり供給できる食事のことです。しかし、こうした栄養学的条件をすべてクリアした食事を栄養学理論に基づいて組み立てようとすると、それがいかに難しいことであるかがすぐに理解されます。あまりにも諸条件が複雑に入り組み、現実にどのようにメニューを立てたらよいのか分からなくなってしまうのです。現代栄養学の理論を忠実に実践しようとすればするほど、食事の組み立ては困難をきわめ、絶望的になってしまいます。


伝統的な日本料理・長寿村の食事をモデルにした「食事」


 栄養学の理論が分かっても、それを実際の食事改善に結びつけるのは容易なことではありません。「必須栄養素を満たす」という1つの条件だけにしぼって考えてみても、その難しさは十分に理解されるはずです。一定のカロリーの枠内で、50種類もある必須栄養素を過不足なく摂取できる食品の組み合わせを、短時間に、しかも毎日計算できるような人はいないでしょう。10種類くらいの必須栄養素なら、何とか理論どおりの食事の組み立てはできると思うかもしれませんが、実際にメニューをつくってみると、すぐにカロリーの枠を超えてしまいます。まして50種類もの必須栄養素や食物繊維・酵素などを完璧に満たそうとすれば、毎日毎日、家畜なみに穀類や野菜を食べ続けなければならなくなってしまいます。「正しい食事」は人間を健康にし、「悪い食事」は人間に病気をもたらします。私たちの食事が正しいものかどうかは、それを続けた結果に反映されるのです。つまり人々の健康状態は、それまでの食事が正しかったか、間違っていたかを示す指標と言えます。こうした発想から、食事療法のヒントを探ってみましょう。

 
伝統的な日本食への注目

 

 現代栄養学が始まった頃、欧米の栄養学の研究者は、伝統的な日本人の食事に注目しました。なぜなら日本は欧米と肩を並べる先進国でありながら、国民の平均的健康状態が飛び抜けて高かったからです。ここで対象となった日本人の食事とは、現代人が一般に食べているようなものではなく、50年以上も前の日本人の食事のことです。日本の伝統食についての研究の結果、さまざまな栄養学的事実が明らかにされることになりました。我が国の伝統的食事の中でも、特に刺身や多種類の発酵食品・大豆食品に関心が集まりました。
 そしてこれらが、日本人の健康と長寿を支えてきた大きな要因であることが突きとめられたのです。
 今や欧米では、「日本食は健康によい」という認識が定着しています。そのため、鮨・刺身・豆腐・納豆といった伝統的な日本食が、海外で大流行するようになっています。多くの外国人が豆腐ステーキを食べ、すしバーにせっせと足を運んでいます。
 ここに食生活の1つのヒントがあります。つまり食事療法の具体的モデルとして、「伝統的な日本食」を考えてみるということです。
 (伝統的な日本食とは、昭和30年以前の食事のことです。)

 
長寿村の食生活

 

 また日本人全般という大きな単位ではなく、「長寿村」という特定の狭い地域に注目しても、食事と健康の明確な関係を理解することができます。日本各地には昔から、長寿村として知られる村々が点在していました。そうした中で最も有名な長寿村が、山梨県の棡原です。(現在の山梨県北都留郡上野原町)
 長寿村という名前が示すとおり、そこでは90歳、100歳を超える老人たちを至るところで見ることができました。さらに驚くべきことは、その年寄りたちの健康レベルの高さです。かつての棡原では、80歳を超えた老人であっても畑仕事を日課とし、特別な病気で苦しむようなことはありませんでした。寝たきり老人は1人もなく、老人ボケや、糖尿病に代表される成人病とも全く無縁でした。年寄りたちは亡くなる直前まで普通に暮らし、ある日、眠るがごとく息を引きとっていました。まさに大往生という言葉がピッタリの、安らかな死を迎えていたのです。
 これまで棡原は、多くの研究者によってさまざまな角度から研究されてきました。その結果、棡原の人々の優れた健康状態と長寿の要因の1つが、村人の日常の食事にあったことが明らかにされました。
 しかし戦後、バス路線の開通にともない“陸の孤島”の生活は一変しました。 村の若者たちの食生活はたちまち西洋化されたものになり、それと同時に、以前には存在しなかった現代病・成人病が急増するようになりました。村人の食生活は、伝統的な食事を続ける年寄りと、加工食品や洋食などの現代的な食事をする若者に分かれ、中年層の短命化が目立ち始めるようになってきました。 やがて棡原は、かつての長寿村の面影を完全に失うことになってしまったのです。
 この棡原における出来事は、私たちが食事療法を考えるに際して、重要なヒントを与えてくれます。健康と長寿が当たり前だった当時の棡原の人々と同じような食事をするならば、彼らのような健康と長寿が得られる可能性があるということです。そして間違った食事を続けるなら、すぐに病気で短命化するということなのです。

 
伝統的な日本食・長寿村の食事こそが、食事療法の基本

 
 伝統的な日本人の食事と、長寿村の食事が、現実的に高い健康レベルをもたらしてきました。したがって、こうした食事をモデルにして真似ることが、そのまま食事療法の基本になるのです。そして驚いたことに、日本の伝統食や長寿村の食事は、現代栄養学が明らかにした科学的な理論と多くの点で一致しているのです。つまり私たちが、かつての日本食や長寿村の食事をモデルにして、これにならう努力をするなら、個々の栄養学理論についてあまり神経質に考えなくても、結果として理想的な食事を組み立てることができるのです。日本の伝統食や長寿村の食事を真似ることによって、大半の条件を満たす食事をつくることができるのです。

 
 20世紀の人類に病気をまん延させてきた欧米型の食事の特徴は、肉・油・砂糖・加工食品が極端に多く、野菜が少ないというものです。高タンパク・高脂肪・高カロリー・低食物繊維・低ビタミン・低ミネラルが間違った食事の特徴です。それに比べ、よい食事のモデルである昔の日本食や長寿村の食事は、見事なまでに正反対なのです。欧米型の食事の最も対極にあります。肉料理・油料理・加工食品はめったに食卓にのぼることはなく、多種類の野菜が日常的に摂られてきたのです。

 
食事療法の基本とは

 
 「伝統的な日本食」と「長寿村の食事」をモデルにして、これに近づけていくことが食事療法の指針になります。ただ単に昔の伝統食を真似るのではなく、現代栄養学の最新の科学的知識を応用して、伝統食の利点を引き上げた、さらに強力な伝統食でなければなりません。こうした観点から、食事療法の具体的な方向性について見ていくことにしましょう。伝統的な日本食や長寿村の食事を真似てこれに近づけるためには、具体的な食事療法の指針が必要となります。 

 その指針とは、次の10のポイントにまとめられます。


   1) 加工食品・インスタント食品をできるだけ減らす
  2) 脂肪・油をできるだけ減らす(オメガ3を摂る)
  3) 肉・乳製品・卵を摂らないか、ごく少量にする
  4) 砂糖をごく少量にする。白砂糖を摂らない
  5) 主食を精製度の低い穀類にする。雑穀を加える
  6) 豆類を摂る。種子・ナッツ類を摂る
  7) 野菜をたっぷり摂る。果物を摂る。海藻を摂る
  8) 魚貝類を少量摂る
  9) 発酵食品を常に摂る
  10) 食材・調味料は自然で新鮮なものを使う


 このような基本的な考え方で「食事療法」は考えなくてはなりません。
  
  このような基本原則は、「健康的な生活と長寿」を目的とするものであり、これはミトコンドリアの機能改善・ミトコンドリアの働きを悪くさせないことを目的としたものに他なりません。

 

 

 

 

「健康的な生活を送る」ための食事について


 自然派医師の本間真二郎先生は、「健康的な生活を送る」ための食事について、以下のように述べておられます。


日本人は「和食」を自然食でとるのがいちばん


 食事は、私たちの健康にとってもっとも重要な要素のひとつです。
  ところが忙しい現代人は、便利さや手軽さを優先し、ファストフード、インスタント食品、冷凍食品、レトルト食品、缶詰、瓶詰といった加工品など、食品添加物がたっぷり含まれた食材を多用しています。その結果、自然からかけ離れた食生活になりがちです。
 お金や手間がかかりますが、家族の健康のためにも、できるだけ自然の食材を選んで使い、食事を手づくりすることで、自然に沿った食生活に戻すことが大切です。
 理想の食生活は、自然農や有機(オーガニック)農でつくられた旬の食材を使い、食物添加物などの化学物質を使わない「自然食」です。日本の伝統食である「和食」は、私たち日本人の体質に合っています。ごはんやみそ汁を中心とする一汁三菜の和食こそが、日本に住んでいる私たちにとって、ふさわしい食事と言えます。
 じつは、住んでいる気候や風土、遺伝が異なれば、からだにいい食事の内容も変わってきます。
 たとえば、パプアニューギニアの高地に住む人たちは、食事のほとんどが、タロイモといういもです。それでも彼らの栄養が足りなかったり病気がちだったりということはありません。プロレスラーのような筋骨たくましい体型の人が多く、みな健康。アフリカのマサイの人たちは牛乳を1日に5~10リットルも飲んでいます。彼らも身体能力が高く、健康に生きています。伝統的な生活をしているイヌイットの人たちは、トドやアザラシなど、ほぼ動物性食品100%の食事をしていますが、病気も少なく健康です。
 私は、動物性食品をあまり推奨していませんが、マサイやイヌイットの人たちは、動物性食品中心の生活でも問題なく暮らしています。どうして、このような違いが出るのでしょうか。
 答えは腸内細菌にあります。パプアニューギニアの人たちはいもだけを食べていても、腸内細菌がすべての栄養素を補っているのです。同様に、マサイやイヌイットの人たちも、彼らに適合した腸内細菌をもっています。腸内細菌は、その土地と切っても切り離せない関係にあります。
 日本に住む私たちも、日本人特有の腸内細菌をもっています。ですから、外国のものを食べたり、外国から入ってきた新しい健康理論に合わせたりする必要はありません。
  土地の恵みであり、知恵と工夫によって長年日本人の生活を支えてきた和食がもっとも健康に役立ち、腸内細菌もそれに合ったいいバランスを保っているのです。健康のためには、その土地に合った食事で腸内細菌を整えることがなによりも大切です。


積極的にとりたい食材「まごわやさしい」


 日本人のからだに合う食事は、伝統的な和食です。和食は、①ごはん ②みそ汁 ③漬けものの3点セットが基本になります。それに、梅干しとごま塩を加えるのがいいでしょう。
 ごはんは、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富な玄米がおすすめです。炊き方を工夫すればモチモチとおいしくできますが、玄米が苦手な人や体質の合わない人は、分づき米や雑穀・豆類を混ぜてみてください。
 これに、食品研究家で医学博士の吉村裕之先生が提唱されている「まごわやさしい」を参考にしておかずを加え、一汁三菜を目安に献立を考えます。具体的には、以下の食材が健康に役立つとされています。ふだんの食生活に、積極的にとりいれましょう。

