海馬は非常に高性能で記憶の司令塔とも言える重要な器官ですが、大変繊細で壊れやすい精密機械のような性質を持っています。
とても強いストレスにさらされたときにも海馬は壊れてしまいます。
さらに、酸素不足で脳がダメージを受けると、最初に海馬あたりから死んでいくといわれています。
今回は、「酸素不足の影響」についてです。
(1)認知症と血液循環
認知症と血液循環はとても深い関係にあります。
アルツハイマー型認知症は40歳ころからその兆しが起こり本人も気づかないうちに進行して60歳以降に認知症の症状として現れます。
認知症を予防するには血液循環を促進することです。
血液循環を促進するためには、血管を若返らせて血液循環を高め高血圧や動脈硬化を予防することです。
血管年齢を若返らせるには血管内皮細胞が重要なカギになります。
血管は加齢や生活習慣など様々な要因で柔軟性が失われて血管壁が厚くなったり硬くなったりします。
血管の柔軟性が失われることを動脈硬化といいますが、加齢とともに血管が硬くなっていくのは老化現象といえます。
しかし、最近では若い人にも動脈硬化が進行しているケースが増えています。
血管は、動脈、静脈、毛細血管の3種類があります。
血流は、心臓→動脈→毛細血管→静脈→心臓、の経路で循環していますが、心臓から出て全身に酸素や栄養素を送る動脈は「外膜」「中膜」「内膜」の3層の構造をしており、特に「内膜」は薄い線維性の「内弾性板」と血流と接する部分は「血管内皮細胞」で構成されています。
「血管内皮細胞」が入れ替わるターンオーバーは約1000日といわれています。
通常お肌のターンオーバーは約28日といわれていますので、内皮細胞のターンオーバーはお肌の約30倍の期間かかることになります。
しかし、内皮細胞が一度に入れ替わるのではなく、約1000日をかけてゆっくりと新しい細胞に入れ替わりますので、毎日の血管ケアを始めれば徐々に血管年齢も若返り健康的な血管に変わります。
「血管内皮細胞」の働きは
血管の一番内側に張り巡らされている血管内皮細胞は、血液と常に接しているため血管を守り血管を強くするように働いています。
血管内皮細胞が正常で健康な状態であれば、血管はイキイキして血管年齢を若く保つことができます。
1.血管内皮細胞は血管を守るバリア機能
血管内皮細胞は、血中に含まれている不良な成分が血管壁に侵入しないようにブロックしています。
2.血管内皮細胞は血管を拡張するNO(一酸化窒素)を発生
血管内皮細胞は血管を良好に保つNO(一酸化窒素)を発生させて血管壁に刺激を与えて拡張させ血流を促進させる働きがあります。血管が拡張すると血圧が下がり血管への負担が軽くなります。
また、NO(一酸化窒素)が血中に入ることで血液がかたまりにくくなって、脳梗塞や心筋梗塞の原因になる血栓ができにくくなります。
健康な「血管内皮細胞」はアテローム性動脈硬化を防ぐ
血管の内皮細胞のターンオーバーが正常に行われ内皮細胞が強いバリア機能を保持していればアテローム動脈硬化の原因となるプラークが発生しても退縮して小さくなり血管壁が修復されます。
また、たとえ動脈硬化がある程度進行していても血管内皮細胞が再び強固なバリア機能を持てば血管壁の傷も修復され血管年齢を若く保てることがわかっています。
内皮細胞がイキイキして健全になれば血管を拡張させて血圧を下げる作用があるNO(一酸化窒素)が発生して血栓もできにくくなり良いサイクルが生まれます。
また、太い動脈の内皮細胞が健全になると、老化が進行していない段階であれば、その影響が細い動脈にも波及して血管全体が若々しく健康な状態に回復します。
血管内皮細胞を傷める原因を減らす
活性酸素を減らす
活性酸素は血管内皮細胞に傷害を起こします。
血管内皮細胞を傷める原因は活性酸素と高コレステロールです。
血中の悪玉のLDLコレステロールが多くなると血液がドロドロ状態となって血圧も上昇して血管内壁に圧力をかけます。
また、活性酸素とLDLコレステロールが結合して酸化コレストロールとなって血管内皮細胞の間隙から血管内壁に入り込み、免疫細胞のマクロファージが働いてアテローム性動脈硬化の原因になります。
この様な状態を引き起こさないためには、喫煙者においては禁煙をしましょう。