 
  まめ……大豆(みそ、しょうゆ、豆腐、納豆など)、小豆、えんどう豆、いんげん豆
  ごま……ごま、木の実(松の実、ピーナッツ、くるみ、ぎんなんなど)
  わかめ=海藻類……わかめ、こんぶ、ひじき、のり、あおのり、あおさ
  やさい……根菜、葉菜(キャベツ、白菜など)、果菜(なす、トマトなど)
  さかな……小魚(しらす、あじ、いわし、さんまなど)、貝類、桜えび
   しいたけ=きのこ類……しいたけ、しめじ、えのき、きくらげ、エリンギ
  いも……さつまいも、里いも、じゃがいも、山いも、長いも

 
 毎度の食事ですべてとることは難しいので、1週間くらいの間で、なるべくまんべんなくとれるように工夫しましょう。
 注目したいのは、ここに肉類や牛乳が含まれていないこと。日本人には、基本的に動物性食品(小魚や貝類を除く)は必要ないのです。
 ちなみに、50年前と現在の食品栄養表を見比べると、野菜に含まれるビタミンやミネラルは激減しています。これらを理由に肉食を勧める人もいます。実際に栄養障害が一時的に改善する例も見られるものの、肉食自体の健康や環境への長期的な悪影響のことも考える必要があります。
 旬の野菜の栄養価は昔とほとんど変わらず高いので、地域の自然農や有機農の新鮮な野菜を工夫してとれば、動物性食品を多くとらなくても栄養障害にはなりません。


”腹八分目”が健康の基本


  「腹八分に医者いらず」という諺(ことわざ)があります。少食が健康の基本であることは、日本のみならず、海外でも古くから知られています。さらに、「腹七分で病半分」、「腹六分で老いを忘れる」という言葉も。現代に多いがんや高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、肥満などの生活習慣病の原因に、「飽食」があることは間違いありません。日本では、江戸時代(元禄期以前)は1日2食だったという説もあります。少食により寿命が長くなること、がんの発生率の低下や生存日数が長くなることなど、健康にとっていい面が多数報告されています。
 食べすぎると、消化や吸収、代謝が追いつかず、消化管が疲れ、胃腸や膵臓、肝臓に負担がかかります。食べものに含まれる添加物、農薬などの化学物質、毒物も蓄積します。また、消化管に血流がとられることにより、全身の冷えにもつながり、免疫力が低下します。血糖値の急激な変動により、ストレスに対処する副腎が疲れ、精神的にも不安定になります。
 子供でも、基本は食べすぎよりも少食のほうがいいでしょう。ただし、育ち盛りで食欲が旺盛な子どもの場合、特別に少食を意識する必要はありません。とくに、部活などで運動量が多い子やよく遊ぶ子に制限は不要です。要は、食べた量を消費できていればまったく問題ないのです。


よく噛んで食べること


 食事は、ひとロにつき、30~50回くらい噛むことを心がけましょう。病気の人は100回以上でもいいと言われます。日本には、箸置きというものがあります。本来は、ひと□食べるごとに箸をおき、よく噛み、時間をかけて料理を味わいながら感謝して頂くのが、日本ならではの食文化です。しかし、現代の食事はやわらかいものが多く、あまり噛まないでも飲み込むことができてしまいます。食事時間もとても短く、数分で1回の食事を終えている人もいます。
  よく噛むことにより唾液の分泌が増え、胃腸での消化・吸収を助けます。また、唾液には免疫物質が多く含まれており、免疫を増強し、病気や虫歯を予防する作用があります。ひと□につき30回以上噛むことにより、農薬、添加物、発がん性物質などの有害物質のほとんどが口の中で分解されます。よく噛むことは、脳への血流や振動などの刺激を増やし、乳幼児の知的発達を促したり、高齢者の認知症を予防したりします。また、味覚が発達し、食欲の増進や心理面にもいい影響を与えるなど、じつにたくさんの有益な作用があるのです。
  よく噛むことは単純な行為ですが、お金もかからず、だれでも行うことのできる健康法と言えるでしょう。子どものうちから習慣にしたいことだと思います。


「身土不二」-その土地でとれる旬の食材を食べる


「身土不二」とは、人のからだ(身)と住んでいる風土(土)には密接な関係があり、その土地に住む人々の健康にとって、もっとも適した農作物がもっとも適した時期にとれる、という考え方です。たとえば、夏にはからだを冷やす野菜(きゅうり、なす、トマトなど)が、冬にはからだを温める野菜(ごぼう、にんじん、れんこんなど)が収穫されます。春にとれるふきのとう、わらび、菜の花などの山菜や野草は苦みが多く、冬にたまった脂肪分や毒素の排出を促します。
 このように、季節ごとにとれる作物にはそれぞれ意味があるのです。つまり、食材は地元でとれる旬の作物を選ぶのが健康にとっていい、ということになります。
 このことは、微生物の観点からも説明できます。土の中の微生物は、不用の有機物を分解し、植物に養分を供給している、地球の大きな循環の要です。それぞれの土地に、異なる固有の微生物がいます。たとえば、熱帯には熱帯地方の、温帯には温帯地方の、寒帯には寒帯地方の微生物がいます。さらに、自然環境は気温だけではなく、天気、降水量、日照量、湿度、風、地形など、さまざまな影響を受け、それぞれの土地で増えやすい微生物が異なります。
 同じ日本国内でも、地域によって微生物の組成はすべて異なると考えられます。同じ地域でも、農薬や化学肥料を使うか使わないかなど、作物の育て方によっても変わってきます。
 植物に養分を供給しているのが微生物ですので、その土地固有の微生物が、その土地にふさわしい農作物を育て、その土地にふさわしい私たちのからだをつくります。その結果、私たちの体内で増えた腸内細菌などの常在菌は自然に土に戻され、再び私たちのからだをつくる植物を育てる、という循環が生まれます(糞尿をたい肥として使用することをすすめているわけではありません)。このように、私たちのからだは、その土地の微生物と一体化していくことによって、お互いに支え合いながら健康につながっていくのです。自然のしくみは、特別な理屈を考えなくとも、私たちの健康を支えています。ですから、自然に沿った暮らしをしていれば、病気にならないということになります。
 現在の日本では、旬の食べものという考えが失われつつあり、季節にかかわらず、ほぼ一年中好きなものを食べることができますが、旬の野菜と旬ではない野菜は、見た目は同じでも栄養価がまったく異なります。また、日本とはまったく気候や環境の異なる熱帯や寒帯、地球の裏側からでも、食料を輸入しています。輸送には莫大なエネルギーが必要ですし、農薬や防腐剤、保存料などの添加物を大量に使うことにもなります。
 地産地消がいいのは、ただ単に輸送費がかからないという経済的なメリットだけではなく、健康の観点においてこそ重要なのです。


「一物全体食」-食はいのちを丸ごといただくこと


 「一物全体」とは、生きているものはすべて丸ごとで完全であり、かつバランスがとれているという意味。そして、食材も丸ごと全体を頂こうというのが「一物全体食」の考え方です。そして食べることは、生きものの「いのち」を頂くという行為になります。
 たとえば、米なら精米した白米ではなく玄米が、パンや小麦粉なども精白粉ではなく、できるだけ全粒粉を使ったほうがいいのです。野菜の皮や根は、なるべく捨てないで積極的に利用します。精製された食品は、ミネラル、食物繊維、ビタミンなどの栄養成分が激減しています。精製食品をとると、それ自体の消化・吸収のためのビタミン・ミネラルが足りないため、骨やほかの臓器からもってくる必要があり、全身に負担をかけることになります。
 現代では、「食べにくい」、「おいしくない」、「見た目が悪い」などの理由から、出まわっている食品の多くが精製された食品です。しかし、自然にあるもので、本来、無駄なものはなにひとつありません。人の都合で、いらない部分をとり除いて捨てるという考え方自体が、自然の法則から外れたものとも言えるでしょう。また、精製されていない食品はおいしくないというのも、単なる先入観ではないでしょうか。手をかけて育てられた野菜は、皮つきのほうがおいしくいただけます。皮をむく手間も省けますし、ゴミも少なく、わが家にとっては一石二鳥でした。米も、白米だと噛まなくても一気に甘みが広がりますが、甘みは急速になくなるため、味わい深さがありません。いっぽう、玄米は噛めば噛むほど、風味やうま味が増していきます。
 本来、栄養素は、一物全体の状態からよく噛んで食べ、時間をかけて消化・吸収することが、からだにとって理想的です。病気などで、極端に消化・吸収の能力が落ちている場合を除き、消化にいいものをとる必要はありません。消化管の機能を怠けさせるだけでなく、腸内細菌にも悪影響を与えます。精製され、単独になった栄養素を大量にとるという行為は、歴史をふり返ってみても、近代になるまでありませんでした。白米や小麦粉だけでなく、白砂糖、精製塩、化学調味料、さらには薬やサプリメントなども同様に、精製された食品の仲間です。
 農薬や放射能を心配して、玄米など未精製の食物を避ける人もいるかもしれません。たしかに、農薬などは、ぬかや外皮の部分にたまりやすく、人体に有害です。しかし、私はそれでも「一物全体食」をすすめます。なぜなら、解毒力、排出力を高めてくれるのが、「一物全体食」であるからです。放射能を避けることも大切ですが、たとえ□にしたとしても、その分出せるからだであることのほうが、より重要であると述べておられます。


栄養豊富なうえ解毒作用の強い玄米


 米の栄養素である脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維は、精白することでとリ除かれてしまうぬかや胚芽の部分に多く含まれます。ですから、白米より玄米のほうが栄養豊富であり、食事の原則である「一物全体食」の観点からも、すぐれていることになります。
 最近は、農薬や放射能を気にするお母さんたちが、玄米ではなく白米にしているという話をよく聞きます。ぬかや胚芽に含まれるそれらの毒物を避けたい気持ちもわかります。
 しかし現代社会では、農薬や放射能に限らずさまざまな毒物(化学物質)があふれています。
 これらに対処する原則は、とらないこと、解毒・排出することに尽きますが、たとえ気をつけても、知らず知らず摂取してしまっている現状があります。避けることばかりに目を向けず、抵抗力や解毒力を上げる必要があります。その点、玄米にはとても強い解毒・排毒作用があります。
 玄米に含まれるフィチン酸やアブシジン酸が、ミネラルを排出したり、さまざまな健康障害をおこすという意見もありますが、私はこれも解毒作用のひとつと考えています。気になる人は、発芽玄米や酵素玄米にしてみてください。体質的に玄米が合わない人は、玄米を煎ってから炊いたり、分づき米や雑穀を混ぜたりするなどの工夫をするといいでしょう。

  以上のように、本間先生は述べておられます。

 

 

 

 

“MIND食(マインド食)”


アルツハイマー予防に効果的な“MIND食(マインド食)”


 認知症を引き起こす原因のうち、最も多いのがアルツハイマー病です。
 アルツハイマー病には特効薬がないため、いかに予防するか、いかに悪化させないかで頭を悩ませている人も多いかと思います。
  そんな方に紹介したいのが、学術誌 「Alzheimer’s & Dementia」で紹介されたMIND食(マインド食)です。

 
 日本人には親しみやすい食事療法でありながら、アルツハイマー病のリスクを下げる効果が期待できるそうです。

 
アルツハイマーのリスクが53%減

 