また、保存料や着色料などの食品添加物や過剰な飲酒を避けることです。
更にストレスも血圧を上昇させる作用があるので、ストレスの軽減にも配慮する必要があります。
血圧を上げる塩分を減らす
塩分の過剰摂取は血圧を高めて血管の内壁に傷をつける。
血圧が上昇すると血管の内皮細胞を傷つけてしまいます。
この血圧が高くなる原因には「塩分の摂り過ぎ」と「肥満」が関係しています。
日本人は昔から塩分の多い食品が多いことが影響して、諸外国に比べて塩分の摂取量が多くなっています。
脂質と糖質を減らす
血液がドロドロになる原因として脂質と糖質の摂り過ぎがあげられます。血液がドロドロになれば血流が滞るため血流を高めようとして血圧が上昇します。
食べ過ぎや栄養のバランスを欠いた悪い食習慣を改善して、適度な運動を取り入れることが重要です。
血液が順調に流れていれば血管内皮細胞に適度な刺激が加わりNO(一酸化窒素)の分泌が促進されて血管を拡張して血圧が低下し血栓も予防されて好循環が生まれます。
内皮細胞を元気にして血管を若返らせる食事の順番
食事の最初に野菜を食べる 食事の2番目にはお肉等のたんぱく質を食べる 食事の最後にごはんやパンなどの炭水化物を食べる
最初に食物繊維 → 2番目に脂質 → 最後に炭水化物
血管内皮細胞を元気にして血管を若返らせるための食事の順番は、まず野菜などの食物繊維を摂取し、次に肉などの脂質、そして最後にごはんやパンなどの糖質を食べるようにしましょう。
血糖値を上昇させる炭水化物を最後に食べることで糖質の吸収を抑えて血管の内皮細胞を守りましょう。
脳の血液循環を促進する方法は食べ物をよく噛んで咀嚼することです。よく噛むことで脳の血液循環が約50%も増加するという研究結果が報告されています。食事の時はとにかくよく噛んで食べましょう。
噛む回数をかせげない時は間食としてガムやスルメなどをおすすめします。
(2)貧血の関与
1.鉄不足
電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須です。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。
このように、鉄分の不足は、ミトコンドリアのエネルギー代謝がスムーズに行かなくなります。その結果、ミトコンドリアの機能低下を招くことになります。
女性では鉄欠乏性貧血になる人が多く、20代、30代、40代と年齢が高くなるにつれて貧血の人が増える傾向にあります。40代になると女性の約3割が貧血になっています。
体内で鉄が減少すると、貯蔵鉄であるフェリチンが使われ減っていきます。フェリチンが不足すると血液中の鉄分も徐々に不足し、最後にヘモグロビンが減少し貧血が起こります。
貯蔵鉄のフェリチンの理想値は100~300 で、男性の99.9%はフェリチン100以上です。 50歳以上の女性の80%はフェリチン100以上です。
しかし、15~50歳女性の80%はフェリチン30以下の鉄不足で、40%はフェリチン10以下の深刻な鉄不足です。
鉄欠乏性貧血にまで至らない鉄欠乏状態である方々は成人女性の約40%存在します。
鉄は体内で以下のような様々な重要な役割を果たしています。
1.鉄は赤血球の重要な構成要素として酸素の運搬に関わっています
全身の細胞へ酸素を運び、蓄えます。
・酸素の運搬 : 赤血球のヘモグロビン
・酸素の備蓄 : 筋肉細胞のミオグロビン
2.エネルギーを生み出す
ミトコンドリアでATPを産生します。ATPは細胞の中にあるミトコンドリアで作られます。そして、ミトコンドリアの中には鉄が保存されています。
たとえば、過度なダイエットなどで鉄分が不足すると、ミトコンドリアに蓄えられていた鉄が使われて減っていきます。
鉄が減ればATPを充分に作れなくなりますので、体温を維持することができず、冷え症が起こってくるのです。鉄不足がもっと進むと貧血になりますが、冷え症はその前に起こる現象です。