 研究チームは、約1000人を対象にMIND食(マインド食)を取り入れるグループと取り入れないグループに分け、10年間に渡って調査を行いました。
 その結果、MIND食(マインド食)を取り入れたグループは、アルツハイマー病のリスクを53%も減らしたそうです。

 
なぜリスクが下がるのか

 

 MIND食(マインド食)を取り入れることで、アルツハイマーの原因となる肥満や高血圧、高コレステロール、循環器病、糖尿病を予防できるからだということです。
 

MIND食(マインド食)とはどんな食事か

 
 MIND食(マインド食)は、「地中海ダイエット」と「DASH」という高血圧症を防ぐための食事法を組み合わせた食事療法です。

 
 方法は、10種類の食品については毎日取り入れ、5種類の食品については必ず避けるだけです。


毎日取り入れる食べ物

 
・緑黄色野菜やその他の野菜


  特に緑黄色野菜に豊富に含まれる、ベータカロチンや抗酸化ビタミン(ビタミンCやビタミンEなど)は、認知症の予防に効果的だと言われています。
 

・ナッツ類


  硬いナッツをそのまま食べるのは無理な場合でも、すりつぶしたものやペースト状にしたもの、またはココナッツオイルなどをうまく取り入れるといいでしょう。
 

・ベリー類

 
 ブルーベリーやクランベリーなどには、ポリフェノールやアントシアニンなどの抗酸化物質が豊富に含まれています。

 

・豆


  日本人がよく食べる大豆のほかに、地中海でよく食べられているひよこ豆を取り入れてみましょう。ひよこ豆はタンパク質やミネラル、ビタミンBやビタミンEが豊富に含まれています。また、大豆よりもカロリーが低いのも魅力です。
 

・玄米や全粒粉の小麦などの全粒穀物


  精製されていない穀物の事です。ホールグレインとも呼ばれています。精製されたものと比べて、ビタミン、ミネラル、食物繊維など、不足しがちな栄養が豊富に含まれていて、食後の血糖値の上昇が緩やかなのが特徴です。

 
・魚


  特にサバやイワシ、サンマなどの青魚には、DHAやEPAが豊富に含まれており、コレステロールの値を下げ、血液をサラサラにする効果があるため、認知症のリスクを高める生活習慣病の予防や改善が期待できます。
 

・鶏肉


  赤味の肉は避けた方がいいと言われていますが、複数の研究によって鶏肉に含まれるビタミンB群が認知症予防に効果的であることがわかっています。また、ビタミンB群は赤身の魚にも多く含まれている成分です。

 
・オリーブオイル


 オリーブオイルに豊富に含まれるオレイン酸にも、血液をサラサラにしてくれる作用があります。特にエクストラバージンオイルに、このオレイン酸が豊富だと言われています。また、エクストラバージンオイルに含まれる抗酸化物質オレオカンタールが、脳内に蓄積してアルツハイマー型認知症を引き起こすとされている、βアミロイドを減らす効果があるという報告がされています。

 
・ワイン


  ポリフェノールのためなので、ホップのサプリメントやコーヒー

 

・緑茶などでも代用可能です。
 
 日本人には取り入れやすいものが多いですね。

 

避けるべき食べ物

 
 赤身の肉、バターやマーガリン、チーズ、パン菓子やスイーツ、揚げ物やファストフード

 

 一定期間だけMIND食(マインド食)を取り入れるのではなく、継続して長く取り入れるのが良いそうです。


おわりに

 
 食事と認知症は密接した関係にあります。
 体や脳によい食生活を送っていれば、それだけ認知症のリスクが小さくなりますし、逆もまたしかりです。
 いつも私達が口にしているものは、はたして認知症予防に効果的かどうか。また、脳や体に対してどのような影響を与えているものなのかなどを、ぜひ一度じっくりと考えてみてください。
 これからは意識的にこれらの食材を多く食卓に並べるようにして、認知症予防に役立ててみるというのも一つの考え方かもしれません。


認知症予防のための食品とは・・


 まず、ミトコンドリアを傷つける活性酸素を消去する「抗酸化物質である食品」にはどのようなものがあるのかということです
 極めて多くの食品に抗酸化作用があることが分かっています。
 これをどのように摂取するかが鍵になっています。
 そして、脳の神経細胞およびミトコンドリアの膜構造を構成し、さらに、認知症発症の根源ともなる「酸化ストレス・炎症体質」を形成させる、必須脂肪酸のなかのオメガ3を如何にして多く摂取するかが重要になっています。
 また、ミトコンドリアの機能を悪化させないように、マグネシウム不足、鉄不足、葉酸不足、オメガ3に注意することです。
 認知症まで進展している場合は、これ以上進展させないためには、エネルギー補充の手段として、ココナツオイルが注目されています。


 さらに、食事を摂る際には、食べ過ぎないように、よく噛んで、早食い・ドカき喰いは厳禁であり、腹八分にすることです。


  このように、認知症予防には、食生活が極めて重要になっています。

 

 

 海馬は非常に高性能で記憶の司令塔とも言える重要な器官ですが、大変繊細で壊れやすい精密機械のような性質を持っています。
  とても強いストレスにさらされたときにも海馬は壊れてしまいます。
 さらに、酸素不足で脳がダメージを受けると、最初に海馬あたりから死んでいくといわれています。

 
  今回は、「酸素不足の影響」についてです。


(1)認知症と血液循環


  認知症と血液循環はとても深い関係にあります。
  アルツハイマー型認知症は40歳ころからその兆しが起こり本人も気づかないうちに進行して60歳以降に認知症の症状として現れます。
  認知症を予防するには血液循環を促進することです。
  血液循環を促進するためには、血管を若返らせて血液循環を高め高血圧や動脈硬化を予防することです。
  血管年齢を若返らせるには血管内皮細胞が重要なカギになります。
  血管は加齢や生活習慣など様々な要因で柔軟性が失われて血管壁が厚くなったり硬くなったりします。
  血管の柔軟性が失われることを動脈硬化といいますが、加齢とともに血管が硬くなっていくのは老化現象といえます。
  しかし、最近では若い人にも動脈硬化が進行しているケースが増えています。
  血管は、動脈、静脈、毛細血管の3種類があります。
  血流は、心臓→動脈→毛細血管→静脈→心臓、の経路で循環していますが、心臓から出て全身に酸素や栄養素を送る動脈は「外膜」「中膜」「内膜」の3層の構造をしており、特に「内膜」は薄い線維性の「内弾性板」と血流と接する部分は「血管内皮細胞」で構成されています。
  「血管内皮細胞」が入れ替わるターンオーバーは約1000日といわれています。
  通常お肌のターンオーバーは約28日といわれていますので、内皮細胞のターンオーバーはお肌の約30倍の期間かかることになります。
  しかし、内皮細胞が一度に入れ替わるのではなく、約1000日をかけてゆっくりと新しい細胞に入れ替わりますので、毎日の血管ケアを始めれば徐々に血管年齢も若返り健康的な血管に変わります。


「血管内皮細胞」の働きは


 血管の一番内側に張り巡らされている血管内皮細胞は、血液と常に接しているため血管を守り血管を強くするように働いています。
 血管内皮細胞が正常で健康な状態であれば、血管はイキイキして血管年齢を若く保つことができます。


1.血管内皮細胞は血管を守るバリア機能


 血管内皮細胞は、血中に含まれている不良な成分が血管壁に侵入しないようにブロックしています。


2.血管内皮細胞は血管を拡張するNO(一酸化窒素)を発生


  血管内皮細胞は血管を良好に保つNO(一酸化窒素)を発生させて血管壁に刺激を与えて拡張させ血流を促進させる働きがあります。血管が拡張すると血圧が下がり血管への負担が軽くなります。
  また、NO(一酸化窒素)が血中に入ることで血液がかたまりにくくなって、脳梗塞や心筋梗塞の原因になる血栓ができにくくなります。


健康な「血管内皮細胞」はアテローム性動脈硬化を防ぐ


 血管の内皮細胞のターンオーバーが正常に行われ内皮細胞が強いバリア機能を保持していればアテローム動脈硬化の原因となるプラークが発生しても退縮して小さくなり血管壁が修復されます。
 また、たとえ動脈硬化がある程度進行していても血管内皮細胞が再び強固なバリア機能を持てば血管壁の傷も修復され血管年齢を若く保てることがわかっています。
 内皮細胞がイキイキして健全になれば血管を拡張させて血圧を下げる作用があるNO(一酸化窒素)が発生して血栓もできにくくなり良いサイクルが生まれます。
 また、太い動脈の内皮細胞が健全になると、老化が進行していない段階であれば、その影響が細い動脈にも波及して血管全体が若々しく健康な状態に回復します。

 

血管内皮細胞を傷める原因を減らす


活性酸素を減らす


 活性酸素は血管内皮細胞に傷害を起こします。
 血管内皮細胞を傷める原因は活性酸素と高コレステロールです。
 血中の悪玉のLDLコレステロールが多くなると血液がドロドロ状態となって血圧も上昇して血管内壁に圧力をかけます。
 また、活性酸素とLDLコレステロールが結合して酸化コレストロールとなって血管内皮細胞の間隙から血管内壁に入り込み、免疫細胞のマクロファージが働いてアテローム性動脈硬化の原因になります。
 この様な状態を引き起こさないためには、喫煙者においては禁煙をしましょう。
 また、保存料や着色料などの食品添加物や過剰な飲酒を避けることです。
 更にストレスも血圧を上昇させる作用があるので、ストレスの軽減にも配慮する必要があります。


血圧を上げる塩分を減らす


 塩分の過剰摂取は血圧を高めて血管の内壁に傷をつける。
 血圧が上昇すると血管の内皮細胞を傷つけてしまいます。
 この血圧が高くなる原因には「塩分の摂り過ぎ」と「肥満」が関係しています。
 日本人は昔から塩分の多い食品が多いことが影響して、諸外国に比べて塩分の摂取量が多くなっています。


脂質と糖質を減らす


 血液がドロドロになる原因として脂質と糖質の摂り過ぎがあげられます。血液がドロドロになれば血流が滞るため血流を高めようとして血圧が上昇します。
 食べ過ぎや栄養のバランスを欠いた悪い食習慣を改善して、適度な運動を取り入れることが重要です。
 血液が順調に流れていれば血管内皮細胞に適度な刺激が加わりNO(一酸化窒素)の分泌が促進されて血管を拡張して血圧が低下し血栓も予防されて好循環が生まれます。


 内皮細胞を元気にして血管を若返らせる食事の順番


 食事の最初に野菜を食べる 食事の2番目にはお肉等のたんぱく質を食べる 食事の最後にごはんやパンなどの炭水化物を食べる


 最初に食物繊維 → 2番目に脂質 → 最後に炭水化物


 血管内皮細胞を元気にして血管を若返らせるための食事の順番は、まず野菜などの食物繊維を摂取し、次に肉などの脂質、そして最後にごはんやパンなどの糖質を食べるようにしましょう。
 血糖値を上昇させる炭水化物を最後に食べることで糖質の吸収を抑えて血管の内皮細胞を守りましょう。

 
 脳の血液循環を促進する方法は食べ物をよく噛んで咀嚼することです。よく噛むことで脳の血液循環が約50%も増加するという研究結果が報告されています。食事の時はとにかくよく噛んで食べましょう。
  噛む回数をかせげない時は間食としてガムやスルメなどをおすすめします。


(2)貧血の関与


1.鉄不足

 

 電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須です。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。
 このように、鉄分の不足は、ミトコンドリアのエネルギー代謝がスムーズに行かなくなります。その結果、ミトコンドリアの機能低下を招くことになります。


 女性では鉄欠乏性貧血になる人が多く、20代、30代、40代と年齢が高くなるにつれて貧血の人が増える傾向にあります。40代になると女性の約3割が貧血になっています。
 体内で鉄が減少すると、貯蔵鉄であるフェリチンが使われ減っていきます。フェリチンが不足すると血液中の鉄分も徐々に不足し、最後にヘモグロビンが減少し貧血が起こります。
 貯蔵鉄のフェリチンの理想値は100~300 で、男性の99.9%はフェリチン100以上です。 50歳以上の女性の80%はフェリチン100以上です。
 しかし、15~50歳女性の80%はフェリチン30以下の鉄不足で、40%はフェリチン10以下の深刻な鉄不足です。
 鉄欠乏性貧血にまで至らない鉄欠乏状態である方々は成人女性の約40%存在します。


  鉄は体内で以下のような様々な重要な役割を果たしています。


1.鉄は赤血球の重要な構成要素として酸素の運搬に関わっています
 

 全身の細胞へ酸素を運び、蓄えます。
 

   ・酸素の運搬 : 赤血球のヘモグロビン
    ・酸素の備蓄 : 筋肉細胞のミオグロビン

 
2.エネルギーを生み出す

 

 ミトコンドリアでATPを産生します。ATPは細胞の中にあるミトコンドリアで作られます。そして、ミトコンドリアの中には鉄が保存されています。
 たとえば、過度なダイエットなどで鉄分が不足すると、ミトコンドリアに蓄えられていた鉄が使われて減っていきます。


 鉄が減ればATPを充分に作れなくなりますので、体温を維持することができず、冷え症が起こってくるのです。鉄不足がもっと進むと貧血になりますが、冷え症はその前に起こる現象です。
 電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須なのです。すなわち、鉄不足があると、ATP不足と乳酸蓄積を生じます。ミトコンドリアはチトクローム系酵素「ヘム酵素」を含みヘム鉄が材料のため、ミトコンドリアの多い臓器は鉄の赤い色をしています。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。鉄は、ヘモグロビンの材料になるだけではなく、各細胞のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の触媒のような働きをします。


3.活性酸素から体を守る
 

 抗酸化酵素(カタラーゼ・SOD)の補助因子として働きます。
 カタラーゼやグルタチオン・ペルオキシターゼなどの抗酸化酵素の構成要素となって活性酸素の消去に関わっています。


4.コラーゲンの合成を助ける
 

 酵素シトクロムP450は鉄を補因子として、ビタミンCを補酵素としてコラーゲン特有のアミノ酸 (ヒドロキシプロリン・ヒドロキシリジン)を合成します。これは皮膚に関連し、美肌に影響があります。

 
5.有害物質の排泄を助ける

 
 肝臓に多い水酸化酵素シトクロムP450の補助因子として、水に溶けやすく排泄されやすい形に換えます。ミトコンドリア内でシトクローム酵素の構成成分としてATPの合成に重要な働きを負っています。

 
6.神経伝達物質(脳内セロトニン)の産生に関わっている

 

 鉄分が不足すると、ヘモグロビンが充分に作られないので、貧血が起こります。貧血が起こると、脳内にも酸素や栄養素がしっかりと届かなくなるため、充分なセロトニンを合成することもできなくなります。
 鉄分は実はセロトニンなどの神経伝達物質を作るときの酵素を助ける「補酵素」として機能しているため、鉄分が充分潤っている体内ではセロトニンがスムーズに作られますが、鉄分不足だと、セロトニンの生成自体が出来なくなるわけです。
 つまり、セロトニンの合成には、トリプトファンとビタミンB6とマグネシウムとナイアシンが必要!であり、実は「鉄分」も必要なのです。
 トリプトファンというアミノ酸からセロトニンができる過程や、チロシンというアミノ酸からドーパミンができる過程で、鉄が必要になってくるのです。

 
鉄不足はエネルギー不足と心得ましょう


 鉄については新しい認識として「鉄不足=貧血」ではなく、「鉄不足=エネルギー不足」だと思って下さい。というのも鉄はエネルギーを作り出すうえで欠かせない成分なので、鉄が不足するとエネルギー不足になります。
 その結果、元気もでませんし、疲れやすいし、体温も上がらないので冷え症にもなりやすくなります。体のすべての機能が低下してしまうのです。


 鉄が大事だと思えば普段から食事の中で症状が出ていない人でもなるべく鉄を摂るようにしていきましょうという風に考えて下さい。その時の鉄、食べ物で言えばやはりレバーです、それからお肉の赤身です、レバー嫌いな人はお肉の赤身でいいですからそれをしっかり摂って下さい。そしてひじきにも入っていますが、少ないのでひじきだけで鉄をまかなうのはかなり難しいです。小松菜、ほうれん草に至っては鉄分が非常に少く、農薬を使っていますのでこれで摂るのもかなり厳しいです。バケツ1杯とか2杯とかのほうれん草を食べると賄えるかもしれませんがちょっと考えただけでも食べたくないです。それよりはお肉の赤身ということになってきます。


2.葉酸


  葉酸を積極的にとっている人は、そうでない人に比べてアルツハイマー病のリスクが半分になる。(米・コロンビア大学)


  葉酸は、赤血球をつくるのに必要なビタミンで「造血ビタミン」とも呼ばれます。鉄分と同様です。
 

 葉酸が多く含まれる食品は、鶏や牛、豚などのレバー、緑黄色野菜や豆類、うなぎなど。葉酸はレバーや魚介類に豊富に含まれるビタミンB12と共同して働きます。
  葉酸が不足すると血中のホモシステインが増加し、その結果、認知症が発症する前から知能が低下することが分かっています。
  食事だけで十分な葉酸をとることが難しい場合には、サプリメントを利用するのもいいでしょう。


3。姿勢の問題


 便利な生活送っているとその分、カラダを動かさない生活になりますがそうなると、呼吸して、取り入れる酸素の量も少なくなってきます。
 体内の酸素濃度が不足している人は、知らず知らずのうちにさまざまな悪影響を受けているのです。空気中の酸素濃度は地球上のすべての生物に平等に与えられているのに、どうして人によって酸素が不足してしまうのでしょう?
 それは「浅い呼吸」が問題なのです。
 年をとってくるとカラダが硬くなってくるものですがこれもカラダを動かさなくなったことから筋肉に回ってくる酸素量の低下が関係しているともいわれています。
 確かに、からだは、細胞でできていて細胞内のミトコンドリアで、ブドウ糖を燃焼して、エネルギーに変えてくれます。
 カラダが硬くなっている状態は意識して深呼吸などをして酸素の供給量を上げるようにすると柔軟性が戻ってくることがわかっているようです。
 カラダの柔軟性が増してくるということは深呼吸を行うことで、脳に供給される酸素の量も増えてくることになります。
 そして、海馬など、認知症と関係する脳の組織にも十分量の酸素がまわってくるとそれだけ、認知症になるリスクも軽減されます。
 また、年をとってくると重力の関係からか姿勢も悪くなりがちです。
 背中が丸まってくると人が多いですがそうなると構造的に酸素を取り入れる量も少なくなってきます。


 悪い姿勢にカラダを動かさない状態がプラスすると酸素の供給量も減ってきて、記憶力の低下から認知症の悪化を進めることにもなります。


これを是正するためには「胸を張る」ことです。

 
 「えっ、胸をはることと酸素不足と関係があるの?」
  と思う方がいるかもしれませんが、実はこの2つは大きく関係します。

 理由は2つあります。 一つは「呼吸」です。
 胸を張る動作は、胸郭を広げるので、肺が開き、それだけで酸素を、ゆっくりと、自然に取り込んでいきます。
  2つ目は姿勢が良くなることです。
  良い姿勢はあなたを美しくするだけでなく、考え方まで変えてしまう力があります。
  それな何かというと、こころとからだはつながっています。
  たとえば、肩を縮め、目線を下げたまま状態でいるだけで、なんだか暗い気分になってきませんか?
  これを逆手にとると、胸をはった状態では暗いことが考えられなくなります。
  なぜかというと、視線は自然に、前または上にいくからです。
  人間のからだは視線を上に向けたまま、ネガティブなことが考えられないようにできています。
  だから、胸を張っただけで、気分を明るく、自分に自信がもてるようになるのです。
  試しに実験してみましょう。


次に、ゆっくりと「深呼吸する」ことです。


 ミトコンドリアスイッチをオンにするのは光と酸素と言いました。
 私たちの祖先となる真核細胞が生まれる前、もともとはミトコンドリアは酸素を食べる細菌でした。
 その、ミトコンドリアの栄養源はたったふたつ それは・・・ 「酸素」と「ブドウ糖」
 私たちが酸素がないと生きていけない理由は、私たちの細胞を動かしているエネルギーを作るミトコンドリアが、酸素がないと生きていけないからです。
 だから、ミトコンドリアは、酸素が大好きなのです。
 酸素を得るために必要なこと、それは、皆さんご存知、「呼吸」。
 勿論、黙っていても、呼吸はしています。
 しかし、私が提唱する呼吸とは、意識した呼吸。すなわち「深呼吸」です。
 なぜ、深呼吸がよいかというと、ミトコンドリアはゆっくりが好きだからです。
 どういう ことかというと、ミトコンドリアが酸素とブドウ糖からエネルギーを作る際、大変時間がかかります。(※注1)

 ※注1 ミトコンドリアがエネルギーを作る際、栄養素は一旦、アセチルCOAになり、そこからクエン酸回路系というところを経て、ATPを作ります。


 ミトコンドリアは一度にたくさんのエネルギーを作れますが、その分時間がかかります。

 逆に短期間にたくさん酸素がきてしまうと、ミトコンドリアがエネルギー変換できなかったものが、活性酸素として排出されてしまいます。
  活性酸素にちょっと触れただけで、赤色の活性化したミトコンドリアが一瞬に青色=死んでしまうほど、ミトコンドリア=からだにとっては天敵です。
  だから、急激な運動や、あまり激しいトレーニングは、からだに良くないのです。
  40歳を超えたら、運動は、ウォーキングや太極拳などゆっくりしたものがお薦めです。

 運動できないにしても、まずは、吐くことを意識した深呼吸をしてみましょう。
 それだけでこころとからだが喜びます。


4.その他


 吸った空気の中に酸素が足りないということです。もともと大気中に、酸素は約20%しかありません。それが近年、工業化で大気が汚染されています。加えて最近の建築は気密性が高いので、戸や窓を閉めると換気がされにくく、中にいる人間が呼吸するにつれて、酸素が減り二酸化炭素が増えていく傾向があります。それで、オフィスにこもりがちな現代人は、酸素不足になりやすくなっているのです。


ストレスとの上手な付き合い方


 ストレスを溜め込まないための一番のオススメは、運動です。たとえばジョギングは、脳神経を発達させる物質を出し、前頭前野を活発にさせたり脳を活性化させます。運動は、アルツハイマー病の予防にも効果があることが分かっています。