電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須なのです。すなわち、鉄不足があると、ATP不足と乳酸蓄積を生じます。ミトコンドリアはチトクローム系酵素「ヘム酵素」を含みヘム鉄が材料のため、ミトコンドリアの多い臓器は鉄の赤い色をしています。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。鉄は、ヘモグロビンの材料になるだけではなく、各細胞のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の触媒のような働きをします。
3.活性酸素から体を守る
抗酸化酵素(カタラーゼ・SOD)の補助因子として働きます。
カタラーゼやグルタチオン・ペルオキシターゼなどの抗酸化酵素の構成要素となって活性酸素の消去に関わっています。
4.コラーゲンの合成を助ける
酵素シトクロムP450は鉄を補因子として、ビタミンCを補酵素としてコラーゲン特有のアミノ酸 (ヒドロキシプロリン・ヒドロキシリジン)を合成します。これは皮膚に関連し、美肌に影響があります。
5.有害物質の排泄を助ける
肝臓に多い水酸化酵素シトクロムP450の補助因子として、水に溶けやすく排泄されやすい形に換えます。ミトコンドリア内でシトクローム酵素の構成成分としてATPの合成に重要な働きを負っています。
6.神経伝達物質(脳内セロトニン)の産生に関わっている
鉄分が不足すると、ヘモグロビンが充分に作られないので、貧血が起こります。貧血が起こると、脳内にも酸素や栄養素がしっかりと届かなくなるため、充分なセロトニンを合成することもできなくなります。
鉄分は実はセロトニンなどの神経伝達物質を作るときの酵素を助ける「補酵素」として機能しているため、鉄分が充分潤っている体内ではセロトニンがスムーズに作られますが、鉄分不足だと、セロトニンの生成自体が出来なくなるわけです。
つまり、セロトニンの合成には、トリプトファンとビタミンB6とマグネシウムとナイアシンが必要!であり、実は「鉄分」も必要なのです。
トリプトファンというアミノ酸からセロトニンができる過程や、チロシンというアミノ酸からドーパミンができる過程で、鉄が必要になってくるのです。
鉄不足はエネルギー不足と心得ましょう
鉄については新しい認識として「鉄不足=貧血」ではなく、「鉄不足=エネルギー不足」だと思って下さい。というのも鉄はエネルギーを作り出すうえで欠かせない成分なので、鉄が不足するとエネルギー不足になります。
その結果、元気もでませんし、疲れやすいし、体温も上がらないので冷え症にもなりやすくなります。体のすべての機能が低下してしまうのです。
鉄が大事だと思えば普段から食事の中で症状が出ていない人でもなるべく鉄を摂るようにしていきましょうという風に考えて下さい。その時の鉄、食べ物で言えばやはりレバーです、それからお肉の赤身です、レバー嫌いな人はお肉の赤身でいいですからそれをしっかり摂って下さい。そしてひじきにも入っていますが、少ないのでひじきだけで鉄をまかなうのはかなり難しいです。小松菜、ほうれん草に至っては鉄分が非常に少く、農薬を使っていますのでこれで摂るのもかなり厳しいです。バケツ1杯とか2杯とかのほうれん草を食べると賄えるかもしれませんがちょっと考えただけでも食べたくないです。それよりはお肉の赤身ということになってきます。
2.葉酸
葉酸を積極的にとっている人は、そうでない人に比べてアルツハイマー病のリスクが半分になる。(米・コロンビア大学)
葉酸は、赤血球をつくるのに必要なビタミンで「造血ビタミン」とも呼ばれます。鉄分と同様です。
葉酸が多く含まれる食品は、鶏や牛、豚などのレバー、緑黄色野菜や豆類、うなぎなど。葉酸はレバーや魚介類に豊富に含まれるビタミンB12と共同して働きます。
葉酸が不足すると血中のホモシステインが増加し、その結果、認知症が発症する前から知能が低下することが分かっています。
食事だけで十分な葉酸をとることが難しい場合には、サプリメントを利用するのもいいでしょう。
3。姿勢の問題
便利な生活送っているとその分、カラダを動かさない生活になりますがそうなると、呼吸して、取り入れる酸素の量も少なくなってきます。
体内の酸素濃度が不足している人は、知らず知らずのうちにさまざまな悪影響を受けているのです。空気中の酸素濃度は地球上のすべての生物に平等に与えられているのに、どうして人によって酸素が不足してしまうのでしょう?
それは「浅い呼吸」が問題なのです。
年をとってくるとカラダが硬くなってくるものですがこれもカラダを動かさなくなったことから筋肉に回ってくる酸素量の低下が関係しているともいわれています。
確かに、からだは、細胞でできていて細胞内のミトコンドリアで、ブドウ糖を燃焼して、エネルギーに変えてくれます。
カラダが硬くなっている状態は意識して深呼吸などをして酸素の供給量を上げるようにすると柔軟性が戻ってくることがわかっているようです。
カラダの柔軟性が増してくるということは深呼吸を行うことで、脳に供給される酸素の量も増えてくることになります。
そして、海馬など、認知症と関係する脳の組織にも十分量の酸素がまわってくるとそれだけ、認知症になるリスクも軽減されます。
また、年をとってくると重力の関係からか姿勢も悪くなりがちです。
背中が丸まってくると人が多いですがそうなると構造的に酸素を取り入れる量も少なくなってきます。
悪い姿勢にカラダを動かさない状態がプラスすると酸素の供給量も減ってきて、記憶力の低下から認知症の悪化を進めることにもなります。
これを是正するためには「胸を張る」ことです。
「えっ、胸をはることと酸素不足と関係があるの?」
と思う方がいるかもしれませんが、実はこの2つは大きく関係します。
理由は2つあります。 一つは「呼吸」です。
胸を張る動作は、胸郭を広げるので、肺が開き、それだけで酸素を、ゆっくりと、自然に取り込んでいきます。
2つ目は姿勢が良くなることです。
良い姿勢はあなたを美しくするだけでなく、考え方まで変えてしまう力があります。
それな何かというと、こころとからだはつながっています。
たとえば、肩を縮め、目線を下げたまま状態でいるだけで、なんだか暗い気分になってきませんか?