 また楽しめる趣味を持つことも効果的です。精神的な悩みを抱えていても、そのストレスにさらされる時間が長く続くことが脳にダメージを与えるのですから、そのストレスが連続しないように、自分が楽しいと思えるリフレッシュできる時間を持てばいいのです。
 個人的にはRPG(ロールプレイングゲーム)がオススメです。仲間と会話しながらゲームを進めるのは、とても楽しく、適度に脳にも刺激があり、嫌なことを忘れられる恰好の時間となります。

 

 大きなストレスがあっても、その問題がなかなか解決できない場合には、運動や趣味で、脳のリフレッシュタイムを持つようにして、ストレスが長時間持続しないようにして脳を守りましょう。

 
海馬を鍛える5つの方法


  海馬は脳のなかでも最も重要な記憶や情報整理をつかさどっている場所で、パソコンでいればメモリーと同じ役割を果たします。そのため、海馬をいかに活性化させるかが記憶力アップにつながるのです。
 
 では具体的に海馬を鍛えるのはどのようなことが必要なのか?それは体の筋肉と同じで、 運動によってより多くの記憶を覚えることができます。とはいっても、筋肉とおなじようなことをしても海馬を鍛えることができません。

 
 海馬は脳の一部です。そのため、脳神経を発達させ、脳の神経そのものを増やすための行動が求められます。

 
 では海馬を鍛えるのはどういったことをすればいいのか?一般的には次の5つが推奨されています。

 

 1)ジョギング
 2)速読
 3)脳トレゲーム
 4)なるべくテレビを見ない
 5)気になる異性と接する

 

ではそれぞれのポイントについて具体的に説明していきます。

 
1)ジョギング

 

 医学博士の征矢英昭氏がいうには、海馬を刺激するためには軽い運動をすることも有効だということです。具体的には心拍数でいうと1分間に90~100ぐらいの運動がベストだということです。

 
 例えばちょっと速いウォーキングだったりスローペースなジョギングなどを1日10分するだけで海馬に刺激を与えることができます。これを2週間続ければ脳神経が増え、6週間続ければ認知機能が向上することが研究によって明らかになりました。

 
 脳神経細胞は1000億個あるといわれており、1つの神経に1000個の神経がつながっているといわれています。こうした神経同士をつなぐ媒体となっているのが脳内ホルモン(神経伝達物質)で、この脳内ホルモンは運動によって脳が骨や筋肉を発達するためのホルモンを取り込むため、海馬が鍛えられるのです。

 
 また、ジョギングの強度を高めることによって、海馬以外の部分が刺激され、認知力以外にも集中力や判断力に効果があるとされています。つまり、運動することは脳を刺激を与える効果があるため、日頃からジョギングをする習慣をつけることで、脳を活性化させることができるのです。

 
 ただし、あまり激しい運動をするとストレスを感じてしまうリスクがあるので注意が必要です。あくまでも海馬を鍛えるのであれば、苦しくない程度の運動を心がけましょう。

 
2)速読

 
 「早く読めるだけじゃない? 速読には脳を活性化させる効果もあります。もともと音読や黙読などといった“本を読む”ことによって脳は鍛えられるのですが、速読することによってより脳は活性化されます。
 
 例えば、音読をすると脳内にセロトニンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されます。これによって抑うつ的な気分が開放され、勉強に対して意欲的な気分になります。

 

 また、黙読は文章から自分の力だけでイメージをして想像力を発揮して読んでいかなくてはいけません。この黙読によって、暗記や記憶をするのに大切な右脳が活性化されます。
  こうした、もともと脳の活性化につながる読書を速読によってより速く内容を理解することによって、脳に刺激を与え、海馬を鍛えることができます。ですので、記憶力を高める意味でも、速読は積極的に挑戦するようにしましょう。
  とはいえ、速読はとにかく速く文章を読むことを指しているわけではありません。内容をきちんと理解しつつ、なおかつ読む速度を速めるのが速読です。

 

 海馬を鍛え記憶力を高めるためにもぜひ速読にチャレンジしてみてください。


3)脳トレゲーム

 
 近年、ゲームが非常に発達して脳をフルに活用するものが増えてきました。そのため、ゲームを使って海馬を鍛える・・・こともできます。

 
 実は以前、オンライン麻雀を運営する会社が興味深いデータを発表しています。これは株式会社シグナルトークが、オンラインで脳の認知機能を測定するサイト「脳測」を運営しており、同社が運営しているオンライン麻雀「Maru-Jan」を日常的にプレイしている男女484人の脳機能を脳測でチェックしたのです。


   この結果
 

 「視覚性注意力」・・・物事を処理する際に、視覚情報に注意する能力
 「短期記憶」・・・短時間(約20秒間)保持される記憶力
 「エピソード記憶」・・・イベント(事象)についての記憶

 
の3項目については年齢が高くなるほどテストの結果が良いという傾向が表れたのです。 これは、麻雀で必要とされている記憶力やすばやい判断力がゲームをすることによって養われたと考えられています。
 
 つまり、ゲームをすることによっても脳は活性化されるということ。ただし、どんなゲームでも良いわけではなく、麻雀や将棋のように頭を使うゲームでないと意味がありません。

 

 その中に特におすすめなのが『数独』です。

 数独とは、縦・横9マスずつあり、全ての縦列・横列・そして各3×3マスにそれぞれ数字が1~9が入る数字のパズルゲームです。これならば将棋や麻雀のように人を集める必要がなく1人でプレイすることができます。
 

 こうした、頭を使ったゲームを使って脳を刺激することでも、海馬を鍛えることができます。また脳トレゲームは勉強と違ってストレスを感じず楽しみながら訓練できるため、脳を活性化するにはおすすめです。

 
4)なるべくテレビを見ない

 

 脳の活性化に必要なのは【認知→判断→行動】の3つのプロセスです。このプロセスを行うことによって脳が活性化するわけですが、これらを全く使わないことが私生活の中であります。
 それが『テレビを見る』です。テレビをぼーっと見てしまうと脳を活性化させるプロセルが“認知”の段階でストップしてしまうからです。

 
 テレビを見る時、まず視覚情報と聴覚情報が脳内に入り、それぞれ視覚野・聴覚野で処理されます。これが“認知”にあたるのですが、テレビを見ている時は基本的に頭を使っていませんから“判断”もないですし、当然“行動”だってしません。
 もちろんクイズ番組を見ながら自分で答えを考えたりするのは脳の刺激になるので問題ありません。また大好きなドラマを見るのもワクワク感などの感情が出てくるため、脳の刺激になっています。
 しかし、ただついているテレビをボーっとみているのは、脳の刺激にもならないため、電気代と時間を無駄にしているだけになってしまいます。ならばテレビを見ているよりも読書をしていたほうがまだ脳の刺激にはなるので、暇つぶしにテレビを見るのは控えるようにしましょう。

 
5)気になる異性と接する

 
 βエンドルフィンの分泌によって海馬の長期記憶が増強します。


  そしてこのβエンドルフィンを分泌させる最も効果的な方法が、気になる異性を接することです。
 

 気になる異性と話したり一緒にいることによって幸福感を味わうことができ、脳内でβエンドルフィンが分泌されやすくなります。さらに人間は恋をすると性ホルモンが分泌され、この性ホルモンが脳内に入って神経幹細胞に働きかけて脳細胞の増加を促すのです。

 
 ですので、もし気になる異性や好きな人がいるのなら、なるべく一緒にいるよう心がけてください。それだけで脳に刺激を与えることになり、海馬を鍛えることができるのです。
 また、好きな人がいなくても好みのタイプの人でもかまいません。例えば好きなタレントが出演している雑誌を読んだり好きなアーティストの音楽を聴く・・・というのでもかまいません。
 
 
 海馬を鍛えることによって、脳の記憶力を向上させ、より多くの情報をインプットすることができます。しかし脳も筋肉と一緒で刺激を与えたり使ったりすることで活性化されるのであり、使わなかったらどんどん低下していってしまいます。
 つまり、勉強法や暗記法を駆使したところで普段から脳を刺激しなかったらその効果は思った以上に低くなる・・・ということ。
 生活のちょっとした改善によって海馬は簡単に鍛えることができます。これを機に自分の生活を改め、脳にとって良いライフスタイルを確立していってみてはいかがでしょう。


記憶力を高めるにはストレスを避け、海馬を鍛える生活を


 いま覚えたばかりのことや直前の体験など、短期記憶を司るのは海馬です。
 脳細胞は増えませんが、海馬だけは例外で、神経細胞が増えるのです。
 それは他の脳の神経細胞では新しい細胞になってしまったら混乱してしまいますが、海馬は一時的に記憶するだけなので、新たな細胞ができても混乱しないからと考えられます。


  このことはまずネズミの実験でわかりました。
  ケージに回り車やトンネルなどのおもちゃを入れたり、ケージそのものを広くして運動できるようにしたネズミと、狭いケージでえさと水を入れただけのネズミを比べると、前者のほうが海馬の神経細胞が多く分裂するのです。


  人間では、2000年にロンドン大学マグガイアー教授による、こんな実験報告があります。
  ロンドン市内のタクシー運転手を調べたところ、ベテラン運転手ほど海馬が大きいことがわかったのです。
  ロンドン市内は道が複雑に入り組んでいるので、タクシー運転手は、それを覚えておかなければなりません。
  道をよく覚えているベテラン運転手ほど海馬の神経細胞がよく増殖しているというわけです

 もうひとつ、2004年には、社会の中で対人関係で優位な立場にいる人ほど海馬の神経細胞の増殖力が高まるという報告(アメリカのプリンストン大学のグールド教授)もあります。
 これは、上の立場にいる人のほうが人間関係のストレスがないことが大きな要因と考えられます。


  さらに、海馬を活性化するには、積極的に刺激のある生活、さらに好奇心を持っていろいろなことを学習する。
  そうすれば、海馬の神経細胞を増殖することができるかもしれません。
  少なくても海馬の神経細胞をいつも活用することで、死なないようにすることはできます。

 

 海馬は非常に高性能で記憶の司令塔とも言える重要な器官ですが、大変繊細で壊れやすい精密機械のような性質を持っています。
  例えば酸素不足で脳がダメージを受けると、最初に海馬あたりから死んでいくといわれています。また、とても強いストレスにさらされたときにも海馬は壊れてしまいます。

 
  今回は、「ストレスの影響」についてです。


ストレスで記憶に障害が起きる

 
 人は、強いストレスを長期に渡って受けると、物覚えが悪くなったり、思い出せなくなったりします。
 ストレスが加わると、副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールというホルモンが分泌されますが、これは、ストレスが加わったときの緊急事態に適応した反応で、血糖値を高め、体にエネルギーを与えてくれます。
  コルチゾールは、人間にとって必要不可欠のホルモンなのですが、ところが、強いストレスが長く続くと、このストレスホルモンであるコルチゾールが大量に分泌され、脳の海馬を萎縮させることが分かってきました。
  私たちがインプットした情報は「短期記憶」として脳の海馬に仮保存されて、その後「長期記憶」に置き換えられます。記憶の中心的役割を果たす海馬ですが、ストレスによってダメージを受けやすい部位なのです。
  脳の海馬というのは、このように記憶にかかわる部分で、アルツハイマー病の場合には、この海馬が萎縮しています。
  人は、短期的にでも過度のストレスが加わると、脳の働きが抑えられます。
  それが長期に渡り、ストレスを強く感じると、物を覚えたり思い出したりする能力が低下し、脳細胞に障害を起こし、本当に認知症を発症させてしまう可能性も出てきます。
 