これを逆手にとると、胸をはった状態では暗いことが考えられなくなります。
なぜかというと、視線は自然に、前または上にいくからです。
人間のからだは視線を上に向けたまま、ネガティブなことが考えられないようにできています。
だから、胸を張っただけで、気分を明るく、自分に自信がもてるようになるのです。
試しに実験してみましょう。
次に、ゆっくりと「深呼吸する」ことです。
ミトコンドリアスイッチをオンにするのは光と酸素と言いました。
私たちの祖先となる真核細胞が生まれる前、もともとはミトコンドリアは酸素を食べる細菌でした。
その、ミトコンドリアの栄養源はたったふたつ それは・・・ 「酸素」と「ブドウ糖」
私たちが酸素がないと生きていけない理由は、私たちの細胞を動かしているエネルギーを作るミトコンドリアが、酸素がないと生きていけないからです。
だから、ミトコンドリアは、酸素が大好きなのです。
酸素を得るために必要なこと、それは、皆さんご存知、「呼吸」。
勿論、黙っていても、呼吸はしています。
しかし、私が提唱する呼吸とは、意識した呼吸。すなわち「深呼吸」です。
なぜ、深呼吸がよいかというと、ミトコンドリアはゆっくりが好きだからです。
どういう ことかというと、ミトコンドリアが酸素とブドウ糖からエネルギーを作る際、大変時間がかかります。(※注1)
※注1 ミトコンドリアがエネルギーを作る際、栄養素は一旦、アセチルCOAになり、そこからクエン酸回路系というところを経て、ATPを作ります。
ミトコンドリアは一度にたくさんのエネルギーを作れますが、その分時間がかかります。
逆に短期間にたくさん酸素がきてしまうと、ミトコンドリアがエネルギー変換できなかったものが、活性酸素として排出されてしまいます。
活性酸素にちょっと触れただけで、赤色の活性化したミトコンドリアが一瞬に青色=死んでしまうほど、ミトコンドリア=からだにとっては天敵です。
だから、急激な運動や、あまり激しいトレーニングは、からだに良くないのです。
40歳を超えたら、運動は、ウォーキングや太極拳などゆっくりしたものがお薦めです。
運動できないにしても、まずは、吐くことを意識した深呼吸をしてみましょう。
それだけでこころとからだが喜びます。
4.その他
吸った空気の中に酸素が足りないということです。もともと大気中に、酸素は約20%しかありません。それが近年、工業化で大気が汚染されています。加えて最近の建築は気密性が高いので、戸や窓を閉めると換気がされにくく、中にいる人間が呼吸するにつれて、酸素が減り二酸化炭素が増えていく傾向があります。それで、オフィスにこもりがちな現代人は、酸素不足になりやすくなっているのです。
ストレスとの上手な付き合い方
ストレスを溜め込まないための一番のオススメは、運動です。たとえばジョギングは、脳神経を発達させる物質を出し、前頭前野を活発にさせたり脳を活性化させます。運動は、アルツハイマー病の予防にも効果があることが分かっています。
また楽しめる趣味を持つことも効果的です。精神的な悩みを抱えていても、そのストレスにさらされる時間が長く続くことが脳にダメージを与えるのですから、そのストレスが連続しないように、自分が楽しいと思えるリフレッシュできる時間を持てばいいのです。
個人的にはRPG(ロールプレイングゲーム)がオススメです。仲間と会話しながらゲームを進めるのは、とても楽しく、適度に脳にも刺激があり、嫌なことを忘れられる恰好の時間となります。
大きなストレスがあっても、その問題がなかなか解決できない場合には、運動や趣味で、脳のリフレッシュタイムを持つようにして、ストレスが長時間持続しないようにして脳を守りましょう。
海馬を鍛える5つの方法
海馬は脳のなかでも最も重要な記憶や情報整理をつかさどっている場所で、パソコンでいればメモリーと同じ役割を果たします。そのため、海馬をいかに活性化させるかが記憶力アップにつながるのです。
では具体的に海馬を鍛えるのはどのようなことが必要なのか?それは体の筋肉と同じで、 運動によってより多くの記憶を覚えることができます。とはいっても、筋肉とおなじようなことをしても海馬を鍛えることができません。
海馬は脳の一部です。そのため、脳神経を発達させ、脳の神経そのものを増やすための行動が求められます。
では海馬を鍛えるのはどういったことをすればいいのか?一般的には次の5つが推奨されています。