 ニュースなどでよく耳にするPTSD(心的外傷後ストレス障害)ですが、PTSDの患者の脳を調べると、海馬が萎縮しています。
  アメリカの戦争帰還兵には、このPTSDの患者が多くいますが、戦争という強いストレスによって海馬が著しく萎縮してしまい記憶喪失を生じる場合もあります。記憶を失うまでいかなくても強いストレスを長く受けたことによって記憶力が低下する現象が起きているのです。耐えることは美徳といわれますが、我慢しつづけてストレスを長期的に受けていると、自分の脳がダメージを受けてしまうかもしれません。


ストレスは脳の前頭前野にダメージを与える

 
 強いストレスは、脳の海馬だけでなく、前頭葉の中の前頭前野の部位にもダメージを与えることが実験によって分かっています。
 前頭前野というのは、おでこの裏側のところの脳の部位で、大脳皮質の約30%を占め、人間の脳の活動の中でも最も高度な働きをつかさどる中枢で、人を人たらしめてる重要な部分です。
 前頭前野は、思考・判断・集中・衝動の抑制などをつかさどる中枢ですが、慢性的にストレスが加えられると、この前頭前野の機能が低下して、思考力・判断力・集中力が低下して感情や衝動の抑制が上手く働かなくなります。
 そして、身の回りで起こるさまざまなことに対して、より強く恐怖を感じるようになり、びくびく、おどおどした行動をするようになります。
 強いストレスを受けることで異常に臆病になったり、人と話せなくなったり、外に出られなくなったりする場合がありますが、それは、ストレスによるこうした脳へのダメージが原因ではないかと考えられています。


  近年、ストレスに関する研究は大いに発展して、ストレスによる刺激が持続すると、海馬や前頭前野だけでなく、さまざまな部位で変化が生じることが分かってきました。脳は、このようにストレスに対しては、もろく弱いものなのです。


 ベトナム戦争の帰還兵の後遺症は、米国でも話題になりました。
 彼らは、帰国して日常の生活に戻ったあとで、いろいろな後遺症に悩まされているのです。
 自動車の排気音を聞くと、「戦車に襲われる」と叫んで、机の下に隠れる人がいるかと思えば、夜、雷が鳴ると、身の回りにあるものを手当たり次第に窓に向って投げつけて、ガラスをめちゃくちゃに壊す人もいました。
 あるいは、ちょっとした人間関係の苦労に耐えられずに、引きこもりになってしまう人など、症状はいろいろです。
 そこで、米国のエール大学の精神科のブレムナー教授は、三次元MRI(磁気共鳴)を使って、彼らの脳を調べることにしました。
 この機械を使うと、脳のいろいろな部分の大きさが、外側から計測できるのです。
 その結果、これらの帰還兵はみな「海馬」という記憶の入口の部分が小さくなっていることがわかったのです。
 海馬が障害されると、新しいことが覚えられません。記憶の入口と呼ばれるゆえんはここにあります。
 一方、思い出など昔の記憶は、別のところに蓄えられているから忘れないでいるのです。
 検査の結果、ベトナムの帰還兵の中でも、部隊の前線にいた期間が長いほど、海馬の萎縮が激しかったことがわかりました。
 そして海馬の萎縮が著しい人において、いわゆる「トラウマ後ストレス障害(PTSD)」が現われていることがわかったのです。


  そしてこれらの症状の原因は、ストレスの際のコルチゾールにあることがわかってきました。
 私たちがストレスを感じると、視床下部からCRHという放出ホルモンがだされます。
 するとこのCRHは、下垂体に作用して、副腎皮質を刺激するホルモン(ACTH)をださせます。
 このACTHが副腎皮質に作用してコルチゾールをださせるのです。
 ところが、コルチゾールが多くでると、今度はこれが視床下部や下垂体に作用して、CRHやACTHを出さないようにさせます。
 いわゆるフィードバックですが、これによってコルチゾールが出過ぎないような仕組みになっているのです。
 しかし、トラウマを経験した人や、子どもの時に虐待を受けた人、うつ病の素質のある人などは、このフィードバックの仕組みが働きにくくなることがわかりました。


 脳細胞には、コルチゾールと結合する受容体があります。
 しかし、コルチゾールが非常に多くなり、脳細胞にあるほとんどすべての受容体と結合すると、脳細胞は死滅することが知られています。とくに海馬の細胞が死滅します。
  海馬の細胞は、視床下部の機能を調節しているのです。
  ところが、これが多量のコルチゾールで傷害されると、視床下部からCRHの分泌をコントロールすることができなくなります。こうなると、コルチゾールが出っぱなしになります。


ストレスが子どもの脳に与える影響

 
 人は、ストレスが強いときには、ものを覚えたり思い出したりする能力が低下することを見てきましたが、子どもの勉強も、家庭内の不和や、学校での不愉快な出来事が、物覚えを悪くさせている可能性も十分あります。
  人は、幼少時に長期間強いストレスを受けると、成人になってからの記憶力が悪くなります。
 脳の働きには、遺伝的なものもありますが、学習能力の向上のためには、ストレスを避けて脳を大切にすることで、その人が本来持ってる脳の働きを最大限に発揮することができます。我が子の成績を上げたければ、ストレスを与えない環境作りが大切です。

 
心をむしばむストレス うつ病・・その正体とは?

 
 ストレスが引き起こす心の病の代表がうつ病です。大手家電メーカーに勤めていた堀〇祐〇さんは14年前、心が折れました。お客様相談室でトラブルを処理するクレーム対応係として働いていました。時には何時間も罵倒される仕事を4年間続けた頃、うつ病の診断を受けました。ストレスは誰にでもあるものと思って我慢しているうちにどんどん気分が落ち込み、うつ病を発症したのです。
 日々のストレスは一体どのようにして心を蝕み、うつ病を発症させるのでしょうか?

 
  最新研究によってそのメカニズムが明らかになりつつあります。

 
 私たちの周りにある様々なストレスを受けると、脳の中にある恐怖や不安を感じる扁桃体が活動を始めます。すると、脳から体に指令が出されて副腎からストレスホルモンが分泌されます。ストレスホルモンは心臓の拍動を速め、血圧を上げるなどストレス反応と呼ばれる様々な反応を体に起こします。このストレスホルモンの中で注目されているのがコルチゾールです。コルチゾールは脳に辿り着き、吸収されますが一定の量を超えて増え続けると脳の一部を破壊することが分かってきたのです。
 アリゾナ州立大学ではストレスに長くさらされると脳がどうなるのかを実験しています。

 
 ネズミを金網に長期間閉じ込めストレスを与えると脳の海馬に変化があらわれました。 海馬は記憶を司り感情にも関わる場所です。変化が起きていたのは海馬を構成する神経細胞でした。脳にあふれたコルチゾールが原因となり海馬の神経細胞が蝕まれ、突起が減少したと考えられます。今、こうした海馬の損傷がうつ病の発症にもつながる可能性が指摘されています。ストレスを受けた時、体が反応しストレスホルモンが分泌されるのは本来私たちの体にそなわっている自然な反応です。それが一体なぜ脳の破壊という異常な事態を引き起こしてしまうのでしょうか?

 
脳を破壊するストレスホルモン

 
 そもそもストレス反応は太古の昔、私たちの祖先が厳しい自然の中で生き残るために身に着けたものでした。生命の危機に直面した時、心拍数を上げるなどの反応を起こすことで体を動かしやすくします。そして緊急事態が去った後、ストレスホルモンの分泌は止まりました。ところが天敵がいなくなった現代、仕事上の様々なことや人間関係などが天敵に代わって私たちに精神的な負担をかけるようになりました。こうしたたて続けのストレスに私たちの体は休む間もなく反応し続ける状態になっています。太古の昔には想定されていなかったほどの絶え間ないストレスが、コルチゾールの過剰な分泌を引き起こし、脳を破壊していたのです。
 さらに、こうした状況を悪化させるもう一つの仕組みが最新の研究から見えてきました。 それは私たち人類にそなわった記憶力や想像力です。例えば、上司の厳しい叱責など大きなストレスにさらされた場合、上司が目の前からいなくなった後も家で叱られたことを思い出したり、また明日も叱られるかもと想像したり。そのたびに脳はストレスを感じ、ストレス反応を起こします。このように目の前の現実についてではなく過去や未来について考えをめぐらせてしまう状態は「マインド・ワンダリング(こころの迷走)」と呼ばれます。最新研究では、このマインド・ワンダリングが私たちが生活する時間の非常に多くを占めることが分かっています。

 

うつ病の海馬萎縮


  昔は、脳についてのことは、ほとんどわかっていませんでしたが、近年の脳画像解析の進歩により、さまざまな発見がありました。
 
   これまでうつ病は、脳の器質的な異常は無いとされてきましたが、MRIによるうつ病患者の脳の萎縮が多数報告されています。
  この仮説は、脳の中の海馬と言う、主に記憶を司る部位に萎縮が起こることが、うつ病の原因とする説です。海馬萎縮はストレスにより起こると考えられています。
  海馬という記憶や情動をつかさどる脳の部位の萎縮が、うつ病の原因だとする説です。 通常、神経細胞は病気でなくても少しずつ死んで行っていますが、それと同じペースで新しく細胞が作られるので、大きさが保たれるようになっています。
 しかしうつ病の人はそのサイクルに異常があるとする説です。脱毛に似ています。生えるペースと抜けるペースが伴わないといった状況と考えるとわかりやすいと思います。

 
海馬萎縮の原因

 

  人はストレスを受けると、コルチゾールといわれるホルモンが大量に放出されます。コルチゾール自体は本来、人体に必要なホルモンですが、大量に放出されると、海馬の死を促す作用があるのです。そのため、コルチゾールの値が高いほど海馬萎縮を起す傾向があります。
  要するに、ストレスにより、コルチゾールがたくさん作られ、それが脳にダメージを与えるというわけです。

 

  また、脳由来神経栄養因子(BDNF)や、グリア由来神経栄養因子(GDNF)などの神経細胞の成長に必要な栄養因子がうつ病患者では低下するため、うまく神経が新生しないとも言われます。
 

  神経栄養因子の低下は、幼少期に心的外傷体験のある者に、良く見られる傾向と言われており、実際に、幼少期の心的外傷体験のあるうつ病患者と、そうでないうつ病患者の海馬体積を調べたところ、心的外傷体験があるうつ病患者の、左側海馬体積が優位に減少していることがわかり、うつ病になりやすい素因に、幼少期の心的外傷が影響しているとする報告があります。


ストレスに強い人・弱い人の違い、コントロール・アビリティ


 また、ストレスに強い人と弱い人が自ずから存在するようです。
 

 ストレスに強い人には、物事にくよくよしないプラス思考の人が多く、困ったときに助けを求められる仲間がいたり、逆に困っている仲間には進んで手を差し延べたりする人が多いとのことです。そして、仕事以外の趣味や娯楽で結びついた仲間を多く持つ人も、ストレスに強いようです。
 

 意外にも、会社の経営者や社会的地位が高い人にはストレスに強い人が多いそうですが、それは「コントロール・アビリティ」、つまり自分自身をコントロールする力が高いせいであると言われているようです。
 通常、そのような人は責任の重い重要な仕事をしているはずですし、様々なネットワークを持って多くの人間関係を築いているものです。そのため、ストレスは人一倍多いのではないかと考えられますが、自分自身を適確にコントロールできる高い「コントロール・アビリティ」があるからこそ、そのような立場で仕事ができるようになったのではないかと考えられていて、認知症になりにくいというデータもあるそうです。
 
 一方、ストレスに弱い人の中には、生真面目で完璧主義であったり、問題が起きても自分だけで抱え込んでしまったりして、自信がなく自己主張も苦手である人が多いようです。

 

ストレスに強い人弱い人 その原因とは?