1)ジョギング
2)速読
3)脳トレゲーム
4)なるべくテレビを見ない
5)気になる異性と接する
ではそれぞれのポイントについて具体的に説明していきます。
1)ジョギング
医学博士の征矢英昭氏がいうには、海馬を刺激するためには軽い運動をすることも有効だということです。具体的には心拍数でいうと1分間に90~100ぐらいの運動がベストだということです。
例えばちょっと速いウォーキングだったりスローペースなジョギングなどを1日10分するだけで海馬に刺激を与えることができます。これを2週間続ければ脳神経が増え、6週間続ければ認知機能が向上することが研究によって明らかになりました。
脳神経細胞は1000億個あるといわれており、1つの神経に1000個の神経がつながっているといわれています。こうした神経同士をつなぐ媒体となっているのが脳内ホルモン(神経伝達物質)で、この脳内ホルモンは運動によって脳が骨や筋肉を発達するためのホルモンを取り込むため、海馬が鍛えられるのです。
また、ジョギングの強度を高めることによって、海馬以外の部分が刺激され、認知力以外にも集中力や判断力に効果があるとされています。つまり、運動することは脳を刺激を与える効果があるため、日頃からジョギングをする習慣をつけることで、脳を活性化させることができるのです。
ただし、あまり激しい運動をするとストレスを感じてしまうリスクがあるので注意が必要です。あくまでも海馬を鍛えるのであれば、苦しくない程度の運動を心がけましょう。
2)速読
「早く読めるだけじゃない? 速読には脳を活性化させる効果もあります。もともと音読や黙読などといった“本を読む”ことによって脳は鍛えられるのですが、速読することによってより脳は活性化されます。
例えば、音読をすると脳内にセロトニンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されます。これによって抑うつ的な気分が開放され、勉強に対して意欲的な気分になります。
また、黙読は文章から自分の力だけでイメージをして想像力を発揮して読んでいかなくてはいけません。この黙読によって、暗記や記憶をするのに大切な右脳が活性化されます。
こうした、もともと脳の活性化につながる読書を速読によってより速く内容を理解することによって、脳に刺激を与え、海馬を鍛えることができます。ですので、記憶力を高める意味でも、速読は積極的に挑戦するようにしましょう。
とはいえ、速読はとにかく速く文章を読むことを指しているわけではありません。内容をきちんと理解しつつ、なおかつ読む速度を速めるのが速読です。
海馬を鍛え記憶力を高めるためにもぜひ速読にチャレンジしてみてください。
3)脳トレゲーム
近年、ゲームが非常に発達して脳をフルに活用するものが増えてきました。そのため、ゲームを使って海馬を鍛える・・・こともできます。
実は以前、オンライン麻雀を運営する会社が興味深いデータを発表しています。これは株式会社シグナルトークが、オンラインで脳の認知機能を測定するサイト「脳測」を運営しており、同社が運営しているオンライン麻雀「Maru-Jan」を日常的にプレイしている男女484人の脳機能を脳測でチェックしたのです。
この結果
「視覚性注意力」・・・物事を処理する際に、視覚情報に注意する能力
「短期記憶」・・・短時間(約20秒間)保持される記憶力
「エピソード記憶」・・・イベント(事象)についての記憶
の3項目については年齢が高くなるほどテストの結果が良いという傾向が表れたのです。 これは、麻雀で必要とされている記憶力やすばやい判断力がゲームをすることによって養われたと考えられています。
つまり、ゲームをすることによっても脳は活性化されるということ。ただし、どんなゲームでも良いわけではなく、麻雀や将棋のように頭を使うゲームでないと意味がありません。
その中に特におすすめなのが『数独』です。
数独とは、縦・横9マスずつあり、全ての縦列・横列・そして各3×3マスにそれぞれ数字が1~9が入る数字のパズルゲームです。これならば将棋や麻雀のように人を集める必要がなく1人でプレイすることができます。
こうした、頭を使ったゲームを使って脳を刺激することでも、海馬を鍛えることができます。また脳トレゲームは勉強と違ってストレスを感じず楽しみながら訓練できるため、脳を活性化するにはおすすめです。