 
 その要因の一つとして注目されているのが生まれ育った環境です。
  ハーバード大学では子供の頃に強いストレスを受けた人の脳に、30年後どのような影響があらわれたかを調べました。すると脳の扁桃体に変化が起きていることが分かりました。子どもの頃に受けたストレスが強い程、大人になって扁桃体が大きくなる傾向があることが分かりました。扁桃体が大きくなると、小さなストレスにも反応するようになってしまうと考えられます。

 
 海馬がストレスによりダメージを受ける詳しいメカニズムはまだ解明されていないようですが、脳の中にある神経伝達物質「興奮性アミノ酸(グルタミン酸)」やセロトニンという物質が関与しているのではないかという研究結果がいくつかあるそうです。
 それらの研究はまだ動物実験の段階ですが、興奮性アミノ酸やセロトニンの作用を薬で抑えることにより、海馬のダメージを防ぐことができたそうですから、人間においても治療可能となる日が来れば、アルツハイマー病や認知症の予防にも役に立つことでしょう。

 
体に
及ぼすストレスの影響


(1)ストレスとマグネシウム


 通常、ストレスがかかるとアドレナリンが分泌されます。
 アドレナリンによって心拍数が上がって、血圧上昇、血管収縮、筋肉収縮が起こります。
  こうやって外部からのストレスに身体が対処しようとするわけです。しかし、こういった作用には必ずマグネシウムが必要で、ストレスがかかる状況が続けば、マグネシウム欠乏に陥ります。
 ストレスの研究で有名な、ハンス・セリエによれば、身体の短期的な闘争反応、逃避反応から、慢性的ストレスに移行する際にもマグネシウムが消耗されると言います。
 また副腎(ストレス調整臓器)は、コルチゾールやストレスホルモンであるノルエピネフリンを作り出しますが、ノルエピネフリンはアドレナリンに似た作用を示し、同じくマグネシウム不足を生じさせます。
 またストレスによる副腎の酷使は、マグネシウム不足を生みますが、体内のマグネシウムレベルが低い時にストレスにさらされると、より多くのアドレナリンが放出されてしまうのです。
 アドレナリンは、イライラや怒りっぽさ、短気、感情の爆発などを作り出すので、まさに悪循環の流れが出来上がるわけです。こういった悪循環をストップさせるのには、マグネシウムレベルを回復させることが重要になってきます。
  またストレス反応が続く間は、アドレナリンの放出を促進するのにカルシウムが必要とされますが、元々カルシウムが過剰になっているとアドレナリンが溢れかえってしまいます。しかし十分にマグネシウムがあれば、余剰カルシウムを抑えてくれ、通常レベル以下にしてくれるので、ストレス反応が抑制されます。


 ストレス状態にある人の尿に含まれるマグネシウム濃度を測ると通常時に比べてマグネシウムの排泄量が増えています。
 これは、ストレスに対する防衛反応として、ノルアドレナリンというホルモンが分泌されるときにマグネシウムが消耗されたためです。
 強いストレスを感じると体内のマグネシウムがどんどん使われ、益々ストレス状態が悪化するという悪循環に陥ります。


マグネシウムはストレスによって奪われます。


 ストレスにより起こる現象で、例えば甘いものを食べることも体にとってはストレスになります。


甘いもの=ストレス


 ちょっと結びつかないないかもしれませんので、どういうことか説明します。
 まず、甘いものや小麦を食べると血糖値が急上昇し、それを抑えるためにインシュリンが分泌され、今度は血糖値が大幅に下がります。すると、今度は血糖値を上げるために副腎からアドレナリンが放出されます。人体には低血糖に対し数段階の回避システムが用意されています。
 血糖値が約65-70mg/dLに低下すると、 血糖値を上げるホルモンであるグルカゴン、アドレナリンが大量に放出され始めます。
 血糖値が約60-65mg/dLに低下すると、 三番目の血糖値を上げるホルモン、成長ホルモンが放出されます。
 最後に血糖値が60mg/dLをきるようになると、 最後の血糖値を上げるホルモン、コルチゾールの分泌が亢進します。
 血糖値を上げるために分泌されるホルモンの順番は、①グルカゴン、アドレナリン②成長ホルモン③コルチゾール です。
 血糖値を上げるためのアドレナリンは、他にも心臓のポンプ機能を速めたり、筋肉を活性化させたりします。アドレナリンは闘争反応、逃避反応を刺激します。
 すると、マグネシウムはアドレナリンによって緊張状態になった筋肉や臓器を弛緩させるために消費されます。
 このため、アドレナリン由来のこういった機能亢進にはすべてマグネシウムが必要になり、消費されます。
 「ストレス⇒アドレナリン放出⇒マグネシウム消費」という流れがあるわけです。
 マグネシウム不足は、ミトコンドリアの働きを悪化させてきます。


(2)ストレスと脳内セロトニン


 ストレスを受けると、脳にある視床下部がそれを感知し、副腎から副腎髄質ホルモン(カテコールアミン)と副腎皮質ホルモン(コルチゾールなど)の分泌を促します。また間脳の橋の青斑核にあるノルアドレナリン神経からはノルアドレナリンが、交換神経末端からはアドレナリンが分泌されます。
 さらに、ストレスが続くと交感神経が過敏となり、アドレナリンやノルアドレナリンの分泌が高まります。
 セロトニンは過剰に分泌されたこれらのホルモンを抑制して、自律神経のバランスを整える働きも担っています。人間の感情の基本は、"快"と"不快"です。快を感じた時にはドーパミンが分泌され、不快を感じた時にはノルアドレナリンが分泌されます。どちらにしても過剰の分泌は問題ですので、この時、セロトニンが働いて過剰分泌にブレーキをかけます。
 脳の中で”快・不快”を感じるのは大脳辺縁系といわれる場所です。辺縁系には記憶の中枢である「海馬」や、情動を感じる「扁桃体」があります。扁桃体の刺激は視床下部という場所に伝わり脳内に色々なホルモン物質が出て自律神経を刺激します。幸せな気分はセロトニンやエンドルフィンが放出され、不快や恐怖ではアドレナリンやノルアドレナリンが放出され交感神経の働きを強めます。
 嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記憶”を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。


  このようにして、体がストレスを受けると、最終的にストレスの影響を緩和するために副腎皮質ホルモンが分泌されます。
  副腎気質ホルモンはセロトニンが神経細胞を伝わっていく時にセロトニン回収口を塞いでしまいます(脳内セロトニンは生成量が少ないので、8割程度は回収しながら溜まりを作り、一部だけを神経の伝達に使う仕組みになっています)。
  副腎皮質ホルモンが回収口を塞ぐと、一時的に神経伝達に使われるセロトニンは増えるのですが、ストレスが長く続くと貯まりが少なくなって、セロトニン不足を起こすことになります。
 このようなことが繰り返し起きますと、セロトニンの再回収口は完全に機能を失い、慢性的なセロトニン不足を招きます。
 縫線核に細胞体を持つセロトニン神経系(セロトニンが神経伝達物質)は脊髄後角でシナプス接続して、痛みを抑制します。


  以上のことから、慢性的にストレスに晒されることによって、「脳内セロトニン不足」を来すことによって、痛みを制御ができなくなって、痛みを感じやすくなります。さらに、うつ病を引き起こすことになります。


(3)ストレスと活性酸素


ストレスがたまると活性酸素が増える


 活性酸素を増やす要因には、食生活の乱れやタバコや大量の飲酒、過激なスポーツ、紫外線など、さまざまな要因があります。しかしそれだけではなく、ストレスも重要な要因のひとつです。代表的なメカニズムには、次のようなものがあります。


1.ストレスを受けると、ストレスに対抗する「副腎皮質ホルモン」が分泌される。この分泌と分解の過程で、活性酸素が発生します。
 2.ストレスは、「抗酸化ビタミン」ともいわれるビタミンCを大量に消費します。
 3.緊張が続くと血管が収縮し、一時的に血流が阻害されます。その後、血管が拡張したときに、血液が勢いよく流れますと、大量の活性酸素が発生します。
 4.ストレスがあると高血糖になりやすい。この状態も、活性酸素が増える一因となります。


  イヤな仕事や勉強、人間関係などのストレスも、体内で活性酸素がドッと増えます。よく、ストレスから胃潰瘍、十二指腸潰瘍になった、とききますがこれも活性酸素が犯人です。ストレスにより血管が強く収縮し血流障害がおき、虚血状態に陥った後、血流が再開する時大量の活性酸素がドッと洪水のように発生するのです。
  ストレスホルモンの一種であるコルチゾールが免疫機能の重要な役割をになうNK細胞の機能を停止させ、生成時に活性酸素も発生させます。


 ストレスが体にダメージを与える理由は、体内のあらゆる栄養素が消耗し、瞬間的に血管が収縮して血行が悪くなります。この血流が再開されるときにドッと大量の活性酸素が発生するのです。
 体内のあらゆる栄養素が血液中に動員され、筋肉や副腎といったストレスとの闘いで活躍する組織に優先的に送られるのです。その一方、そのほかの組織は逆に栄養を絞りとられる結果となります。ストレスに対処するのに直接関係しない臓器(消化器や皮膚など)に送られる血液量が最小限に絞られます。
 ストレスが解消されると、これらの臓器にも血液が戻ってきます。このときにも、活性酸素が大量に発生すると考えられています。現在のように繰り返しじわじわとストレスが続く状況では、体にとって大きな負担となります。例えば、ストレスがかかると心拍数や血圧が上がるのは、身に迫る危険に対抗するために自律神経により様々な臓器が調整された結果です。身に迫る危険に対抗するための、体の仕組みになっています。


  もう少し詳しく説明しますと、精神的なストレスによりアドレナリンが分泌されると、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)は上がり、体脂肪も分解され始めるため体脂肪からの遊離脂肪酸が生成されるようになります。
 本来、これらの体の変化は獣(外敵)などに襲われた時に人間が外敵と戦ったり逃げたりする時にエネルギー不足を起こさないための緊急的体勢の備えとして身に付いたものと考えられます。
  通常、体脂肪のエネルギーへの利用は空腹時(食事を摂らない時)にエネルギーの不足分を補うために生じ、生成した遊離脂肪酸は直ちに体に必要なエネルギーとして使用されます。
 しかし、エネルギーとして必要性がほとんどなく、単に精神的なストレスだけによる緊張のためだけに生成した遊離脂肪酸は血中の遊離脂肪酸濃度を高めるだけの結果となります。ストレスから開放されると消費されるあてのない遊離脂肪酸は一時的に血中の濃度を高めるだけの結果となってしまうのです。
 その結果、血小板に直接作用して血小板の凝集を促進することや脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させるなどの現象を引き起こすと考えられます。
 活性酸素はミトコンドリアDNAを傷つける最大の要因になっています。 


ストレス対策はどのようにすればよいのでしょうか


 現代社会ではストレスは避けて通れません。しかし、その過剰な蓄積は、胃潰瘍、高血圧など身体への影響だけではなく、鬱(うつ)など心への影響、さらに”海馬を傷つける”ことが心配されます。
 これにどう対応すればよいのでしょうか。ストレス回避が不可能だとすれば選択肢は2つしかありません。ストレスを解消するか、ストレス耐性を持つことです。
 ストレスに強い心と体を作るために非常に重要な神経があります。脳内のセロトニン神経です。この神経がストレス耐性を高めるカギを握っています。


セロトニン神経の強化でストレス耐性は高まる


 150 億もあると言われている脳の神経細胞の中で、セロトニン神経はわずか数万個しかありません。にもかかわらず、脳全体に情報を発信しているという点で非常に珍しい神経なのです
 ストレス耐性を高めるためには、セロトニン神経を強化することが大切になります。
 「セロトニン神経を活性化するためには、「セロトニン生活」を着実に行うことです。
  そして、有酸素運動を行うことによって、ストレス解消を行うことも大切です。


「セロトニン神経の活性化」の原則


(1.)早寝早起きの規則的な生活を心がける


 セロトニンは、太陽の出ている日中に分泌されやすく、睡眠中は日が沈んでからは分泌が少なくなります。これはメラトニンの働きと関係していますが、人間が本来持っている生活リズムは『日中に活動し夜は寝る』と言うもので、この原則を守ることがセロトニン神経の活性化に効果的だと言われています。


(2.)太陽の光を浴びる


 セロトニンは、睡眠ホルモンであるメラトニンと相対する性質があります。
 セロトニンは脳の覚醒を促し、メラトニンは睡眠に作用します。
 メラトニンが分泌している間はセロトニンの分泌は少なく、逆にセロトニンが多く分泌されている間はメラトニンの分泌は少なくなります。
 太陽の光(のような非常に強い光・明かり)を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし、代わりに脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活発化されるのです。
  昼夜逆転の生活をしていたり、日中部屋の中にばかりいると、セロトニンとメラトニンの分泌のバランスが崩れ、不眠症になったり、片頭痛が起きやすくしてしまうのです。
  毎朝日光を浴びる行為は、セロトニンを鍛えるだけで無く、生活リズムを整えることにもつながります。
  できれば、紫外線が強くなる前の時間帯、日の出から8時までの間が良いでしょう。
  時間は5分~15分ほどで構いません。両手を広げ、全身で朝陽を浴びてみましょう。
  外に出るのが苦手な方は、カーテンを開け、部屋の中でも構いません。
 全身に光を浴びることを意識し、できれば「気持ちいい~」と言葉に出してみましょう。
そもそも地球上のほとんどの生物は太陽のエネルギーなくては生きていけません。

 この自然の恵みを全身に浴びることで、ミトコンドリアの遺伝子のスイッチがオンになると同時に、脳の中では、視交叉上核というところが反応し、体内時計がリセットされます
 体内時計とは、私たち自身のからだ、臓器や器官がそれぞれもっている時計で、地球の自転(24時間)とは1時間ずれ、体内時計は1日25時間といわれています。この時間を調整し、地球の自転とあわせてくれているのが朝陽なのです。ですから、放っておくとリズムが崩れ、生活リズムが乱れていきます。そのリズムをもとに戻してくれるのが「朝陽」なのです。また、太陽の光は、脳の中にある視交叉上核から松果体を刺激し、セロトニンやメラトニンというホルモンをつくってくれます
 このふたつのホルモンは、ミトコンドリアの天敵「活性酸素」を除去する働きがあります。メラトニンは睡眠ホルモンとして、セロトニンは心を鍛え、バランスを整えるホルモンとして、有名ですが、この二つとも、ミトコンドリアにとって天敵の活性酸素を除去する働きがあります。
  活性酸素は、細胞を傷つけたり壊したりする働きがあるので、ミトコンドリアだけでなくからだにとっても天敵で、片頭痛の原因でもあるのです。朝陽を浴びることは、この活性酸素を減らすホルモンをだす効果もあるのです。


(3.)リズミカルな運動をする


 スクワットや階段の昇り降りなど、一定のリズムを刻む運動を反復して行うとセロトニン神経が活性化されるとされています。
  先日国民栄誉賞を受賞された、女優の森光子さんも70歳から体力維持の目的でスクワットを始めて、これまでずっと継続して来たそうです。
  89歳でも舞台に立ち続ける彼女の元気の源も、このリズミカルな運動にあるといえるでしょう。現在はなくなられてしまいましたが・・
 同様に活発な活動をされている黒柳徹子さんもスクワットを毎日しているのも知られています。
 スクワットに限らず、『ウォーキング』や『深呼吸/腹式呼吸』、最近人気の『フラダンス』など、リズムの良い運動を継続して続けていくことが、セロトニン神経の活性化に役立つとされています。
 また、こういった運動を5分以上行うとさらに効果的であると言われています。
  リズム運動とは、一定のリズムで筋肉の緊張と弛緩を繰り返す運度であり、この条件を満たしていれば、何でもいいのです。ウォーキング、ジョギング、自転車、ダンスなどです。一番簡単なのは、ウォーキングです。歩くとき心がけることは、できるだけリズミカルに体を動かすことです。リズムに乗って軽快に歩くと、セロトニンの分泌が盛んになってくるのです。
 しかし、ウォーキングで気をつけるべきことは、ダイエットを目的とした運動とはぜんぜん違うということです。ダイエットを目的とする運動は、いかにエネルギーを消費して脂肪を燃焼させるかに重点が置かれますが、セロトニン神経を鍛えるのはそんなに激しい運動でなくてよいのです。
 一番ベストなのは、朝晴れている日は外に出て適当に歩くことです。
なぜなら、太陽の光を浴びながら、リズム運動ができるからです。


(4.)食事をする際に、よく噛む


 食事の際は必ず物を噛みますね。
 このものを噛む動作(咀嚼) も、一定のリズムを伴った運動であるといえます。
 上述のリズミカルな運動と同じく、セロトニンの活性化に役立ちます。
 「運動はちょっと苦手・・・。」と、考えられている方でも、食事は必ず取るでしょうから、食事の際によく噛んで食べることを心がけてみてはいかがでしょうか。
 『ものをよく噛む』と言うことは、栄養の効果的な摂取や、消化を助けることにもつながりますし、あごの筋肉の維持など、セロトニンの活性化以外にも様々なメリットがありますし、どなたでも簡単に試せる方法です。
  なぜ、唾液=つばを出すのがいいのかというと、唾液には、アミラーゼと言う酵素が入っていて、食べたものを消化することを助けてくれるほか、成長ホルモンも含まれていま
 す。この成長ホルモンは、傷ついた細胞を修復したり、新陳代謝を促し老化防止するなどミトコンドリアを守ってくれる要素があるからです。
  すなわち、唾液の量が多いと、それだけミトコンドリアが守られ、数が減るのを防いでくれると言うことです。また、味蕾の感覚を鋭敏にするとも言われています。
  成人が一日に出す唾液量は、0.5?から1.5?といわれています。
  平均値だけ見ても一リットルもの開きがあるのです。
  この量を増やすだけで、あなたのミトコンドリアは守られ、若さを保つアンチエイジングの効果もあります。

 
 (5.)グルーミングという「人とのふれあい」


 グルーミングは、仕事を終えた後の「オフの時のセロトニン活性」という意味で、太陽の光とリズム運動とは少し異なります。グルーミングは、「猿の毛づくろい」としてよく知られていますが、その理由は動物行動学においては、はっきりしています。動物行動学では、グルーミングは「ノミ取りの行為だけではなく、群れ社会のなかで発生するストレスに対して、緩和を試みている行為」として認識されつつあります。
 それを人間社会にたとえますと「人と人とが近い距離でふれあうこと」が原則になります。具体的には、「仕事後の赤ちょうちん」「おしゃべりをしながらの井戸端会議」「家族で食事をする」、またそれに近い行為で「お風呂屋さんで一緒にお風呂に入る」というのもあります。これらの行為の結果として、何になるかといいますと「疲れが取れてストレス緩和になる」のです。
 仲間と一杯やるというのもグルーミングですし、女性のよくやっている井戸端会議もグルーミングの一種なのです。全員が同じ場所にいて、同じ空気を吸いながら、打ち解けて会話を交わす──これがグルーミングなのです。
 親子や恋人同士のスキンシップ、家族や友人とのおしゃべり、マッサージ、髪をすく、撫でる、などの触れ合いがグルーミングとされ、これらのスキンシップや人との触れ合いがセロトニンの活性化とストレス耐性の向上に効果があるとされています。
 家族や恋人、ペットとのスキンシップも、セロトニンの分泌を増加させます。メールや電話ではなく、実際に顔を合わせ、表情や仕草を間近に感じながら、笑ったりすれば、きっとセロトニンがたくさん分泌されます。


セロトニンとオキシトシン


 セロトニンが快適な生活を送るために必要なことは上述の通りですが、近年、オキシトシンという神経伝達物質も注目されています。
 オキシトシンは愛情ホルモンまたは幸福ホルモンを呼ばれており、この物質が十分に分泌されていると、心が満たされ幸せな気分になります。
 哺乳類だけが持っている物質と言われています。
 特に、女性が出産する時に、陣痛を促進させるためにも分泌されます。母乳の分泌も促進します。子供に愛情を抱き育むためには欠かせないホルモンです。
もちろん、母親以外の女性や男性にも分泌されます。
 家族愛、夫婦愛、親子愛、カップル間の愛情など、心の中で愛情を十分に感じていると、オキシトシンは分泌されます。オキシトシンを活性化するには、愛情を育む、人に親切にする、感情を率直に表す、などが効果的です。
 セロトニンに加えオキシトシンも強化して幸福感を高め、充実した生活を送りましょう。


 以上が、セロトニン神経の活性化の原則です。


  ミトコンドリアの働きの悪い方々は、同時にセロトニン神経の働きが悪くなっております。さらに、ストレスに晒されますとさらに悪化してきます。これに対して、"ストレス耐性の体つくり"が必要になってきます。このため「セロトニン神経」をいかに鍛えていくことが課題になってきます。
  セロトニンを増やすには、食事から行う方法もありますが、ここでは省略します。
      https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12169932231.html


 以上のようにして、ストレス対策を行うことによって、海馬の萎縮を防ぐ必要があり、これが認知症予防につながっていきます。