4)なるべくテレビを見ない
脳の活性化に必要なのは【認知→判断→行動】の3つのプロセスです。このプロセスを行うことによって脳が活性化するわけですが、これらを全く使わないことが私生活の中であります。
それが『テレビを見る』です。テレビをぼーっと見てしまうと脳を活性化させるプロセルが“認知”の段階でストップしてしまうからです。
テレビを見る時、まず視覚情報と聴覚情報が脳内に入り、それぞれ視覚野・聴覚野で処理されます。これが“認知”にあたるのですが、テレビを見ている時は基本的に頭を使っていませんから“判断”もないですし、当然“行動”だってしません。
もちろんクイズ番組を見ながら自分で答えを考えたりするのは脳の刺激になるので問題ありません。また大好きなドラマを見るのもワクワク感などの感情が出てくるため、脳の刺激になっています。
しかし、ただついているテレビをボーっとみているのは、脳の刺激にもならないため、電気代と時間を無駄にしているだけになってしまいます。ならばテレビを見ているよりも読書をしていたほうがまだ脳の刺激にはなるので、暇つぶしにテレビを見るのは控えるようにしましょう。
5)気になる異性と接する
βエンドルフィンの分泌によって海馬の長期記憶が増強します。
そしてこのβエンドルフィンを分泌させる最も効果的な方法が、気になる異性を接することです。
気になる異性と話したり一緒にいることによって幸福感を味わうことができ、脳内でβエンドルフィンが分泌されやすくなります。さらに人間は恋をすると性ホルモンが分泌され、この性ホルモンが脳内に入って神経幹細胞に働きかけて脳細胞の増加を促すのです。
ですので、もし気になる異性や好きな人がいるのなら、なるべく一緒にいるよう心がけてください。それだけで脳に刺激を与えることになり、海馬を鍛えることができるのです。
また、好きな人がいなくても好みのタイプの人でもかまいません。例えば好きなタレントが出演している雑誌を読んだり好きなアーティストの音楽を聴く・・・というのでもかまいません。
海馬を鍛えることによって、脳の記憶力を向上させ、より多くの情報をインプットすることができます。しかし脳も筋肉と一緒で刺激を与えたり使ったりすることで活性化されるのであり、使わなかったらどんどん低下していってしまいます。
つまり、勉強法や暗記法を駆使したところで普段から脳を刺激しなかったらその効果は思った以上に低くなる・・・ということ。
生活のちょっとした改善によって海馬は簡単に鍛えることができます。これを機に自分の生活を改め、脳にとって良いライフスタイルを確立していってみてはいかがでしょう。
記憶力を高めるにはストレスを避け、海馬を鍛える生活を
いま覚えたばかりのことや直前の体験など、短期記憶を司るのは海馬です。
脳細胞は増えませんが、海馬だけは例外で、神経細胞が増えるのです。
それは他の脳の神経細胞では新しい細胞になってしまったら混乱してしまいますが、海馬は一時的に記憶するだけなので、新たな細胞ができても混乱しないからと考えられます。
このことはまずネズミの実験でわかりました。
ケージに回り車やトンネルなどのおもちゃを入れたり、ケージそのものを広くして運動できるようにしたネズミと、狭いケージでえさと水を入れただけのネズミを比べると、前者のほうが海馬の神経細胞が多く分裂するのです。
人間では、2000年にロンドン大学マグガイアー教授による、こんな実験報告があります。
ロンドン市内のタクシー運転手を調べたところ、ベテラン運転手ほど海馬が大きいことがわかったのです。
ロンドン市内は道が複雑に入り組んでいるので、タクシー運転手は、それを覚えておかなければなりません。
道をよく覚えているベテラン運転手ほど海馬の神経細胞がよく増殖しているというわけです
もうひとつ、2004年には、社会の中で対人関係で優位な立場にいる人ほど海馬の神経細胞の増殖力が高まるという報告(アメリカのプリンストン大学のグールド教授)もあります。
これは、上の立場にいる人のほうが人間関係のストレスがないことが大きな要因と考えられます。
さらに、海馬を活性化するには、積極的に刺激のある生活、さらに好奇心を持っていろいろなことを学習する。
そうすれば、海馬の神経細胞を増殖することができるかもしれません。
少なくても海馬の神経細胞をいつも活用することで、死なないようにすることはできます。